二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】僕の世界は壊れた。 ( No.44 )
- 日時: 2010/07/30 14:48
- 名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: pzCc2yto)
僕には何もない。
独りは慣れっ子なのに今は孤独感に潰されそう。
其れでも僕は我慢する。
醜い僕には此れ位が丁度いい。
寂しい何て言わない、言える筈ない。
弱音なんて言えない 。
只 押 し 潰 さ れ そ う で 苦 し い
▼mad04、優しさに触れて
「あれ?? 着物、着なかったんですかィ??」
ガラリ。と、脱衣場の扉を開ければ温度の低い空気が火照った身体に触れて気持ちが良い。
と思っていると、扉の直ぐ側には沖田さんと土方さんがいて少し驚いた。
ずっと待っていてくれたのだろうか。
「実は今まで洋装しか着た事がないので、着付けが判らなくて」
「……しょうがねぇな。後で羅奈を部屋に行かせるから教えて貰え」
「はい。すみません……って、ちょっ、お、沖田さんッ」
────羅奈とは、誰ですか。
と言う前に、又もや沖田さんに抱えられてしまい入浴からの火照りでは無い熱が顔に広がっていく。
「足、傷だらけなんだろィ」
「沖田さんまで見たんですか。でも大丈夫ですから」
「嘘つきはお仕置きしやすぜ??」
ニヤリ、と覗き込んできた顔が有無を言わさぬように感じて抵抗を止めた。
チッと舌打ちを溢した土方さんを其の侭に沖田さんは足早に僕が寝かされていた部屋へと歩いていく。
こんなにもお姫様抱っこをされる事になるならもう少し痩せておけば良かったと頭の隅で考えている僕をよそに器用に足で襖を開けた沖田さんはそっと畳に僕を下ろしてくれた。
「有難う御座いました」
「此れ位、お安い御用でさァ」
笑った顔の沖田さんは幼さがあるのに────やはり男の人なんだなぁ。
見た目からは感じなかった逞しさにドキマギしてしまった自分自身を心の中で嘲笑う。
思えば健康体な男性との縁は皆無に等しい場所しか居なかった気がする。
「油断してると、襲われますぜィ」
ゆらり、と彼が動いたかと思えば組み敷かれ視界には天井と沖田さんの妖しげな笑み。
「沖田さん、退いて下さい」
「総悟でさァ。総悟って呼ぶなら退きますぜ」
「判った。総悟って呼ぶから」
どうにか此の状況を脱しようと、わたわたと身を捩っていたら何処からともなく聞こえて来た足音——──。
「総悟ォォォォ!! テメェ、何やってやがるんだ!!」
「何って此れから雅焔とナニを……。空気読めよな、土方さん。死んでくれよ、土方さんよォ」
「テメェが死ね!!」
ベリッと沖田さん……じゃなく総悟を引き離した土方さん。
総悟は僕をからかっただけだろうけど、正直こういう事の対処に慣れていない僕は、助かった────と力が抜けてしまいそうになった。
「仕事しろ!」と追い出された総悟は「ヘイヘイ」とやる気の無い返事をしながら部屋から出て行く。
「はぁ……」
「雅焔、大丈夫だったか??」
「お陰様で何とか」
「アイツにはキツく言っとくから」
「すまねぇ」と頭を下げる土方さんに大丈夫だからと慌てて頭を上げて貰った。
土方さんを見れば手には新しい包帯と湿布。医務室へ取りに行ってくれていたのだろう。
受け取って古い包帯を取り、新たに包帯を巻く作業をじぃっと見られていた。
「どうかしましたか」
「其の傷、如何したんだ??」
「お、覚えてません」
真逆、此の傷の事を其の侭話すわけにもいかないから、僕は慌てて場を取り繕う。
けれど、誤魔化しきれなかったらしい。
土方さんは僕の顔を覗き込みながら、苦笑交じりにこう言った。
「流石に手際が良いもんだな」
「そうですか?? 慣れってやつですかね」
土方さんの言葉が何だか擽ったい。
包帯を巻いとけばも大丈夫だと告げると、屯所内を案内すると言われ朝食後に部屋へ迎えに来ると言い残すと、彼は足早に去っていった。
朝食は又アリスが運んで来てくれるのだろうかと思っていたら別の方が運んで来てくれた。
「雅焔。朝食を持ってきた」
「あ、有難う御座います。……えっと、すみません。名前教えて頂けますか」
「小生、名は羅奈と申す」
「ああ、貴女が羅奈さんなんですね。宜しくお願いします。僕は雅焔です」
羅奈さんと名乗った其の方は真選組での勤めが長いらしく色々と話してくれた。
世間話をして貰いながらの食事を終えると、着物の着付けを教えてくれ、どうにか着る事が出来た。
「こんなもんで大丈夫でしょうか」
着物姿など自分で見慣れない僕は姿見越しに羅奈さんへ視線を送る。
すると、羅奈さんは微笑みながら頷いてくれた。
「上出来だ。後は慣れるだけだ」
「はい。着方を忘れないようにします」
「そう気負わなくても良い。又判らなければ、何時でも小生に訊くと良い」
「有難う御座います」
此の時代に着物の着方が判らない、等と言う僕に嫌な顔もせずに教えてくれた羅奈さんに感謝だ。
おまけに簪での髪の結い方まで教えてもらえ、感謝しきれない。
じゃあ、小生はそろそろ……と、御膳を手に部屋を出ようとした羅奈さんを引き留め、恥ずかしくはあるが女性にしか言い出せない事を口にした。
「うむ、そりゃなかなか言い出せない事だな。判った。小生がゴリラか副長にさり気無く話しておこう」
「すみません、有難う御座います」
「困った事があれば小生に何でも言ってくれ」
本当に此処の方は皆、良い方ばかりだ。
流石に下着の替えが無いとは言いにくく悩んでいた処だったが羅奈さんから伝えて貰える事にホッとした。
今までは買主が必要な物は全て取り揃えてくれていた為なんの心配は要らなかったが、今回はそうはいかない。
────僕は本当に此処に居ても良いのだろうか。
って、駄目だ、駄目だ。
マイナス思考になってはいけないと頭を二、三度振って沈む思いを打ち消してたら襖の向こうに人の気配を感じた。
「雅焔、良いか??」
「はい。どうぞ」
開かれた襖から入って来たのは土方さんで。
今朝方とは違い制服に身を包んだ姿。
煙草を口にしているのは毎度の事だが今回は腰に刀を携えている。
「……着物に着替えたんだな」
「あ、はい。似合いませんか」
「いや、良く似合ってる」
ハッと顔を上げれば頬に少し朱を浮かべた土方さんがいて。
羅奈さんから聞かされた「鬼の副長」と言う呼び名は本当なのかと思ってしまう優しさに嬉しいと思った。
「屯所を案内する。歩けるか??」
「はい」
会議室として使っている部屋、食堂、厠、隊士達の部屋────そして取調室とやたらに広く感じる屯所内。
土方さんに案内されつつ進むが果たして覚えたのかと問われたら全く自信が持てない。
「トシ〜、雅焔ちゃ〜ん!! ちょっと来てぇ〜!!」
一通り屯所内を案内してもらい自室へ帰ろうかとしていた所。
聞き覚えのある声が名前を呼び隣に歩く土方さんと共に声の主、近藤さんへの自室へと向かった。
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