二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【銀魂】僕の世界が壊れた。 ( No.166 )
- 日時: 2010/08/15 16:31
- 名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: bJXJ0uEo)
僕は君を追いかけながら、くるりくるりと舞い踊る。
君は僕を誘いながら、ふわりふわりと舞い遊ぶ。
麗しく舞う白蝶は、慰みの在処さえ知らぬ侭。
途切れた謌と、千切れた翅で。
足掻いてみせよう、最期の刻を。
そうして未来が終焉を告ぐまで。
一夜の夢に溺れませう。
▼mad14、全ては夢だから
上に乗っていた布団をガバッと弾き飛ばして飛び起きた。
荒い息が静まり返った室内に大きく響いて聞こえる。
外では鳥が囀り、お天道様は真上まで昇りすっかり明るんでいた。
何で今更あんな昔の夢を見てしまったのだろうか。
目蓋を閉じれば夢の影響か鮮明に先程の光景を映し出した。
────彼女と約束した時の、彼女の笑顔。
銀時は首を振るって頭の中から映像を除去する。
ふぅと息を吐いて額に張り付いた汗を拭った。寝間着もべったりと肌に張り付き気持ち悪い。
シャワーでも浴びるか、と腰を上げ部屋の襖を開け、未だ寝ている神楽を起こさないように浴室へと向かった。
サァアアアッ、と流れ出るシャワーがサッパリと汗を洗い流し心地良い。
キュッとノズルを捻りシャワーを止めると、水気を飛ばそうと頭を振るう。
其れから用意していたタオルで身体を拭い腰に巻き付けた。
仕上げにもう一枚用意した真白いタオルで髪を拭いながら廊下に出る。
其の侭台所に行き冷蔵庫から苺牛乳を取り出しソファーに座り込んだ。
渇いた喉を苺牛乳で潤したところで玄関の戸がガタガタと開けられた。
パタパタと小走りで廊下をやってくる音を聞きながらコップに注がれたピンク色の其れを煽る。
廊下との仕切りを跨ぎやって来たのは、やはり眼鏡がチャームポイントの万事屋従業員の新八だった。
新八はあれ? と目を数回瞬かせた。
銀時がおはよと言えば驚きつつも丁寧にお早う御座いますと返してくる。
「珍しいですね。銀さんが早く起きるなんて……」
折角良い天気なんですから雨を降らさないで下さいよ?
と、冗談めかしながら神楽の寝ている押し入れを開けた。
「神楽ちゃん起きて! もうお昼だよ!!」
新八は布団を剥ぎ揺さぶって起こそうとする。
しかし、神楽は唸るだけで持っていかれた布団を頭からすっぽり被り直してしまった。
新八はもう! と溜め息混じりに微笑い布団をめくった。
「神楽ちゃんってば! 銀さんですら起きてるんだから起きてよ!」
「マジでか!?」
神楽はガバッと起きると押し入れから身を乗り出しソファーに座っている銀時を見て驚いた。
一人の大人が早く起きて何がおかしい、と傍から見れば誰もがそう思うのだろう。
しかしながら、此処では滅多に起こらない珍しい事なのだ。
「マジで銀ちゃん起きてるアルよ!! 今日は絶対雨降るネ!!」
「……其れ僕も言ったよ」
「ダメガネと同じ考えなんて……、私も落ちぶれたもんネ……」
「其れどう言う意味だァァァッッ!!!」
新八が叫ぶと神楽は煩わしいと言ったようにぴょいっと押し入れから飛び出し洗面所まで駆けていった。
二人のやり取りに銀時はやれやれと肩を竦める。
「朝から元気だなァ、お前ェ等」
「……もうお昼ですよ、銀さん」
「そうだったかァ??」
何時の間にか先程の夢など、もう頭の中には無かった。
新八は何もしていないのに疲れたとぼやき神楽の布団を直して襖を閉めた。
何時までもそんな格好していないで速く服着て下さいよと新八は銀時に言うと台所へと向かう。
新八に聞こえているか分からないが小さく返事をし、銀時も自室へと姿を消した。
何時もの普段着に着替えれば襖の向こうから味噌汁の香りが漂ってきた。
スーッと襖を開ければ机にはご飯と味噌汁、そして漬け物が用意されており、既に二人は席に着いていた。
指定の席についていただきますと手を合わせれば二人も倣っていただきますと手を合わせる。
銀時が味噌汁に手を伸ばし具を漁ろうとかき回したが、何も出てこない。
「新八ィ、具は?」
此の味噌汁を作った本人に聞けば素っ気なくそんなもんありませんよと漬け物を口の中に放り込んで言った。
「此れが最後の食材です。仕事も此処最近無かったのでお金もスッカラカンです」
「マジでか……」
「マジですよ。でも、此の位で丁度良いんじゃないですか? 今日雅焔さんが奢ってくれるんですから」
“雅焔”という名が出た時、一瞬にして先程の夢が思い出されたが首を振ってもう一度振り払う。
折角奢って貰うのに、腹がいっぱいでは勿体無い。
其れなら、少しの間空腹を我慢すれば良いだけの事。
具無しの味噌汁をズズッと啜ると、銀時は言った。
「飯食ったら雅焔んとこ行くかんな」
銀時がそう言えば新八も神楽も元気に返事をし、再び遅い昼飯へと取り掛かった。
───────────
場所は変わって真撰組屯所。
坂田さんが迎えに来るまでまだ時間がある。
そう思った僕は少し散歩しようかと、縁側をのんびり歩いていた。
其の時である。向こう側からお茶を載せた御盆を抱えた羅奈さんの姿が見え、僕は駆け寄った。
「こんちには。羅奈さん」
「ん、おお。雅焔か」
「羅奈さん、其のお茶は??」
「あぁ、此れは副長のだ。さっき頼まれてな。何時にも増して此処に皺を寄せながら頼まれたわ」
羅奈さんが話しながら指した此処とは眉間で。
土方さんがそんな顔でお茶を頼んだのは僕の所為でもあると、昨晩のやりとりが頭に浮かんだ。
「良かったら僕が土方さんに運びますよ」
「そうか? じゃあ、頼めるだろうか」
折角だから彼が好きなマヨネーズを添え、土方さんの部屋へお茶を届ける事にした。
「……失礼します」
「ん? 雅焔が持ってきてくれたのか。其れは?」
「土方さん、マヨネーズお好きでしたよね。疲れた時には好きな物を食べると楽になるかな、と思いまして」
「……知ってたのか。俺がマヨネーズを好きな事」
「勿論」
僕がそう言えば、そっぽを向いてしまう土方さん。
しかし、其の耳は真っ赤で、少しながら可愛いと思ってしまう。
其の視線を机へ移すと、また書類整理でもしていたのか書き途中の紙が置かれていた。
朝は早くから剣の稽古、其れから見廻りなどの勤務、そして書類整理……。
夜も道場で汗を流していたり遅くまで部屋で仕事をしているのか明かりがついている時もある。
此の人は一体何時休んでいるんだろう、と。
真選組で生活をするようになってから感じている疑問だ。
過労死するんじゃないかと心配になるくらい。
「土方さんは何時も忙しそうで……。身体、無理してますよね」
「大した事ねェよ」
「机に積まれている書類の量、凄いじゃないですか」
「此れは、殆どが総悟の奴が破壊した物の書類だ。後は……お偉方からの寄付とかの書類か。
寄付してくれるのは有りがてェがお礼文をイチイチ書かなくちゃいけねェのが面倒なんだよ」
はぁ、と。
溜め息混じりに山のような書類を横目で見る土方さん。
あんなに高く積まれる程に色々な物を壊す総悟は、ある意味凄いかもしれない。
何か僕が手伝える事でも有れば良いのだが────────あ、そうだ。
「土方さん、其のお礼文て僕が書いたらマズイですか??」
「雅焔が?」
「はい。文を書くのは得意ですし」
「何を寄付されたか書類に目を通して一筆書くから面倒臭ェが……良いのか?」
「はい。大丈夫です」
悪りィな、と言いながら渡してもらった書類に目を通す。
具体的な物を寄付する方もいるが土方さんが言う“お偉方”の皆さんは寄付金を贈ってくれる方が多いようだ。
「やっぱり偉い人ってお金を寄付する方が多いですね」
「あぁ。奴等は其れで幕府に恩を売ってると思ってるんだろうよ。
心からの慈善で寄付してる奴なんか、殆どいねェな」
「そうなんですか。何か、ちょっと悲しいですね」
「そんなモンだ」
「其れじゃあ、今度は心からの寄付をして貰えるように心を込めてお礼文を書かせて頂きますね」
僕の言葉に土方さんが、ふっ、と柔らかく笑った気がした。
そんな些細な事でさえ、僕には嬉しい。
「そろそろ坂田さんが迎えに来ると思うので僕、失礼しますね」
「……派手な格好して行くなよ。其れから、此れ持って行け」
そう言い渡された小太刀。
「廃刀令が出てるがお前は真選組の人間だ。帯刀してても問題無い」
「…………」
「万事屋の野郎に何かされたら刺せ。斬れなくても刺す位は、此れで事足りる」
いやいやいやいや……問題、大有りだろう。
財布を持って行く感覚で小太刀を持って行けと言うのだろうか。
しかも、刺せって。刺すなら小太刀じゃなくても手さえあればいけるだろうに。
大丈夫だからと何度も言い、漸く渋々ながら小太刀を引っ込めてくれた土方さん。
此の人は極度の心配症なのだろうかと思えた僕だった。
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