二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】僕の世界が壊れた。 ( No.118 )
- 日時: 2010/08/11 14:20
- 名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: 0NXasKQ3)
“見えないもの”とすれ違っても、気づく事なく生きていく。
忘れ去られた、僕の特権。
今此の侭で何が出来るのだろう。
ヘマして傷ついて、泣きだして全て辞めて。
鏡の向こうには背を向けた僕。
腹を決めて、駆け出して。
手を伸ばして、掴みとって。
鏡の僕が告げる「 其れが君 」
雁字搦めの世界の中心に、儚い声が響いてく。
立てる場所は「 此処ではない 」
目指すは遥か彼方、君の元へ。
立ち上がれ、大地に足をついて。
▼mad12、心配御無用
「……オイオイオイ、さっきの爆音は何だァ??」
バイクを走らせる坂田さんは、少し不安の混ざった声色で言った。
先程の爆音で、僕の不安は募る一方である。
其の時、大きな犬の背に乗った神楽ちゃんが港の方に向かって指をさした。
「銀ちゃん!! あれ!!」
坂田さんの後ろに乗っている僕は不安を隠しきれなかった。
彼等を信じていないわけじゃないけれど、陽空や夜兎のように治癒力の弱い皆にもしもの事があったら。
そう思っただけで、身体が震えた。
「……チッ、嫌な予感がするぜ。お嬢ちゃんしっかり捕まってろよ!!」
僕の返事を聞く前に、坂田さんはバイクのスピードを上げる。
其れは本当にしっかり掴まってなければ、勢いで振落とされる位のスピードだ。
明らかなスピード違反だが、今はそんな事を気にしている暇はない。
「定春!! こっちもスピード上げるネ!!」
「ワン!!」
「えっ、ちょっ神楽ちゃんんんんん!?」
其の鳴き声と共にスピードを上げていく“定春”と呼ばれた大きな犬。
バイクと巨大な犬が物凄い速さで道路を走る。
端から見れば異様な光景だろうが、僕等は全く気にしていなかった。
いや、僕と坂田さんと神楽ちゃんだけは気にしていなかった。
「いや気にしろォォォォォオ!!」
新八君のツッコミも虚しく掻き消され、二つの暴走物は港へと向かう。
───────────
「此れで私の邪魔をする者はいなくなった」
残骸の山を眺めながら高笑いをする相模。
だが其の時、残骸から微かにカタカタという物音がした。
そして────。
「「「うぉりゃあああああ!!!」」」
「!!」
なんと瓦礫の中から真選組が勢いよく飛び出してきたではないか。
驚き唖然とする相模達は、言葉を失くしている。
「全く。危うく生き埋めになりかけたぜィ。只でさえ酸素が薄いのに、土方さんが騒ぐもんだから」
「沖田が土方にちょっかい出すからでしょ!!」
多少、服等がボロボロになっているが、奇跡的に死傷者はなく、全員ピンピンしている。
「な……何故だ!? 何故生きてるんだ!?」
「知らねーのか?? 此処の倉庫全部に地下室がある事」
「ち、地下室だと!?」
土方の話によると、港の倉庫には津波が起きた場合に備えて避難用に頑丈な地下室が設けられているという。
其の地下室に、爆発直前彼等は咄嗟に身を潜めたのだ。
「まっ、知らねーのも無理ねェか。
其の事は警察の関係者か、救急隊、港を利用する漁師や一部の奴しか知らねー情報だからな」
「ましてや、呉服屋が倉庫を利用するなんて事、ありやせんしねィ」
そう言い、煙草を吹かす土方とニヤリと黒い笑みを浮かべる沖田。
相模は驚きで顔を歪めていたが、其れは一瞬にして殺気に満ちたモノへと変えられる。
「攘夷浪士共行け!! 生かして帰すな!!」
「「「うぉおおおおお!!!」」」
相模の指示で、再び一斉に斬りかかる攘夷浪士達。
しかし、そんな事でへこたれる真選組ではない。
土方さんは煙草の吸殻を投げ捨てると、声を張り上げた。
「こっからが本当の喧嘩だ。行くぜ!! テメー等!!」
「「「うぉおおおおお!!!」」」
此方も土方の指示で一斉に斬りかかる。
再び激しい戦いで、穏やかな港が戦場へと変わっていく。
しかし、其の闘いは終わり、というモノを知らない。
「チッ。斬っても斬っても湧いてきやがって限がねェ」
「予想以上に攘夷浪士を従えてやすねィ。しかも強者ばかり」
「あのジジィ、何処まで根張ってやがんだよ」
真選組と攘夷浪士の戦いは一見、真選組が有利に見えていた。
しかし、次から次へと出てくる強者たちに土方は苛立っていた。其の上、其のジジィの姿が見えない。
攘夷浪士に囲まれて、背中合わせに息を切らしながら会話をする二人。
すると、沖田は又ある異変に気付いた。
「……土方さん」
「何だ」
「近藤さんも見当たりませんぜィ」
「…………ハァ!?」
沖田の言葉に振り返り、隅々まで辺りを見渡すが、確かに近藤の姿が見当たらない。
真逆あの爆発にやられたとでも言うのだろうか。
「あの馬鹿、何処いんだよ!?」
次々に出てくる敵を斬りながら、近藤を探す。
あの近藤がやられるという事は考えられないが、万が一という事もある。
いや、もしかしたら相模を追いかけていったのかもしれない。
何はともあれ、自分の大事な大将が無事でいてほしいと土方は願った。
「……いやしたぜィ。近藤さん」
そう冷静に言い、ある方向を指差す沖田の指を目で辿る。
其処にいたのは先程危うく生き埋めになる処だった倉庫の残骸に上半身だけ出し、必死にもがく近藤だった。
「近藤さんんんん!? あんた何やってんだよ!?」
四方八方からくる敵の攻撃をうまく避けながら駆け寄る土方。
当の本人は半泣き状態で、局長という肩書きは丸潰れである。
「抜けなく、なっちゃった」
「頼むから士気が下がる事だけはしねーでくれって、何時も言ってるだろーが!!」
つか、よく無事でいられたな。
と呆れたように付け足し、刀を一旦鞘に収め、残骸から近藤を引き抜こうと手を取り、力を入れる。
だが其の時、僅かに背後から気配……いや、殺気を感じた。
素早く顔だけ振り向かせた土方は其の光景に内心、舌打ちをする。
気配を消して近づいてきた一人の攘夷浪士が土方に向けて、刀を勢いよく降り下ろしてきたのだ。
「トシ!!」
此の速さだと抜刀しても間に合わない。
だからといって、此の侭交わせば近藤に直撃だ。
其れだけは避けたい。
動けない近藤を庇おうと、土方は咄嗟に彼を抱き締めて浪士から守った。
身体に刃が突き刺さる衝撃を覚悟した────のに。
土方の耳にヒュンッという鋭い風を切るような音が入ってきた。
─────……痛、くねぇ??
顔を上げると、襲い掛かってきた浪士は絶命していた。
喉を貫かれ物も言えずに其の場に崩れ落ちる浪士に、生という文字は無く。
「ボロボロじゃないですか、土方さん。特に近藤さんは何がしたいんですか」
直ぐ近くでからかいで弾んだ声が響いた。
バッと、土方が振り向くと────彼女は笑っていた。
血塗れた刀を握った侭“無事で良かった”と口にはしなかったが、そう言いたげに。
「……雅焔ッ、おま!! 何で此処に!?」
彼女は土方の問には答えず、只笑いながら、近藤の引き抜き作業を行っていた。
其の笑顔も何処か苦しそうで曇りの掛かった絵笑顔だった為、土方も近藤も言葉に詰まる。
「……いやぁ、どうしてもって駄々こねるからさぁ。銀さん達が連れて来てあげたってわけよ」
未だ笑顔の侭の雅焔を遮って、ひょこっと現れた銀時が土方の問いに答えた。
其れと同時に彼女の肩にちょこんと乗せられる銀時の手。其れはまるで肩を抱かれているような格好に。
如何したんだろう、と雅焔が思うよりも早く────。
「……万事屋っ!!」
「旦那ァ、雅焔から手、離して貰えませんかねィ」
「オゥオゥ、相変わらず殺気立ってるなぁ多串君と総一郎君は。流石チンピラ警察24時」
「っ!! 誰が多串だァ!! てめェ良いから、雅焔から手ェ、どけろ!!」
「総悟でさァ。さっさと離さないと土方さんより旦那の方が先に死ぬ事になりやすぜ」
……何なんだろう、此の雰囲気。
例えるのなら『一触即発』、そんな感じか。
戦場の中低レベルな言い争いに、最早怒りというより呆れの方が強い。
「……貴様等、そんな呑気に雑談してて良いのか?? 今の状況をどう乗り越える積りだ」
と、相模の呆れた声がふと聞こえる。
何時の間に姿を現したのだろうか。
何処だ、と辺りを見渡した時、漸く彼等は今の状況を理解した。
「あーあ、囲まれちゃいましたね」
「えぇ!? 雅焔ちゃんんんん!? 何、楽しそうに言ってんの!?」
「まぁまぁ、近藤さん。焦りは禁物ですよ」
「いや違うからね!! 雅焔ちゃんが焦らなさ過ぎなだけだからね!!」
何十人という浪士に完全に囲まれた状況の中でも余裕に笑っている雅焔に鋭い目を向ける銀時と土方と沖田。
其の視線に気付いても尚、笑顔の侭の雅焔。
ジリッと狭まる周囲の浪士。そして────。
「最後に言い残す事はないか?? 訊いてやっても良いぞ」
不敵な笑みを浮かべながら唸る相模。
其の時、雅焔がゆっくり手を上げた。
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