二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】No title...(仮) ( No.43 )
日時: 2010/07/30 14:38
名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: pzCc2yto)

僕の世界の正し方。

嘲笑う君と、泣く泣く僕。
本質は全部同じもの。

何時から離れてしまったの??

涙と笑顔の交わる世界。
強く弱く結びましょう。

────ほら。
此れが僕の世界の正し方。



▼mad03、陽だまりに微笑む



—───小鳥が囀ずる声がする。
ぐぅぅ、と。
布団の中で伸びをして僕は起き上がった。
思えばこんなに睡眠を貪ったのは何時以来だろう。
慣れぬ布団の感触より明らかに寝過ぎで身体のあちこちがバキバキと音がしている。
寝ていた布団から這い出して布団を畳む。
部屋に置いてあった姿見を見ながら服を直すが何せずっと布団から出ずに寝てばかりだったのだ、服についた皺はちょっとやそっとじゃ伸ばせる筈もない。
かといってお借りした女中さん用の着物は恥ずかしながら着付けが出来ないし。
如何したものかと思案に暮れるよりも早く変にペタリとした自分の髪に気付く。

────あれ、僕何日お風呂に入ってない??

少し記憶を呼び出さすと、推定3日位は入っていない。其の時ゾゾッとした感覚がした。
今は何よりも身体を綺麗にしたい。
近藤さんに頼んでシャワーでも浴びさせて貰おうかと部屋を出ると廊下を歩く土方さんを見つけた。
声をかけるより早く僕に気付いたようで土方さんは此方へと足を向けてくれた。
昨日見た黒の上下の制服姿では無く着流し姿。
煙草を銜えているのは変わらないが和服姿の男性を見るのは新鮮な気分だ。

「お早う御座います」
「……あぁ。身体は大丈夫か??」
「はい、お陰さまで」
「…………」

ペコリと頭を下げて土方さんを見上げれば彼は僕を言葉無く凝視した侭で。

「どうかしました??」
「あっ、いや。お前……小さいんだな」
「……は??」
「背だよ、背」

あぁ、そう言う事か。
確かに此処に来てからしっかりと立ち上がり人と接するのは初めての事で。

「よく言われます」
「あ、何だ、其の。わ、悪い意味じゃなくてだな……」

小さい頃からよく言われていて────僕としては言われ慣れて気にしてもいない事だった。
まぁ、ちょっとは気にしてはいるが。
如何にも悪い事を言ってしまったというように必死に言葉を探そうとしている土方さんの姿が、初めて顔を見た時の鋭い視線を持つ人と同じ人物と思えぬ位に可愛らしく感じ、くすりと微笑みが零れてしまった。

「昔から言われているし。全然気にしてないです」

微笑み交じりに返した言葉に、「そうか、此れから伸びるだろうしな」と笑った。
成長期も過ぎた今、身長が此れ以上伸びるとは考えられないが土方さんの其の顔に不覚にもドキリとしてしまう。
────此の人の笑顔、初めて見た。

「近藤さんに何か用か??」
「あ。そうだ。あの、申し訳ないんですが浴室お借りしたいのですが」

部屋を出た目的を告げると土方さんは、うーんと考えたようだった。
そして、「案内する」と一言口にすると先立って歩いていく。
足の長さは此れ程までに歩幅に影響が出るものなのかと呪いたくなるくらい、直ぐに離されてしまった。

「えっ!! ……うわっ、ちょっ!! ひ、土方さん!?」

前方を歩いていた土方さんが踵を返して来たかと思うと易々と僕を抱きかかえ────所謂お姫様だっこ。
人を抱き起こす事はあっても自らが抱えられる事なんて無かった僕は驚きと羞恥で彼の腕の中でもがいた。

「危ねぇだろ。掴まってろ」
「いや、でも。歩けますし重いですし」
「そんな傷だらけの足で歩かせられるか。其れに重くねぇ」
「!?」

包帯の下見たんですか、と言いかけた言葉は急に立ち止まった土方さんの舌打ちによって飲み込んだ。
何事かと思い視線を前方に移すと其処には、沖田さんが立っていた。

「土方さん、早速セクハラですかィ。質が悪いや」
「ウルセー、総悟!! 風呂場に連れていってやるだけだ」
「どーだかねィ。朝っぱらから、とんだロリコン野郎でさァ。死ねよ、土方コノヤロー」

お早う御座います、と沖田さんに挨拶をする間も無く。
目の前にいた沖田さんは僕をヒョイと土方さんから奪い、何時の間にか僕は沖田さんの腕の中で────。

「お、沖田さんもッ。僕、大丈夫ですから。歩けますから」
「遠慮するもんじゃねぇよ。土方コノヤローより俺のが優しくしてやりまさァ」
「おまっ、総悟!! 何言ってやがるんだ!」

僕を挟み頭上で言い合いを始める2人。
仲が悪いんだろうか、とか思う点は多々あり言いたい事も多々あり。
しかしお姫様抱っこの侭と言う羞恥の方が強くて。
僕はずっと顔を赤らめていた。

「雅焔、もう土方さんに近付いたら駄目ですぜィ。ロリコン野郎なんだから」
「俺が何時からロリコンだ、コノヤロー!!」
「もう其の話は良いですから。早く風呂場に連れてって下さい!!」


   ───────────


「あぁ、気持ち良ぃ」

数日ぶりに髪を洗い、身体を洗って湯船に体を浸ければ暖かさが足先から身体中へと広がり、ホォッ息が出る。
ちゃぷん、と。
一人で入るには大き過ぎる湯船に身体を預け首筋へ湯を染み込ませれば頭に浮かぶ先程の土方さんの言葉。
真逆、あの傷を見られていたなんて。
包帯が弛んでいたのは、きっと一度誰かが解いたのだろう。

────上手く、隠してたつまりだったんだけど。

見栄とも虚栄心からとも言える事を一人ごちる。
十分に暖まった身体で脱衣場へと入れば沖田さんか土方さんが用意してくれたのだろう。
バスタオルと着物が置いてあった。
身体の水分を拭き取り、さて如何したものかと着物を手にとるが、浴衣の着付けも満足に出来ない僕だ。
無理、着れないと結論が早々と出て今まで着ていた洋服に再び袖を通した。

/next