二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】僕の世界が壊れた。 ( No.150 )
日時: 2010/08/16 12:25
名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: GrJKliyZ)

          ◆永遠的閉鎖空間


物の生命は、此の世に生まれた瞬間から死に向かって生きている。
良くも悪くも“死”は全ての生き物に平等に訪れる。何億年と繰り返してきた。
輪廻転生の其れに比べれば、人一人の命が散る事等、次なる魂へ生まれ変わる切欠にしかならない。
銀時は死体の山を只無言で見詰ていると、重苦しい黒雲から、大量の雫が辺りを包み込んだ。
其の激しさに彼に纏わりついていた血が、綺麗に流されていく。


「銀、雨だね」
「……雅焔」


何時から居たのか、彼の隣には亜麻色の髪を血で染めた紺碧の瞳の女が立っていた。
見た目から銀時と同い年に見える“雅焔”と呼ばれた彼女は実は天人で────彼とは敵という関係である。
しかし、雅焔も銀時もどちらも、お互いを殺そうとはしなかった。
其れは何故か────という事は二人共判らないのである。


「銀、雨はいい。纏わりついた汚れた血を洗い流してくれる。ほら、何もなかった様に見えるでしょ」


彼女は号泣する空に向かって、真っ直ぐに右手を伸ばした。
透明な雨が僕に付いた全ての“赤”を落としていく────。
雅焔は綺麗な顔で微笑む。 狂気と恐怖を纏いながら。


「一人で泣かないでよ、銀。大丈夫。銀は独りじゃない」


雨の中そう微笑む雅焔は酷く儚げで怖い位美しかった。其の美しい外見とは裏腹に、氷の微笑を合わせ持つ。
だが、何故か引き寄せられる存在。
彼等がこうして面と向かって話せるのは、此の時だけ。

袂を分かち、俺の理解者は1人もいなくなった。
何故なのか“1人だけ取り残された”ように感じた。
其の侭、ゆっくりと瞼を閉じる。瞼に溜まった雫が頬を伝った。
目を閉じて、見えるのはずっと昔の彼だけ。否、傍にいる仲間も見える。
でも、今までの世界の中心は彼だったのに。もう、誰1人として自分の傍にいない。
其れならもう、こんな世界は必要ない。そう思う程、切なくなった。だから、涙が出てるのか。
傍にいて、と願う事も。戻る事も、進む事も許されないのだから。其れを、叶える事も。


「俺は沢山の天人を殺した。俺は沢山の仲間を失った。こんなくだらねぇ戦争に巻き込んで!!
 こんな俺に……誰が傍にいるっつーんだよ!!! もう失うのはうんざりなんだよ!!」


ザァアア、と降り止まない雨。雅焔はギュッと銀時の羽織りを握った。
銀が抱え込んでる重みを少しずつ分けて欲しい。
銀の力になりたいから、だから銀が困ってる時何度でも手を差し延べるよ。
大丈夫、大丈夫だから。と慰めるように、掴まれた羽織から彼女の想いが伝わってくる。


「銀は全部自分の所為だと、全部全部自分で抱え込んでるけど。其れは違う」

「亡くなった皆は銀を恨んでたり憎でたりなんかしてない。寧ろお礼を言ってる筈だよ」

「有難うって、俺達の分まで頑張ってくれって」


銀時は涙を拭って小さく笑う。
何故だろうか。此の女は、絶対に失ってはならない。
そんな気がする————……。
銀時は自分でも解らない気持ちに戸惑っていた。
だが不快ではなく寧ろ心地がいい。

────きっとコイツは、俺の希望となる。

此の時、俺はお前に出逢っていなかったらどうなっていたのだろう。
きっと此れは運命だったんだな。
そう、お前が俺達の前に現れ……消えてしまう事すらも。


(逆らえない運命)
皮肉なモンだ。だけど、感謝してる。