二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【3Z】死に損なった少女。 ( No.6 )
- 日時: 2010/07/25 18:27
- 名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: .pwG6i3H)
▼die.01 ─────────────
────あれ??
パチリと目を開ける。
すると、先程まで存在した暗闇は綺麗になくなっていて、目の前には白い天井が広がっていた。
ツンと鼻を摘むような消毒液の薫りが届く。
あれ、自分には先程鼻は勿論手足すら存在しなかった筈なのに、視覚も嗅覚も正常に働いているでは無いか。
むくりと起き上がり辺りを見渡してみる。
自分の腕には針がささっていて、其の先には何やら水のような物が袋の中でポツリポツリと水滴が落ちている。
其れが点滴だと、遅ればせながら気付いた。
白いベット、白い天井、点滴。
つまり自分は、病院にいるのだ。
「死んで、無かった……」
死ぬ程安心したと言えば矛盾になるが、死んでなかったと言う真実に安堵し再び起こした身体を布団に投げ出す。
あんな暗闇にいて、尚且つ身体が動かないともなれば、死んだと勘違いしても仕方ない。
だから、死んでなかったと言う事実に涙が出る程嬉しい。
瞳から涙が流れるのは、生きている証拠だ。
「……あ、あれ??」
誰もいない空間に自分の声が響く。
しかし、何処かおかしい。はて、自分の声はこんなにも幼いような声だっただろうか。
試しにあーとかいーとか適当に言葉を発する。
やはり何処かしっくりと来ない。違和感しか無い。
「……あれれ??」
ふと、手足に視線を落とす。
自分はこんなにも腕が短く足も短足だっただろうか。いや、短足なんて可愛いものではない。短過ぎる。
手を握ったり開いたりしてみれば、何だかもちもちしている。
こんなに自分の手は肉付きが良くはなかった気がする。
「…………」
トンッと布団から出て閉まっていたカーテンを開ける。
其処でも。あれ、自分はこんなにも背が低かっただろうか、と疑問に思う。
いや、まぁ。元から皆と比べればかなり小さかったけど。
そんな事を心の中で呟きながら、窓に反射し映った姿に驚愕してしまった。
「……何、此れ??」
映った姿は、何時も見慣れた平凡な女の子の顔では無い。
まだまだ幼く、髪も短い。小さな小さな、見知らぬ女の子の姿だった。
「何で……何で、何で??」
自分の幼い頃にタイムトリップした訳でも無い。
全く知らない女の子の姿になっている。
まさか、生まれ変わったのかと思ったが、其れにしては廉條日向だった頃の記憶がはっきりしすぎている。
それにこんなに早く生まれ変わるなんて、考えられない。
「…………」
ぺたぺたと、裸足の侭歩いていた。半ばと言うか、無意識に足が動いていた。
扉を開け、冷たい廊下を歩く。
何時もより視線が低い、自分も幼い頃はこんなにも視線が低かったのか。
其の侭どう歩いたか定かでは無い。気付いた時には外に出ていた。
ふと振り向けば、大きな病院の名前が小さくなっている。
────大江戸病院。
大江戸病院は自分が幼い頃からお世話になっている病院だ。
と言う事は、自分がいる場所は自分が住んでいる場所に近いと言う事だろう。
よく辺りを見渡してみれば、此の道も自分は良く知っている道だと気付く。
此の侭歩いていけば、自分の家に辿り着く事だって可能だ。
「でも、如何すれば」
家に此の姿で帰った処で、自分は日向だと言う事を信じてくれる筈が無い。
説明した処で、どうやって信じろと言えるのだろうか。
自分ならどうやったって信じたりはしないだろう。
「……オイ。お前、迷子か??」
俯いて途方にくれていた時、低い声が図上から降って来た。
其の侭ゆっくり頭を上げて見えた姿に、目を丸くする。
黒い髪で切れ長の目、整った顔。
其れは、自分が好きな人物。
────土方十四郎だった。
「ひ……」
「あ、別に怪しい奴とかじゃねーから。迷ったのか??」
土方君と言いそうになった声を急いで紡ぐ。
土方は驚いた自分の言葉に、自分が警戒したと思ったらしい。優しく再度迷子かと聞いて来た。
────あれ??
良く見れば、土方は制服を着ている。
車に轢かれた時は空は夕暮れ時で、今は青空が広がっている辺り、きっと一日はたった筈だ。
だとしたら今日は土曜日で、学校は休みな筈だ。部活かと思ったが、もう直ぐテストだから部活も無い筈。
なのに何故彼は、制服を着ているのだろうか。
「あ……」
土方の姿を上から下まで見ていた時に、手に何かを持っている事に気付く。
其れを見た後、後ろの壁に張り付いていれ紙を見て、成る程と一人納得せざるを得なかった。
「っつーかお前、病人か?? 病院抜け出して来たのか??」
「連れてって……」
「あ??」
土方の言葉を遮断させ、言葉を紡ぐ。
「お葬式、連れてって」
土方の手には、香典が握られている。
土方の後ろの壁に張られていた紙には、故廉條日向と書かれた、式場案内の紙。
土方は葬儀に参列するのだ。
自分の、葬儀に。
廉條日向は、間違い無く死んでしまったのだ。
アタシハ、一体何処ニイルノダロウカ。
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