二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【3Z】死に損なった少女。 ( No.4 )
日時: 2010/07/25 18:07
名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: .pwG6i3H)

▼die.00 ─────────────


此処は、何処だろうか。
上下左右が真っ暗だ。まるで闇の中にでもいるように、暗くて何も見えない。
おまけに身体も動かないと来たものだから、足掻きようも無い。

────あれ、あたし、如何したんだっけ??

何故此のような暗闇にいるのだろうか。
確か今日は朝起きて普通に学校に向かった筈だ。

何時も通り、朝学校について妙と神楽と一緒にいて。
神楽と総悟の喧嘩を止めようとしたら、総悟のからかいの先が自分に向いて苦労して。
妙が近藤に凄まじい攻撃をしていたから華麗にスルーして、山崎の存在に気付かずにいて。
銀八の教師らしからぬ授業をぼんやり聞いて。
────土方の姿を目で追って。

其れで如何したんだっけ。
其の先を頭を捻らせ思いだそうとする。曇りがかった記憶の先を辿る。

そうだ、確かそんな風にして学校を終え、帰路を歩いていた時だったんだ。
キキーッとタイヤが擦れ鳴り響く高音。
其れが自分の耳に届いた時には、目の前には大型トラックが凄まじい勢いで此方に向かっていた。
直ぐに鈍い音と共に激痛が走り、初めて宙に浮いて飛ばされた。

痛い、痛い痛い。
そう考える間に赤く染まる視界。周りから女性の叫び声や大丈夫かと言う男性の声も聞こえた。
叫びたいのはこっちだよとか、大丈夫な訳無いだろとか言う文句も思い浮かばなかった。
兎に角、痛くて痛くて仕方なかった。
楽になりたくて、此の痛みにさよならをしたくて、其の考えだけが頭を占拠していたのだ。

────あれ。じゃあ、あたしは??

其の後の記憶がブツリと消えている。
其処までは鮮明に思い出せると言うのに、其の後はさっぱり覚えていない。

まさか。
まさか、まさか。

────死んだ??

そんな筈は無いと力一杯否定したかったが、どうやら否定できそうに無い。
死んだと言う可能性が限りなく近いからだ。
生きているとしたら、妙に意識がはっきりしている。
こうして色んな事を考えられるのだから、きちんと脳は作動している。
しかし、其れならば此の視界一杯の暗闇をどう説明すれば良いのだろうか。

眠っている筈は無い、確実に。
しかし、こうして考える事は出来るのに、手足などの感覚はまるで皆無なのがおかしい。
手足を動かそうにも、動かない。そもそも手足が存在していないかのように。
眠っていないのに、動かせない。暗い闇の中、何も出来ない只っ広い空間。

────やっぱり、死んじゃったとしか考えらんないや。

悲しいと言うのに、涙すら流せない。
涙を作る為の目や水分が存在しないのだから当たり前だ。
死んだと言うのに、自分の冷静さが凄いと思う。と言うか、実感がわかないのだ。
いきなりこんな暗闇に落とされて、死んだんだと言う実感など湧かないし、半信半疑と言った方が正しい。
此処で神様らしき人が出てくるとか、悪魔が「君は死んだんだよ」とか伝えてくれた方が、信じる事が出来る。

何も言われないから判らない。
明日も朝起きて学校に行き、皆と同じような生活を送るような気がするのだ。
妙や神楽がいて、総悟に近藤に山崎、銀八に新八に。
其れで、又土方君を遠くから見て。

もし死んだのなら、其れが全て明日から出来なくなる。
明日には、自分は消えてしまうのだろうか。全て忘れて、しまうのだろうか。

嫌だ!!

そう考えれば、先程までの冷静さは消え失せ、言い表せ無いような恐怖心が襲いかかって来た。
まるで此の暗闇のような、黒いものが胸を這いずり回っているようだ。
少し、死んだと言う事を自覚してしまったらしい。自覚した瞬間、冷静などは無くなった。
只、一つの願いが生まれてしまう。


死にたく無い。生きたい、と。


何故死ななければならぬのか。自分はまだ18だ、死ぬには若過ぎるだろう。
まだまだ青春を謳歌したい、青春真っ盛りの年頃だ。女子高生として泣いて笑って過ごしたい。
人並みの恋だって、経験したい。だから────。

────帰りたい!!

そう願った瞬間、突如暗闇に光が差し込む。
暗闇の中にいたからか、はたまた其の光が強過ぎるのか、とても眩しく感じる。
日向は其の侭、瞳を強く閉じた。

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