二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: −あまつき−*あの日の初恋* ( No.23 )
日時: 2010/09/12 22:40
名前: 涙水 (ID: yxu7BdpM)

 【第六話】待つよ、君が気付いてくれるまで


「瑠璃ではないか。久方ぶりであるな」

空五倍子うつぶし。本当、久しぶりだね」

瑠璃が空五倍子と呼んだのは、鳥の面をつけた大男(?)。
手が鳥のそれに似ていたり、ふさふさした白い毛が生えていたりするので、少なくとも人ではなく妖怪の類だ。

「あの人間のところにいなくていいのかよ」

「鴇君のこと?
 ふふっ、露草も梵と同じこと訊くのね。
 彼なら今〝あそこ〟に行ってるの。
 私はついていけないわ、露草だって行けないでしょ?」

「けっ、俺は行きたくもないね、あんな場所」

露草と呼ばれたのは緑の髪の少年。見た目は瑠璃とそう変わらない。
しかし彼も妖怪で、見た目と年齢は比例していない。

「梵は行ったのか?」

空五倍子が尋ねると、瑠璃は頷いた。

「うん、今さっきね。
 何も起こらないと良いんだけど」

「まあ、無理だろうな。あいつのことだし」

俯いて言う瑠璃に、露草がそっぽを向く。

「気になるのであるな?
 少し様子を見るくらいなら良いのではないか?」

瑠璃の心情を察した空五倍子が、優しく言ってくれる。

「そんなに奴のことが好きならさっさと言っちまえ」

しっしっ、と手をひらつかせて追い払うような仕草を露草が見せると、

「これ露草よ、そんな思っても無いことを口に出すものではない。
 瑠璃が人のことを気にするので、やきもきをやいておるのであろう。
 何も気に病むことはないからな?」

空五倍子が露草を叱り、瑠璃を慰めようとした。
その様子は妙に笑いを誘ったが、なんとか堪えて礼を言う。

「ありがとね、空五倍子。
 大丈夫。何も気にしてないから」

そして空を見上げて、再び口を開く。





「私は待つよ。時が満ちるのを。




 ……君が思い出してくれるのを」