二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】僕の世界が壊れた。 ( No.116 )
日時: 2010/08/09 12:11
名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: SvZZ75HI)

最近、少し考えるんだ。

僕はどうして生きてるんだろうって。
何故生きてるんだろうって。
只時間が過ぎていくだけの事を、
「 生きてる 」って言っても良いのかって。

こんな無意味な消費。
変えなきゃいけないと思うのに、何したら意味が付くのかも判らない。

ねぇ、誰か教えて。
ねぇ、誰か助けて。

嗚呼僕は、
生きてるのに、死んでる。


▼mad11、優しく酷い嘘



僕は万事屋の方々に全てを話した。
自分が真選組で御世話になってる事────。
そして今、土方さんと逸れた事────。
勿論自分が陽空族である事は上手く除いて、彼等に話した。

「嬢ちゃんさァ、ずっとあそこにいるの?」
「真選組に、ですか??」
「うん、そう。真選組にいると思うと俺としたら気が気じゃないのよ」

何処か自嘲気味に笑う坂田さんだけど、其の瞳は笑ってなくて。
そんなに真選組の人達は悪い人達じゃないのにな、等と考えていると坂田さんに額を突っつかれた。

「今、検討違いな事考えてるだろー」
「検討違い? 皆、良い人達なのに……って考えていましたけど」

はぁ、と銀さんは肩を落としながら溜め息を吐いた。
けれど、彼が何故溜め息を吐いたのかの方が僕には検討がつかず。

「……でも、土方さんは何処に行ってしまったんでしょうね」
「マヨラーの事アル。今頃、スーパーでマヨネーズ貪ってるに決まってるヨ」

僕と坂田さんの重い沈黙を追い払うかのように、神楽ちゃんと新八君が言った。
でも確かにそうだ。何故土方さんは急に僕の前から姿を消したのか、全く判らないのだ。
以前の事もある為、土方さん達僕を独りにするとは考えられない。
もしそう為っても、あれだけ名前も叫んで町中を走り探したのだから直ぐ見つかる筈だ。

「もし、僕の勘が当っていれば……彼等は僕をワザと独りにさせたんじゃないか、って思うんです」
「其れって、お前を捨てたって事アルカ?」
「ちょ、神楽ちゃんッッ」

そう言った神楽ちゃんの口を慌てて塞ぐ新八君。
彼の目は申し訳なさそうに僕を見詰ていた。

「いえ、決して悪い意味じゃないんです。皆がそんな事する筈がないから」

真選組の皆は、決して悪い人達ばかりではないから。
あそこに御世話になったのは未だ少し前の事だけれど、今までの出来事を含めて、僕はそう言切れる。
少なくもと僕は、彼等を信頼してるから。

「……きっと今、土方さん達は戦場に居る筈です。僕を独りにさせたのは其れにまき込めない為」

多分、僕と万事屋の皆さんが逢えたのも土方さんが仕組んだ事、と付け足して僕は言った。
其の後、少しの沈黙が流れたが「判った」と笑い、頭をくしゃりと撫でてくれた坂田さんの顔。
其れは、以前見た土方さん笑顔と一致して────……。
────────優しかった。

「……ケホッ、ケホッゴホッ」

以前の事を思い出していた僕だったが、突然の咳により現実に引き戻される事となる。
坂田さんは咳き込む僕の背中を擦ってくれて、心配そうに顔を覗き込んできた。

「オイオイ、大丈夫か?? 風邪引ィたんじゃねーの?」
「大丈夫ですよ。身体は、丈夫な方ですから」
「んな事言ったってなァ、馬鹿は風邪引かねーって言うけどな、ありゃ迷信だ。
 馬鹿だって生きてんだから風邪ぐれェ引くぜ??」
「其れは僕が馬鹿だと言いたいんですか」

本当に大丈夫ですから、と付け足す僕にフッと笑みを零す坂田さん。
事実を言えば、本当は大丈夫なんかじゃない。喉奥は燃えるように熱いし、心蔵は締め付けられる様に痛い。
此れは風邪とかそんな軽いものではなく、“病気”。
其れに気付いたのも、つい先程の頭痛で判ったのだけれど。

「で、お前さんは行かなくていいのか??」
「……無理ですよ。場所さえも判らないんですから」
「でも行きてェんだろ??」

そう言い、ソファーから立ち上がり僕の手を取る坂田さん。
窓から夕陽が跡形もなく山陰に沈んだ様を眺めながら、躊躇う僕を諭すようにこう言った。

「誰がどうとかじゃねェ。大事なのは、テメーが如何したいかだ」
「…………」
「で、自分はどーしたいんだ??」

僕の方に振り向き、坂田さんはそう問いただす。
僕が、したい事は────……。


    ───────────


「御用改めるである!! 真選組だァァア!!」
「しっ……真選組ィ!?」

土方の其の言葉に慌てふためく相模と攘夷浪士達。
真選組が突入したのだ。
そんな中、近藤の合図が高らかに響いた。

「呉服屋主人・相模湯太郎。麻薬密輸及び、攘夷浪士との関係性によりお縄を頂戴する!!」

近藤の其の言葉を合図に、一斉に斬りかかる隊士達。
キィィン、と刀がぶつかり合う金属音が響く。薄暗い中、激しい攻防戦が続く。

「チッ……。こう薄暗いと敵か味方かわかんねーな。……!!」

何かの気配というか殺気を感じた土方は、咄嗟に避ける。
其の刹那、敵の攻撃か、刀が振りかかってきた。

「うおォォォォォオ!?」
「……チッ。避けたか」

避けた拍子に転んだ土方は声のした方へ顔を向ける。
其処にいたのは、不機嫌そうな表情をした沖田が土方を見下げていた。
こんな時にまで、と一部始終を見ていた隊士等、そして土方さん誰もが思った。

「おま、何しやがんだ!!」
「あらら?? 何でィ土方さんでしたかィ。俺ァてっきり敵かと思いやしてねェ」
「嘘吐けェェェェ!! 此処だとお前の顔はっきり見えるぞ!!」
「いやァ、土方さんに似た敵だと思いやして」
「似たって何!? 似たって!? 明らか俺を狙ってるじゃねーか!!」

そんなやり取りをしていたが、土方はある事に気づく。
周りの……攘夷浪士達の様子がおかしいのだ。

「……オイ、何かおかしくねェか??」
「アンタの頭が?」
「オメーの頭かち割るぞ!! ……そうじゃねェ」

目を凝らし、辺りを見回す土方。
そう、攘夷浪士達は麻薬を守るどころか、あろう事か大切な麻薬を斬っていた。
其の異様な行動に真選組の動きが止まる。

「ゴホッゴホッ……糞っ、何て麻薬の量だ」

倉庫の中が麻薬で充満し、何も見えなくなる。
まるで麻薬を煙幕にでも使ったように前方や後方が確認できない位辺りは真っ白だ。
其の時、隣にいた沖田は散らばった麻薬を人差し指で掬い、一舐めする。

「……土方さん。こりゃあ麻薬なんて大層なもんじゃねーですぜィ。…………小麦粉だ」
「何だと!?」

其の言葉を聞いた土方はハッとし、真逆!! と思った。
薄暗い倉庫、撒き散らされた小麦粉、声の消えた攘夷浪士達。
そして、さっきから見当たらない相模の姿。
全てに合点がつく。

「テメー等ァァア!! 今直ぐ此処から出ろ!! おっ死ぬぞ!!」

土方の其の言葉に疑問を感じながらも、慌てて扉へ向かう隊士達。
しかし周りが見えなくて、中々扉まで辿り着く事が出来ない。


「馬鹿な犬共よ。こんな罠に引っ掛かるとは」

姿を消していた相模は何と隣の倉庫の上にいた。
実は、今回は麻薬密輸が目的ではなく、以前から相模の事を嗅ぎ回っていた真選組を一網打尽する為の罠を仕掛ける事が、本当の目的だった。
麻薬に見立てた小麦粉を使って。

「此の私が真選組如きに尻尾を掴まれるワケがなかろうが」

そう。山崎が報告した調査内容は、全て相模が用意したデマだったのだ。
真選組をおびき寄せる為の。

「粉という物は大気中に充満すればガスと同じ。
 其処に火を入れればどうなるか。幾ら奴らでも一溜まりもないだろう」

相模はニヤッと妖しく笑うが、一瞬にして冷酷な表情へと変える。

「やれ」
「はっ」

一人の部下が、火のついた小さな松明を開いた窓へと器用に放り投げる。
其の瞬間、“大爆発”という単語がピッタリな程の大きな音を立てて、倉庫が吹き飛んだ。
爆風で相模達も吹き飛ばされそうになるが、グッと何とか耐える。
そして、シーンと静まり返り、後に残ったのは倉庫の見るも無惨な残骸だけだった。

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