二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜『稲妻学園小説』 ( No.2 )
日時: 2010/07/28 17:50
名前: ゆうちゃん (ID: 66DLVFTN)

<プロローグ>

『俺は強い奴が好きだ』
公園の隅にある、少し大きめの木。
そこは、自分にとって憩いの場だった。
暑い日だった。
木陰を求めて、俺は今日もこの場所にいた。
『だから、君とサッカーがしたい』
ボールを持った同い年くらいの少年がいた。
差し出された小さな手の肌は白くて、日の光に溶け込んでいるようだった。
『………君は誰?』
少年の顔は逆光でよく見えなかった。
『俺?俺は……——————』




「ん……」
ついさっき眠ったばかりだと思っていたのに、カーテンの隙間からすこしだけ光がもれていた。
時計は六時だった。食堂へ向かうにはいささか早い。
まだまだ寝たりない目をこすりながらそっと布団からはいでた。並べられた隣の布団では弟——佐久間がいびき交じりに寝息を立てていた。
風丸はよろよろと窓へ向かうとカーテンを開け放った。
外に見えた広いグラウンドでは、朝早くから朝練をしている生徒がいた。

「んぁ………、もう起きたのかよ風丸」
佐久間があくびをしながらやってくる。寝癖で髪はぼさぼさだ。
「あぁ、ちょっとな」
俺は短く答えると窓の外に向き直った。
「ったく、人が寝てるときにカーテンなんか開けんなよな………。おー、朝練やってんじゃん」
隣に来た佐久間が頭をかきながら言う。
佐久間の顔が朝日に反射して、夢の中の少年と重なって見えた。
なんとなく、佐久間の横顔を見ていたら、長いまつげに目が留まった。
自然に笑みがこぼれていた。
「何じろじろ見てんだよ」
佐久間が頬を膨らませて、すねたような顔をする。
「…………なぁ、佐久間」
「ん?」

双子なのに。
髪の色も違う。
肌の色も違う。
瞳の色も似てはいるが、やはり違う。
性格なんかも正反対。
同じなのは髪の長さと背の高さ。
あとは、まつげが長いこと。

「……ははっ、なんでもない」
「なんだよ、気持ちわりぃな」



夢を見て目が覚めたある日の朝。
五月のさらりとした空気はどこへやら、じめじめとした空気が近づいていた。そんな朝。

——————はじまりの、朝。