二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【3Z】死に損なった少女。 ( No.7 )
- 日時: 2010/07/25 18:47
- 名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: .pwG6i3H)
▼die.02 ─────────────
パラパラと、雨が降って来ていた。
小降りなため傘はいらないし、例え持っていたとしても差す気にもならなかった。
端から見れば異様な光景だと思う。女・子供を毛嫌いした土方の隣に子供がいる事が。
実際は、あたしなんだけど。
見た目は平凡の女の子で、中身は────土方のクラスメートの女なのだ。
死んだ筈の自分、と言うか、確実に死んでいる。
自分の葬儀が本日行われるからだ。
歩いて行く内に自分の葬儀の張り紙は何回も見たし、事実土方も香典を握り歩いている。
其れなのに、自分の魂は此の誰だかも判らない幼い少女の身体に、すっぽり入ってしまったらしい。
どういう因果か、自分が天国に昇り神様と何かの契約をしたとでも言うのだろうか。
────未練はある。けど、死んだなら潔く死ぬと思うんだけど。
全く未練が無いかと言われれば其れは断固として否定出来る。
まだまだ青春を謳歌したい。クラスマッチに修学旅行、文化祭に体育祭、そして卒業。
皆と一緒に其れ等を過ごしたいし—──—土方に想いを伝えたい。
────だから神様があたしの魂を此処に入れてくれたとしても……意味無いよ。
百歩譲って神様が与えてくれたチャンスなのだとしても、此の身体では全て無意味だ。
完全なる幼女、恐らくはまだ5歳と言った処。
此の姿で高校を過ごせると言えるだろうか。確実に無理だろう。
「……お前、親はどーした?? 廉條の葬儀……お前だけ来るなんてあり得ねーだろ」
「……あ」
ふと、土方に指摘され答えに困り口ごもる。
確かに、5歳の女の子が一人で葬儀に参加するなどあり得ないだろう。
土方は親と逸れたかと思っているようだ。
「多分……お葬式の会場にいると思う」
「そーか」
自分の答えに納得したらしい、ふいと視線を前方へ移す。
カッコいいなぁ。
何時もは遠くから見ているだけだった、好きな人と今は隣で歩いている。
会話した事も無かった筈なのに、今初めて会話をした。
何だか不思議な気分だ。
そういえばこんな至近距離で見るのも初めてかもしれない。凛とした横顔はとてもクールで美しい。
遠くから見ていた時も十分美しかったが、至近距離なら尚更だ。
「……着いたぞ。っつか、何ガン見してやがる」
「え!? あ、いやあの、其の……」
ついつい美しさから見惚れていれば、土方と視線がかち合ってしまい訝し気な表情を浮かべられてしまった。
慌てて視線を逸らし真正面を向いてみれば、入って来た文字と建物に恥ずかしさやら何やらは全て消え失せる。
恐らく今の自分に表情は消えてしまった。
「……葬儀所、着いた……の??」
「……あァ」
目の前には、自分の葬儀所が見える。
葬儀所には、結構な数の人が参列している。真っ黒なスーツ、其処全体が黒に埋め尽くされている。
葬儀だから当たり前なのだが、暗い。
雨雲が葬儀に参加する人々の黒を引き立たせているようだった。
「……入るぞ」
「……うん」
ポツリ、お互いが小声で弱々しく溢す。
其処からゆっくりと、目の前の屋敷に足を踏み入れた。
其れからの自分達は、暫くの間沈黙が支配していた。
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