二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂]僕の世界が壊れた。 ( No.200 )
- 日時: 2010/08/16 15:05
- 名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: GrJKliyZ)
◆感謝すべきは
「初恋、遅かったでござるな。晋助への贈り物か?」
船に帰ると、万斎が立っていた。
ヘッドホンからはシャカシャカと音が洩れている。よくそんなんで会話できるな、と何時も思う。
「うん、そうだよ。万斎は何か贈ったのか?」
「拙者か? 拙者はあれ、お通殿のアルバムを」
「……晋助好きだっけ、其れ」
「叩っ斬られたが」
「だよねー」
そんなにプレゼントを考えるのは面倒でしたか。
でもふと僕も目の前で斬られたりしたらどうしようと考える。
其れは……ちょっと……傷付くなあ。
でも、当たって砕けろっていうよな。砕けたくないけどね、なるべく。
若干怯えながら、晋助の部屋まで歩いて行く。
万斎が何処に居るか教えてくれたから。
卑屈な事を考えないようにしながら、ドアを叩く。
向こうから聞こえる声。
「誰だ」
「雨欟です」
「入れ」
三味線の音が聞こえる。何時聞いても綺麗だと思う。
そっとドアを開けると、窓際に腰掛けて三味線を弾く晋助が。
驚く程美麗で絵になっていて、まるで別世界の住人のようで。
僕とあの人の間に、大きな大きな壁がある気がした。其れは見えなくても確実に其処にある。
当たり前だ、一つ息を吐いて晋助に歩み寄る。
月明かりに照らされながら外を眺める彼は何を考えているのか解らない。
「用件は」
短く問われ、はっとなる。
ああもう、見惚れてしまっていた。
「あー、いや其の……」
ポケットから小さな包み紙を取り出し、何故か震える手を抑える。
「街で綺麗な根付けを見付けたから、えっと、……晋助にと」
買ったのは根付け。鈴の付いたもの。
紐は紫。何となく晋助に似ている気がしたから。
鈴って綺麗だけど鳴る音は儚くて、小さい音。神社のとかは大きいけど。
綺麗なのに寂しくて、けれどやっぱり輝いて。
リンリンとかコロコロとか色んな音が鳴って、本当の音って何だろうって思う。
角度によって変わる音。
────何故か彼と似ている気がした。
おずおずと差し出せば数秒其れを見、受け取ってくれた。
心が小躍りしてる。たった其れだけの事、なのに。
触れた指先が熱いと言うかなんというか、こそばゆい。
小さな其れを手に取り包装紙を丁寧に取る晋助。
絶対破ると思ってたんだけど結構几帳面でした。
掌に乗る、小さな鈴。金色は月光を浴びキラキラと光る。彼も同じ。
其れをころりと転がし音を鳴らして、凝視している。
もしかして気に入らなかったんじゃ、と不安になる。
けれど僕の予想は大外れで。
「……気に入った」
耳を疑った。気に入ったって、言ってくれた。
心なしか笑っているようにも見える。
……ああどうしよう、嬉しい。
頬が緩むのを感じつつ、安堵の息を漏らした。
「し、晋介が気に入ってくれたなら、僕嬉しいです」
あの晋介が、あの晋助が“僕に”笑ってくれた。
今まで何度も戦場で死に掛けたけど……生きてて良かった!!
僕は、心の中でギュッと握り拳を作った。
(感謝すべきは)
きっと僕の方。