二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】僕の世界が壊れた。 ( No.100 )
日時: 2010/08/03 12:23
名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: 5oH7j2fh)

僕は何が欲しいのだろう。
愛、場所、友、時間、金、其れとも自分?
全部違う。

其の時僕は子供だった。
今も子供で未来にいた。
生きる場所。
生きる時間。
生きる僕。

其処にあるのは明るい光でいっぱいの場所。
僕が探してた、笑顔で満ちた世界。



▼mad08、笑顔の作り方



バタバタと響く足音。
スパーンと小気味良い音を立て開けられた襖からは、足音から予想をしていた2人の姿が────。

「「雅焔!!」」
「土方さん、総悟」

鬼兵隊の頭である、高杉晋助と衝撃的過ぎる出逢いをした僕は退さんとアリスと無事に屯所へと帰って来て。
報告してくるからと部屋を出て行った彼等を見送って、間もなく2人が部屋へやって来たのだ。

「高杉に何かされたか!?」
「怪我は無いですかィ??」

自分の口からまた他人に説明するのは、躊躇われる事なのに。
退さんたら、何をされたか説明したんじゃないの?? と思っていたら又足音が部屋へと近付いて来た。

「雅焔ちゃんンンッッ!! 大丈夫?? 大丈夫なの!?」
「も〜、局長も副長も沖田隊長も皆。人の話は最後まで聞いて下さいよ〜」
「そうだぞ。焦ったって起きた事は直せん」

泣きながら部屋に入ってきた近藤さんと、其の後ろからぼやきながら走って来た退さんと羅奈さん。
退さんの様子から言ってくれなかったんでは無く、最後まで聞いてくれなかったんだなと判った。

「近藤さん、土方さん、総悟。其れに退さんも羅奈さん。ご心配おかけしてすみません。僕、大丈夫です」
「……雅焔、何でマスク付けてるですかィ??」

退さんが退室してから、直ぐに此方へ近付いて来た足音にファンデーションなんかで傷を隠す時間も無く。
僕の顔には偶々身近にあったマスクが付けられていた。

「こっ、此れはですね。あの何て言うか」

鬼兵隊の高杉晋助に刀向けられちゃって出来た、なんて言えない。
余計な心配はさせたくない、だから言えない。

「────雅焔さん、高杉に傷付けられたらしいんですよ」

しかし、言うのを躊躇っているうちに、退さんが変わりに言ってしまった。

「傷、だと?? 雅焔見せろ」
「早く見せてみなせェ」
「女子の顔に傷を付ける等、高杉の奴許せんな」
「雅焔ちゃんが、き、傷物に!? おのれェェ、高杉め!!」

ほら、こうなるんだからと退さんに視線を送るも全く気づいていない様子で。
許せませんよね、等と話の輪に入っている。
こんな傷をつけられたのは嫌だし僕も許せないとは思う。
でも、其れが退さんが教えてくれたように、其の相手が危険なテロリストなら──────。
正直なところ此れ位で済んで良かったとも思えるのだ。

「────っ!! ヤロー、絶対しょっぴいてやる!!」

見せろと余りにも言うので見せたら土方さんと総悟の目には狂気が宿り、近藤さんは更に涙を溢れさせた。

「でも此れ位で済んだんですから。すみません、お騒がせしてしまって」
「雅焔ッ!? 女子の身体は大事なものなのだぞ!?」
「そうだよ、其れを高杉が。否、雅焔ちゃんの身体が汚れたなんて思っちゃいないけど。
そうだ、事故!! 事故みたいなものだと思えば良いんだよ。そんなの事故なんだ。気にしなくて良いから」

ガバリと、いきなり近藤さんに抱き締められ身体がギチギチと……く、苦しい。
其れに何だか大袈裟で。
当の本人はこんな傷等、もう然程気にしていないのだが。
陽空は治癒能力もたけていて、余程の傷じゃなければ数時間後には完治していた。
きっと此の傷口も数時間後には、綺麗さっぱり消えてるんだろう。
近藤さんと羅奈さんの事だ、僕なんかの為にも彼等は心を傷めてくれたんだろう。
そう思うと抱き締められている苦しさからでは無く、────涙が滲んでしまう。

「御免なさい。其れから僕なんかを心配してくれて有難う御座います」
「雅焔ちゃん、そんな言い方は良くない。此処にいる奴らにとって君は、かけがえの無い存在なんだよ」

笑って、有難う、と伝えたかったのに。
彼の言葉が余りにも暖か過ぎて、涙が込み上げてくる嗚咽が其れを邪魔する。
僕はなんて幸せな者なのだろうか。
此の世界に来て初めて声を上げて泣いた。
其れは悲しさからではなく嬉しくて、暖かい涙。

「まぁ、取り敢えず。雅焔に大きな怪我が無くて良かった」
「そうですねィ。高杉のヤローは俺の中で4/3殺しに決定したけどねィ」

其れじゃ殺しちゃう事になるじゃん、と。
総悟の言葉に小さく笑った。

「……雅焔、高杉は何か言っておったか??」
「彼は僕の事を知っているみたいでした。接し方が僕等がまるで知り合いみたいでしたし」

今度逢ったら────、彼が言った事は伝えなかった。
僕が真選組にいる事を知っているなら、そんな事は無理だろうと思えたからだ。第一彼のものに、なんて有り得ない。
好感度など微塵も感じさせない出逢いだったからと言う事も勿論あるが。
其れから“銀時”って人の名前も伏せた。
誰だかは知らないが、彼を巻き込みたく無かったし、何となく話したらいけない事の気がして。

「────雅焔、暫く外を歩くのは俺か総悟が一緒に出れる時だけにしろ」
「其れが良いですねィ。彼奴らの動きが掴めないうちは用心に超した事はねェ」
「ザキ、お前は引き続き高杉の動きを追え」
「あいよっ」

出掛ける時は土方さんと総悟が一緒にいてくれるなら心強い。
次に団体で押寄せて来られたりでもしたら、流石の僕も対処できない。

「……ところで何で局長、雅焔さんに鬼兵隊の────高杉の事話してなかったんですか??」

奴らが江戸に────、との話は数日前からあったのに、と退さんが首を傾げた。

「えっ!? いや、トシがてっきり話しているかと」
「あぁ?? 俺は何時も総悟が部屋へ行ってるようだから総悟から聞いているかと思ってたんだよ!!
総悟、てめェ何で肝心な話して無かったんだ」
「あー、俺は羅奈かアリスが話すと思ってたんでさァ。女同士ですからねィ」
「む。小生は山崎が言っておったのかと思っていたぞ。奴らの動きに詳しいのは監察だからな」
「え、え、エェェェェェ!? 俺!? 俺が悪いんですか!?」

近藤さん、土方さん、総悟、羅奈さんの痛い視線を受けて退さんは慌て出したけど。
元を正せば悪いのは僕だ。
彼等の仕事をちゃんと理解しようとしなかったのがいけなかったんだから。

「皆さん、僕が悪いんです。僕がもっと此の世界の事、勉強していれば。御免なさい」
「否、ちゃんと説明していなかった俺達が悪い。
其れに雅焔を危ない目に合わせちまったのも俺が油断していたからだ。……すまねぇ」

土方さんに何の落ち度も無いのに。
僕は慌てて頭を振り否定したのだが────。

「そうでさァ。全部土方さんが悪い。って事で腹切って下せェ。俺が介錯しまさァ」

いつもの感じで総悟君が茶化す。
でも、苦し気に顔を歪ませながら僕へ謝った土方さんの顔が、何時もの顔に戻ってほっとした。
あんな顔をさせたかった訳では無かったから。
不本意ではあるが、ちょっとだけ晋助に感謝した。
彼が残した傷のお陰で僕は、幸せ過ぎる位、彼等の想いを知れたから。
キリッ、とあの時感じた痛みは、比べ物にならない程の温かい言葉や想いが綺麗に消してくれた気がした。

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