二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】僕の世界が壊れた。 ( No.146 )
日時: 2010/08/16 12:17
名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: GrJKliyZ)

          ◆永遠的閉鎖空間


時は江戸時代———─。
とは言っても泰平の世の中ではない。

数年前の天人襲来によって勃発した攘夷戦争。
高圧的に開国を迫ってきた天人に危機感を感じた侍達は、奴等を追い払おうと一斉蜂起して戦いを始めた。
だが天人の強大な力を見て弱腰になっていた幕府は侍達を置き去りに勝手に天人と不平等な条約を締結。
幕府の中枢を握った天人達は侍達から刀を奪い彼等を無力化した。
だが其れでも諦めずに戦いを続けた攘夷志士達。
────其の中の一人、坂田銀時は「白夜叉」という異名を持ち両陣営から恐れられる武神だった。


「白夜叉、覚悟ォォオオ!!」


叫びながら大刀を振り下ろす天人。
だが白い衣装を着た男は簡単に其れを避け、其の隙を狙い反撃した。
耳障りな肉の斬られる音に白夜叉は眉を寄せる。
生温い返り血が身体に、銀髪に染み付くのにはもう慣れたというのに。
此の音には何時まで経っても慣れない。


「うぎゃぁぁああ!! 白夜叉、貴様ァア!!」
「白夜叉ァァアアア!!!」


無残にも黒土に転がる、自身の左腕を見て発狂する天人。
怒りに身を任せ、雄叫びを上げながら天人は白夜叉へ向かっていった。
だが、武神「白夜叉」の異名を付けられた男がそんな天人一人に殺られる訳もなく。



「馬鹿の一つ覚えみてェに一々“白夜叉”って叫ぶぐれーなら、気配消して後ろから斬りかかれってんだ」



死にたくなかったらな、と吐き捨てた白夜叉の刀、衣装、そして光に反射して輝く銀髪は——─—。
────真っ赤に染まっていた。

つい先程斬った天人が最後だったらしく。
鼻をつく血の臭いと煙の立ち込める戦場は、静寂に包まれていた。
辺りを見回せば、

     
            死体



                    死体




             死体の山。


天人の死体だけではない。大切な、共に国を憂い戦ってきた仲間の死体もある。
白夜叉———─銀時は、唇を噛み締め拳を固く握った。
どれだけの敵を斬って倒しても、どれだけの敵から仲間を護ろうとしても。
天人も死体も仲間の死体も、増えていく一方で。
こんな風に戦っていても——─—此の国に未来は無い事なんて、特区に判ってる。
だが、止まらない。身体が勝手に前に進み、戦っている。

そうだ。俺は必死に戦う侍を捨て、さっさと天人と迎合した安い国なんざの為に戦ってるんじゃねェ。
国が滅ぼうが、侍が滅ぼうがどうでもいい。
只俺は、戦う仲間を護りてェ———─ そんだけだ。

____だが。
と、銀時は赤く染まった刀を自身の目の前に上げた。
コイツ—─——此の剣で、今まで何が護れたのか。
斬って斬って斬りまくって、一体何が残った?
自分自身に問うても答えは返って来ない。
こうやって敵と戦った後の自分に残るのは話した事もない天人を斬った罪悪感と嫌悪感。
仲間を護れなかったという重荷、死んだ仲間の為にも自分は生きていかなければならない。
だがこんな事をしている自分に明日なんてない、そんな思いばかりで———─辛い。

ふぅと溜め息を吐き、銀時は刀を鞘に収めた。
嫌な作業だがやらねばならない事がある。
其れは———─敵が持っているであろう、発達した武器や薬、其れに重要な情報を死体から見つけ出す事。
もっとも自分一人に負けた天人達が役に立つモノを持ってないと思うが、其れでも戦の後には此れが普通だ。
斬り落された腕や足、其の他諸々の肉片をどけながら進めなければならない其の作業は、酷く気分が悪くなる。
だが作業を進めながら仲間、そして敵である天人を弔うのも習慣だ。俺だけの────。


(嗚呼、何故だろうか涙が止まらない)
どんなに願っても、失ったモノは戻らないのだ。