二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】僕の世界が壊れた。 ( No.176 )
日時: 2010/08/16 12:18
名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: GrJKliyZ)

           ◆たった一人の


嘘だと思った。
信じられなかった。
其れは、有り得ない事だった。

だって、死人が、姉上が生き返るだなんて。


    ───────────


其の日の朝、パチリと目が覚めた。
まだ太陽も顔を少し覗かせたくらいの時刻。
ぼうっと目を擦り、総悟は布団から抜け出すと、其の侭廊下を出て厠へと向かった。
用を足した後はもう一眠りしようかとペタペタ床を鳴らして部屋に戻ると、縁側に誰か座っていた。

総悟は目を見開いた。

陽光を浴び、其処に居たのは桃色の着物を着た女だった。
自分と同じ色の髪がさらりと揺れ、彼女は空に向けていた瞳を総悟に向けてふわりと微笑んだ。
ぴくりとも動かない自分に彼女は首を傾げ、腰を上げ、総悟に歩み寄った。

「如何したの、そーちゃん」

鈴の音を転がしたような声。
彼女は総悟の顔を心配そうに覗き込んだ。

「あね、うえ……?」

漸く声を発すれば、彼女はこくりと頷き微笑った。
次いで出た言葉は「何で」だった。
まあ当たり前だろう。彼の姉は当に亡き人となっているのだから。
此処に居ると言う事は、先ず有り得ない事なのだから。
彼女は総悟の気持ちに気付き、彼の手を取った。

「私達はね、神様にお願いをしたの」
「お願い……?」

彼女はええと頷いた。

「少しだけ、時間を下さいって」

総悟の手を優しく包み込んだ。
とても、温かな手。
懐かしい、何も変わらない。昔の侭の温かな手。

「だからお姉ちゃん、そーちゃんに一番に会いに来たの」
「姉上、あねうえ……、あねうえぇ……っ!」

溢れる涙を止める事が出来なくて、総悟の瞳からホロホロと涙が零れ出す。
しゃくり上げて泣き出した総悟を、彼女は優しく抱き締めた。

「会いたかったわ」
「俺も、お会いしたかったです……っ」


(たった一人の)
俺の姉上。