二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂]僕の世界が壊れた。 |15up ( No.244 )
- 日時: 2010/08/21 12:17
- 名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: tnsmvlwg)
泣いて、泣いて、叫んだって、
自分自身が変わらなければ前に進めない。
怖いものがある。
誰かに否定されるんじゃないかって。
不安だらけ。
途中で失敗して転んでしまうんじゃないかって。
傷ついてしまうのがとても怖い。
でも、其れでも。
転んでも助けてくれる人がいる事に気がついた。
手を引っ張ってくれる、泣いてばかりはいられない。
貴方に、僕の何が分かるってゆーの?
▼mad16、奇妙な関係図
坂田さんが僕を抱き寄せたのと同時位だと思う。
急に僕の頭の中が真っ白になって何も考えられなくなって、目の前が真っ暗になって。
モノクロの世界が僕の中で広がって、其の時とても不思議なモノを見た気がする。
戦場の中、銀色の髪をした男性はきっと昔の坂田さんだろう。其の横に居る亜麻色の髪の女性は────。
────僕の大切な母さん、“雅焔”だった。
何故二人が、と思ったが其れよりも先に僕は二人の会話に耳を傾けた。
『銀、戦争が終わったら着いて行ってもいい??』
『また其れかよ。良いっつってんだろ』
『絶対約束だからね。自由な銀を見てるのはとても楽しいから』
『へーへー』
『ねえ、どんな仕事する気なの?』
『んな事ぁわかんねーだろ』
『きっと人を助ける仕事をすると思う。ほら、何でも屋』
『……お前がやりたいだけだろ』
『あ、ばれた??』
そう言う母さんは楽しそうで幸せそうで、僕でも見た事のない笑顔で笑っていて。
もっと二人の会話を聞こうとしたが、急に聞こえた爆音で現実に引き戻された。
───────────
僕が聞こえたドゴォォォンン、と────鼓膜を震わす物凄い音と目の前から消えた坂田さんの顔。
未だ現状が掴めてなかった僕は只呆然と其の場に立ち尽くしていた。
「あっぶねーだろォ! ゴリラを投げんじゃねェ!」
「あーら、銀さんいらしてたの? 御免なさいね、全く気付かなくて」
「嘘つけェェ!! 絶対狙って投げたよね!? 俺、目掛けて投げたよね!?」
「嫌だわ、気のせいよ。ゴリラを退治するのに忙しくって」
坂田さんと話す、其の女性は顔に貼り付けているような笑顔を絶やさず……青筋は浮かんでいるが。
女性に殴られ顔面を腫らした銀さんは不貞腐れているが。
見た目とは裏腹に彼女はパワフルだ。
「私は志村妙って言うのよ。宜しくね。貴女のお名前は?」
「あ、えっと僕はって……ええっ!? もしかして貴女が近藤さんが言ってた“お妙さん”!?」
「貴女、ゴリラ語わかるの? 駄目よ、ゴリラと口きいたら。将来は飼育員しか道は無くなっちゃうわよ」
辛辣な事を言う彼女だけれど綺麗だし落ち着いているし。近藤さんが惹かれたのがわかる。
まぁ、彼女から『ゴリラ』呼ばわりされている面からその恋心は一方通行のようだが。
待てよ……さっき坂田さんはゴリラを投げんなって言っていた気がする。
パラパラと音を立て崩れかけている壁を恐る恐る振り返れば。
────其処には近藤さんが埋まっていた。
「だ、大丈夫ですか、近藤さん」
「貴女、其のゴリラの飼育員だったの?」
「ち、違います。僕は只近藤さんの処で御世話になってるだけで……」
「何があったかは知らないけど、そんな所にいたら駄目よ。そしてゴリラは其の侭埋めときなさい」
どうにも真選組は印象が悪いらしい。
まぁ、お妙さんからすれば自分をストーキングする相手の職場だ。嫌悪感を抱いても仕方ないが。
ストーカーをしていると言う事実は受け入れがたい所ではあるが近藤さんは優しく何時も僕を気にしてくれる人だ。
お妙さんには悪いが放っておく事も、土方さんや総悟、アリス達がいる真選組から出ていく事も出来ない。
……いや、僕がそう思ってるだけで本当は疎ましいと思ってるかもしれない。
だって僕、ずっと嘘を吐いていたのだから。
「何、やってんでィ。近藤さん」
「みっともねぇな」
不意に聞こえた声に、ずっと足元しか見ていなかった視線を上にあげた。
其処には呆れた表情で近藤さんの姿を見下ろす土方さんと総悟がいて────。
「お早いお着きだなぁ、多串君に総一郎君よォ」
「総悟でさァ。婦女暴行現行犯って事で……死んでもらいやす」
「土方だ。総悟、其の辺にしとけ。ほら雅焔に近藤さん、帰るぞ」
呆然と立ち尽くす僕の腕を土方さんは強く掴み、一瞬にして其の腕の中に閉じ込められた。
冷たい隊服。ずっと外にいたのだろうか。
「旦那ァ、雅焔を連れて帰りまさァ」
「嫌だっつったら?」
「斬る……其れだけだ」
土方さんの腕の中から見上げ見た彼の瞳は真っ直ぐに坂田さんへ向けられていて。
坂田さんは小さな溜め息を吐いた。
ちょっと待って、と制止する僕の声は耳に届いてもいないか。
僕の肩を抱いた侭歩き出そうとする土方さん。
「…………ッ」
此の侭では駄目だと悟った僕は、パシンと音を立てて土方さんの腕を振り払った。
当然、其の場にいた皆は驚いたように僕を見詰る。
「独りに……させて下さい。頭、冷やしたいんで」
「あ、おい! 雅焔ッ!!」
僕は其れだけを言って、其の場を去った。
後ろから土方さんが僕の名前を呼んだが、其れは僕の名前じゃなかったから振り向かなかった。
───────────
【保留】