二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【3Z】死に損なった少女。 ( No.45 )
- 日時: 2010/07/26 13:20
- 名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: vWQ1Y4kw)
▼die.12 ─────────────(土方side)
目の前の光景に、呆然とした。
否、実際は其処まで呆然とした訳でも無い。
只多少驚いただけだ。
何時もと変わらない光景が広がっているのだから、其処は別段驚く事は無い。
ならば何故驚いているのか。
────……全部、白黒じゃねーか。
其れなのだ。目の前に広がる光景は間違い無く自室。
ずらりと本が並ぶ本棚や、何も置かれていないテーブル。
テレビや布団も至ってシンプルなもので、壁には制服がかけてある。
必要最低限しか無い此の部屋は、何処をどう見ても自分の部屋なのだ。
違うのは、幾ら目を擦るだなんだしても、景色が白黒だと言う事のみ。
そうなると自分は、夢でも見ているのだろうか。
そう考えるのが妥当なのでは無いかと思う。
最初は白黒の光景に酷く狼狽してしまった。
目が悪くなったのかと心底不安になったが、良く考えてみれば、其のような事は起こり得ない。
いきなりそうなる訳が無いのだ。そうなると此れ等が可能になり得る事と言えば、夢の中だと言う事。
其れが一番しっくりくるし、妥当だろう。
其の事を考え人知れず安堵する。
其れにしても、此れからどうすれば良いのだろうか。
安堵すると同時に次に湧き出た疑問は此れだ。
実際、此のような体験は初めてだ。夢を見ている時に此れは夢の中だと自覚した時は何度かあった。
しかし、其れでも夢と言う物は勝手に進んでくれていた。
幾ら自分が夢の中でストーリーを変えようとしても、変える事など出来なかった。
まるで、立場は傍観者のようなものだったと言うのに、今はどうだろう。
傍観者でも何でも無い。自ら動く事が出来ると言うより、動かなければならない当事者の立場だ。
現実では何時も当事者であり自分で動かねばならないが、夢でも又動かねばならぬとなれば話は別になる。
一体何をすれば良いのか、夢から覚めるにはどうすれば良いのだろうか。
悩みは尽きなくなってしまった。
頭を悩ませていれば、ピンポーンと言うインターホンの音。
思わず我に返り急いでインターホンの機械まで行けば、ディスプレイに映るのは悪友の沖田総悟であった。
「遅えーよ土方コノヤロー。学校行きやすぜィ」
「あ、あぁ。悪ィ……」
「謝罪は良いから早くしなせィ、ったくノロマだなァ土方は」
正論ではあるが辛辣すぎる言葉に若干の苛立ちを覚えるが、同時に助かったとも思った。
総悟が来なければ、自分は何をすれば良いか判らなくなるからだ。
しかし総悟が迎えに来た今、自分には学校へ行くと言う使命が出来た。
此れは行くしか無いだろう。
夢の中で自ら学校に行くなんて変な話かもしれないが、暇をもて余すよりは断然良い。
そう考え、自分は急いで部屋に戻り、壁にかけてあった制服に手を伸ばしたのだった。
—————————──
何時も見慣れた此の通学路も、やはり白黒だ。
其れは当たり前の事なのだが、なんと言うか違和感は拭えない。
目の前には細い道と、其の道の端には川。そして隣を歩くは端正な顔立ちの友人、総悟。
何時もなら此の時間は優しい日差しが差し込んでいるというのに、そんなものは微塵も感じられない。
川も道も友人も太陽も、白黒だ。
そしてふと思った事は、日向の事だ。
確か、家の中に彼女はいなかったと思う。まあ、それは夢の中だから当たり前かもしれない。
彼女が死んで数日、しかし彼女は幼女となり今生きているのだから変な話だと思う。
「なあ、総悟」
「なんでィ土方さん」
「廉條が死んで、どん位経つ??」
「は?? 廉條??」
そう言えば、彼女が死んで何日経っただろうか。
少しばかりショックな出来事だったから、鮮明に覚えていなかった。
其の為総悟に聞いた訳だが、彼は心底驚いた顔をしている。
否、驚いたと言うよりは、疑念に満ちた表情。
何を言っているのか判らないと言った表情だ。
其処まで表情を変えなくても良いのでは無いかと思いながら、「そんなに驚く事か??」と訊ねれば、彼は暫く考え込み、恐る恐ると言った感じで口を開いた。
「廉條って……廉條日向ですかィ??」
「……其れ以外に誰がいんだよ」
「いや、アイツとはあんま関わり無かったからねィ」
「は??」
「だって、アイツが死んでもう10年は経ってまさァ。関わりもなにも無かったようなもんでィ」
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