二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン!火竜の少年 ( No.64 )
日時: 2010/08/31 12:26
名前: しずく ◆snOmi.Vpfo (ID: 2lvkklET)

 その先には美しい海の底が再現されていました。天井は透明なドーム型になっていて、まっすぐと伸びる通路の左右はガラス張り。左や右、上とどこからでも魚の様子を伺うことができます。
 ガラス張りの水槽の向こうには、海にあるようなごつごつした白い岩がきれいに置かれ、近くでは水の流れに身を任せた海藻類がゆらゆらと揺れています。そんな穏やかな水の中を赤やオレンジ、黄といった暖色系の魚——熱帯魚たちが優雅に泳いでいます。ふっと上に目をやれば、イワシの群れが回遊中。うまそ〜。光が差し込み、揺れる青い水面をバックに回遊するイワシの群れは、それこそ写真で見たら美しいでしょう。まるで竜宮城に来た気分ですね。ところで竜宮城と言えば、歌に♪絵にも描けない美しさ〜とありますが、浦島太郎の絵本にはちゃんと「絵」がありますよね? 美しさがきちんと表現されているじゃないですか! この歌を作ったのは誰だ〜! これぞ偉大な化学発展のお陰でしょうか。いや、そうではない(反語)。じゃあ何かと言えば、知りません。
 アフロディと蓮は、左側の水槽に駆け寄ると(もちろん手をつないだままで)、ガラス張りの水槽に両手をはりつけ、しばしうっとりとします。

「きれいだ!」
「そうだね、自然の美しさを感じるよ」

 と、その時でした。
 一匹のマンタが蓮とアフロディがいる方向に、突進してきました。ごんっとガラスに鈍い音がし、そのままマンタがガラスに張り付きます。白いお腹の中にある、口がはっきりと動いているのが見えます。
 周りのカップルたちは、女の方が艶めかしい悲鳴を上げ、彼氏の腕に絡みつきます。そして男の方が、大丈夫だよハニー。と、甘美な常套句(じょうとうく)を炸裂させるのです。
 むろん、このアフ蓮コンビも例外じゃありません。辺りをうかがったアフロディはわざとらしく、蓮の腕に両腕をからませ、子猫の様な甘える瞳で蓮の目を射抜きます。周りがそんなノリだったので、蓮もつい流されてしまいます。

「大丈夫だよは……アフロディ。僕がついてるよ」

 なんか発音上「ハーフロディ」に聞こえますが、それは謝って「ハニー」と言いかけた為です。つられたとはいえ、3割ほどは蓮の本心です。優しい言葉をかけてやりました。ついでに頭もなでなでしてやります。これも流されたせい。アフロディの髪はきれいで、撫でる蓮の指がすっと通ります。さらさらです。なんだか頭を、撫でられるアフロディは嬉しそうな表情。青い水の世界の中にいても、その美貌は失われません。水を通して差し込む青い光に、アフロディの顔の輪郭がはっきりと浮かび上がります。ライトを浴びる、女優のようでした。アフロディが女だったら、惚れてたかも。蓮は心の中でそう思っていました。
 しばらくしてアフロディの頭から手を離し、アフロディもまた蓮の腕から手を離し、魚を見始めます。直後、蓮の頭にせん光が走りました。

〜つづく〜