二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【3Z】死に損なった少女。 ( No.47 )
- 日時: 2010/07/26 15:46
- 名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: vWQ1Y4kw)
▼die.14 ─────────────(土方side)
カチカチと一定のリズムで鳴る、時計の秒針の動く音。
其の時計に目をやれば、長い針は4の数字を、短い針は2の数字を指していた。
午前2時20分、まだまだ夜は深い時間だ。
閉じられたターテンは月の光を遮っている為に、部屋は暗い。
暗闇に慣れた為か自室の家具が見にくいながらも把握する事が出来た。
其の暗い部屋の中、夢から覚め勢い良く起き上がった。
額や首筋からは脂汗が滲み出ていて、恐怖からか息が切れてしまっている。軽い興奮状態に陥っていた。
瞬時に落ち着けと自分に言い聞かせ、呼吸を整える。
目を閉じれば真っ暗な闇と時計の音しか聞こえなかった。
────夢、か。……いや、夢じゃねえ。
直ぐに頭に呼び起こされるあの夢。
総悟に、廉條日向は死んでいるのだと訳の分からぬ事を告げられた。
かと思えば、川に流されていた少女を死に物狂いで助けた。
救いだした時に彼女にかけられた言葉は、助けてくれてありがとうと言う類いのものでは無かった。
逆に、何故助けたのと、責め立てられるような、口振り。
「死んだ筈なのに、か……」
あれは、あの顔は本当に怖かった。
恨んでいるような、そんな感じの顔で睨まれたのだ。
一体あの少女は何がしたいのか、一体誰なのか。と言う問いは今では愚問でしかない。
全て、全てを把握してしまった。
今まではプツリプツリと糸が切れているかのようにところどころしか判らなかったが、今では其の糸はピンと繋がっている。
もう何も判らぬ事など無い。
川で溺れていた少女は、紛れも無く廉條日向だ。
刹那、プルルルルと電子音が部屋に響いた。
閑静としていた部屋に突如大きな音が鳴り響いた為に驚いてしまい、びくりと肩を揺らしてしまった。
別に、夜だから怖いとか幽霊が怖いとかでは無い。と、心の中で威張りながらも、ゆっくりと布団から出てリビングへと向かう。
寝癖のついた髪の毛を無造作にかき、眠い目を擦る。
こんな夜中に誰だと言うのだろうか。
不躾にも程があるだろうと文句を考えながら、5回目のコール音の時に受話器をとり、「はい土方です」と伝えれば、高く大きな声が耳に響いた。
「マヨラー!! 大変アル!!」
「誰がマヨラーだ、土方だ。で、どーした??」
「日向がいないネ!! 見当たらないアル!!」
「…は?? 日向が??」
神楽の言葉に、眠かった目が一気に覚醒された。
すっと体が冷え、焦りがうまれる。
日向が、いない。
今日、否、正確には昨日になるのか。
日向の魂が宿っている幼女。
其の幼女—──—持ち主に、魂を返せねばならないかもしれないと彼女は告げた。
其れはつまり、日向の魂が天に帰ると言う事を指し示していた。
其れを聞いた直後、勿論親友である神楽は泣き叫んだ。
「嫌アル!! 折角会えたのにまた離れるなんて耐えられないアル!!」
と泣きわめき、本人も涙ぐんでいた。
其の為せめてもと、今日だけは一緒にいたいと彼女が申し出た為、彼女は今神楽の家に泊まっている筈なのだ。
神楽の話によれば、家に帰りご飯を食べたりお風呂に入った時にはきちんといたと言う。
一緒の布団で寝て、そして先程目が覚めた時、日向が忽然と姿を消している事に気付いたらしい。
家中を探し回ったが、何処にもおらず、玄関に行けば靴が無くなっていたと言う。
察するに、彼女は外に出てしまったと言う訳だ。
「どう、すれば良いアルか!? 日向が、いなく、なっちゃうネ……!!」
「落ち着け!! 取り敢えず外に出て合流して、しらみ潰し探すぞ!!」
受話器の向こうから嗚咽が聞こえて来た。
其れを宥めるように、一緒に彼女を探そうと提案する。
取り敢えず家の前で待ってろ、と言えば彼女は弱々しく判ったと言った。
彼女は女子離れ、寧ろ人間離れした怪力の持ち主ではあるが、彼女も列記とした女なのだ。
真夜中に手分けして探すなんて危ない事この上無い。
再度大人しく待ってろよ、と念を押しそう伝え、受話器を置く。
そして急いで自室に行き、壁の隅にかかっていたコートを羽織り、其の侭急いで外へと駆け出した。
残サレタ時間ハ後、僅カ。
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