二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 玲瓏カタルシス/第二話 聖騎士団 ( No.13 )
- 日時: 2010/08/08 10:05
- 名前: 烈人 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)
第二話【聖騎士団】
目の前で静電気を散らしながら低くうなり今にも飛び掛ってきそうな頑丈なレントラーが、横から放たれた淡いピンクが掛かった赤紫色の光により吹っ飛ばされた。光はまるで衝撃波のようにうねりながらレントラーに降りかかり、横合いに吹っ飛ばされ草むらの上に倒れこんだレントラーをさらに追撃する。
オーロラのように様々な光を綺麗に放っていた衝撃波が、ゆっくりと空気へ溶けるようにして消えていく。第二撃を受けたレントラーは吹っ飛ぶこともせず、瀕死の状態になっているのか起き上がる様子は無い。
え? と思わず呆気にとられるアリアとアイリスは、状況をつかめないまま呆然を辺りを見回した。きょろきょろと不思議そうに、それでいて恐怖の名残がある不安定に揺れる瞳が、彼女らの正面の上方、つまりレントラーの真上辺りに浮いているピジョットを捉えた。
大きな翼が立派なピジョットで、逞しくもあるが毛並みがよく整えられていて、見ている者を圧倒させるような並ではない美しさがあった。そしてそのピジョットの翼の脇に脚を下ろす形で座っている、桃色のセミロングをポニーテールにしている少女へと視線がうつった。
手にはモンスターボールを持ち、つまらなそうに視線を宙へと彷徨わせる。地上にいる少女達が自分を見ているとしばらくの間が空いたのち悟り、ピジョットに地上に近づくように言う。
「……えーと、アリア、っていうのはどっち?」
ピジョットから降りながら、少女が尋ねた。ピジョットの頭を一度撫でてから、肩に下げているショルダーバックの中から手に持つモンスターボールとは違うモンスターボールを取り出し、ピジョットを戻す。
「あ、……私です」
緑色の髪を揺らしながら、少女のほうへとアリアが歩み出る。アイリスは警戒しているようだが、ポケモンを戻したことからどうやらこちらに危害を加えるつもりではないと判断したのだろう、アリアを止めはしなかった。
アリアの姿を認めた少女は、「へぇ」とやはりつまらなさそうに呟いて、明るい緑色の瞳でアリアを見据えた。
「あたしはマリサ。……ちょっと一緒に来てもらうよ?」
ポニーテールの少女——マリサはそう言うと身を翻し、アリアについてくるように手招きする。え、と思わず戸惑った声を洩らすアリアを手で制し、アイリスがやや強い口調で問いかけた。
「待って。貴女は、何者?」
警戒心を露にして睨みつけるアイリスを、マリサは振り返って見据える。はぁ、と少々呆れたようなため息がマリサの口から洩れる。まあ仕方ないか、と心の中で呟いてアイリスに向かって言葉を紡ぎだす。
一方のアリアはおろおろとするばかりで、どうすることもできない様子だ。
「んー……まあ、<騎士>ってところかな。そこまで大層なモノでも無いけどさ」
マリサの言葉に、アイリスがはあ? と顔を顰めた。<騎士>という耳慣れない豪奢な単語に戸惑いを覚えると同時に、呆気に取られている様子だった。
あはは、とマリサは軽く笑う。その笑顔には、少女らしさが強く現れていた。
「まあ、とりあえずきて。あ、アンタも一応ついてきてね」
それ以上何か言うわけではなく、マリサは彼女らが目指していた場所——砂浜がある方角へと、歩き出していた。
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マリサちゃんは氷橙風さんより頂きましたーv 有難うございますv