二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 黒執事  ‐Knightmare Of a Devil‐  ( No.96 )
日時: 2011/03/25 14:55
名前: キリン (ID: ucEvqIip)

第三二話;その執事、帰国


「はぁ・・・・やっと着いた・・・・・」
「お疲れ様です、坊ちゃん」
「帰国したてで申し訳ありませんがシエル様、
 本日は街に出て御社の商品の売れ行きを確認していただきます」


何日も船に揺られていたシエルは思いっきり体を伸ばす。
はしたない。とセバスチャンに止められてしまったが。
そんなシエルとセバスチャンを見ながら、セレスティは今日の予定を事細かに確認して言った。
シエルの顔はもう真っ青になっている。


『流石はお前の妹だな、セバスチャン・・・・・あれは悪魔だ』
『おや、お褒めの言葉ですか?』
『褒めてない』

若干の苛立ちを見せながら、シエルは歩を進めた。



「ほう・・・なかなかの売れ行きじゃないか」
「そのようでございますね。先月の新商品もなかなか好評のようですよ?」
「ねこのぬいぐるみ・・・・・・」
「セリー、お前にはトラウマだったな・・・」
「?一体何の話をなさっているのですか、坊ちゃん」
「な、なんでもないですよセバス兄様・・・・・ぃたっ!」

セバスチャンをよけようとして、セレスティは通りかかった人にぶつかった。
ざわついていた人ごみの中で、セレスティの行動はさらにざわつきを呼んでいる。


「何をしているんだ、セリー・・・」
「あ、も、申し訳ございません!お怪我は・・・・な、い・・」

シエルに言われて、セレスティはハッとした。
とっさに謝り、相手の無事を確認した。が。動作が止まる。
何故か。何故だって。だって・・・・・・・・。


「いえ、私も余所見をしていましたもの。お互い様ですわ。
 貴方こそ、お怪我ございませんか?」



セレスティが忠誠を誓った主人、フィオリア・シェリーヒューストンだったから。



「・・・お嬢、様・・・・・・・・」
「?申し訳ありません、どこかでお会いしましたか?」
「っ・・・・・・・・・・・・・・いえ、こちらの人違いです・・・。
 度々ご迷惑とご無礼、お許しください」
「ふふ、お気になさらずに。美しい鴉の濡れ羽色ですね、その御髪」

フィオリアは笑った。セレスティも、笑っていた。
・・・・・・・・心の中で、泣いていたけれど。
そんな二人を裂くような声が、空間に響く。


「何をしているんだい?キャティア」


フィオリアの向こうに、一人の男が立っていた。
フィオリアを、フィオリアと呼ばない男。

「お父様!いいえ、何もございませんわ。では、失礼しますわね?」
「・・・・・お父様・・・?」

フィオリアの駆けていく先を、セレスティも見遣る。
セレスティの深紅の瞳が、大きく開かれていく。

「・・・・・・ぉ、まぇ・・・・・」
「・・・おや、君は・・・・・・・・・」
「?お父様のお知り合いの方ですか?」


男とセレスティの間に、電光が走った。


その様子をじっと見つめるシエルとセバスチャン。
・・・・・・・・・・新しい幕は、既に上がっていたのだった。