二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【3Z】死に損なった少女。 ( No.53 )
- 日時: 2010/07/27 13:16
- 名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: KUO6N0SI)
▼die.15 ─────────────(土方side)
家を飛び出して空を仰ぎながら、神楽の家へと走った。
満天の空に星が散ればめられていて、外気はちくりと刺すように肌寒い。
夜の闇は、ちかちか綺麗に輝く星を吸い込みそうな程大きく、恐ろしいと感じた。
もしかしたら、此の闇の中に彼女が吸い込まれてしまったのでは無いか、何て馬鹿な考えを正当化してしまいそうになる位、闇は深かった。
そんな考えを一掃し、只管走る。運動部である為其れなりに体力はある筈だが、全速力の為に息が上がる。
ひゅー、と時折苦しい息が音を出すが、其れでも走った。
川沿いや草むらをかき分け、狭い道を通る。
広い住宅街の一角に、神楽の家が見えてきた。
「マヨラー!!」
「土方だコラ。はぁ、取り敢えず、探すぞ!!」
「うん!!」
神楽の家を見つけたと同時に、神楽が此方に駆け寄って来た。
自分の走る姿が見えた為、此方に走って来てくれたらしい。
探す事を促せば、瞳を真っ赤にさせ、弱々しく頷いた。
何時も破天荒な彼女が余りにも弱々しかった為、少しでも安心させようと思い大丈夫だ、と彼女に告げる。
其処で漸く彼女に笑顔が見えた為其れに安堵し、じゃあ行くぞと伝え、自分と神楽は暗闇の中を走った。
—————————──
其れから自分と神楽は、様々な場所を走った。
彼女がいきそうな場所を隈無く、だ。
自分達の通う学校は、当たり前だが全てに鍵がかかっていた為入れなかった。
校庭等をぐるりと探しても、人の気配が無かった。
また、自分達がよく遊んでいた行き付けのカラオケや、バッティングセンターなどの場所も探したが、何処にも無かった。
彼女の家はもぬけの殻、病院にもいなかった。
「居ないアル……」
「ったく、何処に行きやがったんだアイツ」
「如何しよう。此の侭、逢えなかったら……」
様々な場所を回って、今は川沿いの道をゆっくりと歩いている。
走りすぎた為か、最早寒さなんて感じず只暑くて汗ばむばかりだった。
途方にくれていれば、神楽が又ポロポロと涙を溢していた。
泣くなよ、と言っても其れは溢れるばかりで止まる気配が無い。
────しかし本当、何処にいるんだ。
深呼吸をして、額の汗を拭う。
マラソンを全力で走った後のように、肺が苦しく横腹がズキズキと痛みを訴えている。
其れにしても、彼女は何処にいるのだろうか。
てっきり俺は、思い入れのある学校か、家か、はたまた彼女が魂を宿した病院か、死んだ川沿いの何処かにいると踏んでいた。
其の為絶対見つかると、根拠の無い自信を持っていた。
しかし、其の目星をつけた場所の何処にも、彼女はいなかった。
そうなると流石に焦りが生じてしまう。
神楽の言う通り、もう逢えないのだろうか。
もしかしたら、魂が天へと召されてしまったのだろうか。そんなのは、嫌だ。
其れでも、何処を探せば良いか分からない。彼女が他に、行きそうな場所なんて——──。
「……あった」
其の時ふと、思い出した場所があった。
びっしりとした曇り空で、次第に雨が振りだしていて、銀色の煙が立ち込めていた、あの光景。
其の後に行った、場所。
「チャイナ、行くぞ」
「……行くって、何処アルか??」
きっと、否、寧ろ絶対にあの場所にいる筈だ。
彼女の辿り着く、場所。
「廉條の、墓だ」
—————————──
一体今は何時なのだろうか。
予想ではあるが、4時位では無いだろうか。
闇に覆われていた空が、少しばかり明るくなっていた。
しかしまだまだ暗い方ではある。
其の暗い中で、いかにも幽霊がいそうな墓場をビクビクしながらも歩くなんて、きっと此れが最初で最後だろうなと思う。
辿り着いた墓場は、そんなに大きい墓場では無かった。
少ない数の墓石が、其処に密集している。
多分、30にも満たないのでは無いだろうかと思うくらいだ。
そんな少なさの一角に、小さく体を丸めて石碑を眺める女の子の後ろ姿を、見つけた。
「日向!!」
瞬間、神楽が名前を叫んだ。
震えながらに呼んだ彼女の名、其の声色には嬉しさと悲しさが入り交じっているようだった。
しかし、彼女は其の侭此方を向かない。
親友の神楽が名前を呼んだと言うのに、微動だにしない。
「────此処」
「え??」
聞こえていないのだろうか、と思っていれば、ふと彼女が言葉を紡いだ。
「……此の石碑にね、薄く書いてあるの。あたしの名前。
其の日付が、10年前。……まるで、急いで事実を消したみたいに」
白く小さい手が、石碑をなぞる。彼女は至極切なそうに呟いた。
ゆっくりと彼女に近寄り腰を下ろし、彼女の見つめる先を確認する。
すると確かに、彼女の名前と10年前の日付が、うっすらと残っていた。
まるで、慌てて消したかのように。
「……見たんでしょ?? 夢」
「ああ」
其の口振りから、彼女も此れまでの全てを理解したのだと確信した。
恐ろしい夢だった。小さな女の子が、川に流されていて。
其れを助けた瞬間、彼女に恨まれるような視線で、死んだ筈なのに、と呟かれた。
しかし其の恐ろしい言葉のお陰で、全てを知る事が出来た。
何故日向が此処に留まっているのか、此の小さな女の子が誰なのか。
10年前に、死んだと言う不確かな事実の意味を。
「廉條、お前は確かに10年前に一度死んだんだな。……其れを俺が助けたから、未来を狂わせた」
自分が彼女の全てを、変えてしまった。
同意を求め彼女に訊ねれば、彼女は弱々しく頷いた。
彼女ガ消エルマデ、後少シ。
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