二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】僕は狂ってない。 ( No.13 )
日時: 2010/07/29 22:27
名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: SmzuliUF)

何もかも失くした僕は、
深い闇に腐敗し、堕ちてしまった。

只、血腥い傷痕を残して。

羽を失くした蝶は飛べないが、
光を失くした僕は闇に這いずり回り、
醜く生きていけるだろう。

僕は醜い。
腐った人間。



▼mad00、闇の中で償えるなら



初夏。
暗い路地裏に僕は只一人、ぽつんと佇んでいた。
其の身体は夏にも関らず黒いマントに覆われている為肌は少しも見えない。
闇に覆われた其の地に居れば、僕の皮膚をチリチリと焼いていくからだ。
————闇夜一族。

宇宙最強民族「 夜兎 」も適わぬ程の戦闘力を誇る一族。
夜兎の親戚と言われるが彼等一族とは全くと行って良い程星の環境が違い過ぎた。
陽空一族の星は年々太陽に照らされた真っ白な星。
光が無ければ僕等は生きられない。

「……やっぱり、路地裏は結構、キツイ」

僕はポツリと自分の足を眺めて呟いた。
戦って、戦って、そして遂に滅びの道を辿った一族に僕は生まれた。
戦闘に優れ、戦いの道具として利用され、使い終わったらポイ捨て。
そんな一族でも良かった。利用でもなんでも良い。
自分は只、僕を壊して捨てた父親に逢いたいだけなのだから……。

「おい」

何時の間にか、後ろには何人もの大男が立っていた。
何れも腰に刀を挿した武士だが、僕の手に掛かれば虫けらも同然の輩が。

「こいつが品物か??」
「はい。取引場所は此処です」
「しかし、取引相手は如何したよ。俺達に恐れをなして、品物だけ置いて逃げたってか??」

男達が大口を開けて笑った。
又だ。又此の不愉快な笑い方。
気に食わない。僕が何故、こんな奴等の為に手を振るわないければならないのか。
そう、僕は今日も誰かに売られて行く。

「おい。俺達は此れから攘夷志士を名乗って、金融会社の倉庫を襲撃して金をゴッソリ奪いに行く。
────お前の出番は其処だ」

大男が僕の胸倉を掴み、顔をグイっと近づけて言い放った。

「邪魔する奴は残さず殺せ!!!」

────やっぱり、其れでしか僕の存在価値はないのか。
此れからも、ずっと……ずっと……ずっと……、人を殺す事でしか認められない。
僕は大男から目を逸らして黙っていた。

「……なんか言え此の餓鬼が!!」

男が僕を殴り飛ばす。
ドサっと地面に倒れた僕を見て男達が又嘲笑った。
殴られた頬が徐々に赤く腫れ痛みが広がっていく。

嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い。
嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い。

「如何したよ。悔しかったらやり返してみろ!!」

大男が上半身だけ起こし頬を押さえ俯く僕に歩み寄り、腹部を蹴った。
腹部に鋭い痛みが走る。

「かはッッ……」

声にならない声が零れた。そして、又笑い声が起きる。
大男が僕を片手で持ち上げると、フードを接がした。
其処には、亜麻色の髪に、凍てつく様な鋭い狂気が宿った深い紺碧の瞳。
大男は僕の姿を見るなり目を見開いて、口を金魚のようにパクパクさせていた。

「こんなアマがあの最強兵器の筈が……」

「 最終兵器 」、其の言葉を聞いた瞬間、僕の顔が一変する。
殺気を放ち、冷たい其の瞳は更に冷気を帯びる。
僕は腕を男に向けて振り降ろした。其の瞬間、肉が千切れる音と共にぬるりとした血が弾け飛ぶ。

「ぎゃあぁぁぁあああぁあ!!」

ドサっと鈍い音をたてて、男は地面に倒れた。其の顔に、「生」という文字はもうない。
あまりにも早い攻めに、男は成す術もない侭血塊に姿を変えていた。
僕の足下には大量の血溜まりができ、其の腕は真っ赤に染まってポタポタと鮮血が滴り落ちていた。

「ば、化け物だぁぁぁぁ!!!」

他の男達は逃げようとした。
しかし次の瞬間、男達の中の一人が身体から紅い血が噴出した。
僕が其の男の腹に腕を突き刺し、抉るように引き抜いたのだ。
そして軽く跳躍すると、今度は頭部を蹴り潰していく。
恐怖に言葉を発せない男共に狂気的な笑みを浮かべながら、じりじりと死の淵へ追い込んでいく。
沢山の断末魔と血飛沫が、僕を中心に其の色を染めていた。


積みあがった死体を見つめながら、僕は向きを変えて歩き出した。
途中に、又違う者達の死体の山があったが、僕は一瞥もくれず通り過ぎた。
人間に興味などない。


        —————————──


歩き続けて、今まで真っ暗だった路地裏の先の方に光が見えた。
路地裏を抜けるともうそんなに時間が経ったのか、空が赤く火照り始めている。

「────や、っと僕は、自由……」

路地裏を抜け江戸の町で足をフラフラと歩ませながら、僕は今後如何するかを考えていた。
此の侭此処に居てもどうせ又別の輩に見つかるだけだろう。
今度は今日の様には上手く片付ける事が出来ないような気がする。

疲れ切った心身で考えられる事は限られてくる。
疲れの所為か、何時もの様に頭が回らない。

其の時、急に何かで躓いた。
僕は其の侭立ち上がれず、何処か立派な門の前で平伏していた。
そんな時────。

「——じょ———さん」

「———おい——お嬢さん——」

キラキラとした光が見える。
身体に感じる冷たいコンクリートの温度と固さ。
うっすらと聴こえる声に重たい瞼を開ければ其処にボンヤリと見えたのは柔らかそうな栗色の髪の綺麗な男。

「……天使??」

手を伸ばそうとしても動かなくて。
其の侭又闇に飲まれ、気を失った。

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