二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【3Z】死に損なった少女。 ( No.15 )
- 日時: 2010/07/25 20:52
- 名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: .pwG6i3H)
▼die.06 ─────────────
「……お前が、廉條??」
「そうだって、言ったら……??」
何時も瞳孔が開いた彼の瞳孔は、三割増しで開いている。
言った、とうとう言ってしまった。
実の処、言う気は更々無かった。
こんな姿であたしは廉條日向ですと言った処で信じてもらえるとは思えない。
寧ろ何を言っているんだ、おかしいのでは無いかと言われる可能性が高いからだ。
最初は断固として言わないつもりだったが、事が事だ。其れに、怖かったのだ。
ずっと此の侭、訳の解らぬ子供の姿であったなら。
入院していた此の子の身体が病にかかっていて、命が長く無かったなら。
そう考えると、許せない気持ちになった。怖くもなった。
誰かに頼って甘えたかった。助けて欲しかった。
其の時に目の前に彼が現れたのだ、すがらずにはいられないだろう。
「……廉條の葬儀、目の前でお前も見ただろ??」
「見たけど、魂は此処にあるの。今は知らない女の子だけど、あたしの魂は此処にいる」
此処にいる、そう胸を指差し言ってみるものの土方は半信半疑らしく、怪訝な目付きで自分を見下ろしている。
無理も無いと思う。
自分が逆の立場なら、確実に疑うか信じないかするであろう。
ならば、どうすれば信じてくれるだろう。
「……神楽」
「!?」
「親友は神楽。担任は銀八先生。クラスメートは妙に九ちゃん、近藤君に沖田君に桂君に山崎君に高杉君に……土方君」
次々列挙される名前は、自分の仲の良かった友人達。3Zのメンバー達。
自分が実際に通っていたから、誰がいて誰と仲が良いか解る。此の小さな少女が日向で無ければ解らない。
日向が小さな少女に話をしていたのでは無いかと疑われても、こんな幼女が沢山の人物を覚えられる筈が無い。
「……こんな風に言えるのは、あたしが日向だから」
「…………」
────…やっぱり、信じてもらえて無いのかな。
試しに言ってみたは良いが、土方は未だに眉間に皺を寄せ、難しい表情で固まっている。
半信半疑、未だ疑いは晴れぬようだ。
一般的に考えたら信じがたいだろうし、人によっては気味が悪いと思うだろう
。今しがた葬儀を行なった本人が目の前にいると言うのだから。
其れだから、土方も気味が悪いと感じているかもしれない。
だけどこうして言ってしまったのは、心の何処かで彼なら信じてくれるだろうと甘えているからかもしれない。
もし、もし此処で、土方に拒絶されてしまったなら。自分はどうすれば良いだろうか。
「……土方、君」
「あ??」
「お、願い……信じなくて、良いから。見捨てない、で……!!」
気づいたら、ヨロヨロと覚束ぬ足取りで土方に近づき、彼のズボンの生地を掴み、泣きながら懇願していた。
ポロポロ、雫は流れて止まらなかった。
信じてもらえなくても良い(信じがたいのは事実)。
信じてもらえなくても良いから、一人にしないで欲しい。
見捨てないで欲しいのだ。
ポタリと、一滴の涙が不自然に溢れた瞬間、頭に温かなぬくもりを感じた。
土方が自分の頭に手を置いてくれたため、反動で涙が溢れたらしい。
「お前、行くとこもねェんだろ??」
「あ……うん」
「なら、俺んち来るか?? 俺ァ一人暮らしだからな、咎める奴もいねーよ」
「……え!?」
口角を上げ穏やかに笑む彼の表情と言葉に、涙も引っ込んでしまった。
「正直まだ疑ってはいるし、信じてはいねー。
だけど、頼れる人もいなくて、こんな泣いてる餓鬼を放っていける程薄情じゃないんでな」
「土方、君……」
自分が廉條日向だとは信じていない。
其れでも、困惑し泣き叫ぶ少女を放っておけないため、連れて行ってくれると彼は言う。
悲しみの為の涙が、何時の間にか安堵の涙に変わる。本音を言ってしまえば、あんなに必死に訴えたのに、まだ信じてもらえない事は悲しい。
しかし、信じずとも、自分を助けてくれた。
其の手をとってくれた、支えてくれた。
其れだけで自分は、嬉しかった。
「ありが、とう……!!」
「よし、そうと決まれば」
「ひゃっ!?」
「お前ちっせーからな、こうした方が早い」
突如ふわりと浮く体。土方が、自分を姫だきして歩き出した。
小さい為歩幅も小さく、歩くスピードが土方と比べればうんと遅くなってしまう。
其の為土方が自分を持ち上げて歩いた方が早いと言うのだ。
────ち、近い!!
自分の右は、土方の腕。
左は土方の胸で、上は土方の端正な顔。
好きな人に抱かれてるような此の状態に、土方の整った顔は自分の頬を紅潮させる為の十分な理由となった。
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