二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

玲瓏カタルシス/第二話 聖騎士団 ( No.16 )
日時: 2010/08/16 18:54
名前: 烈人 ◆ylmP.BhXlQ (ID: WPWjN3c4)

「……ねえアリア、ついてくの?」

 歩き出したマリサを見据えながら、アイリスが怪訝な様子で眉を顰めてアリアに問うた。
 うーん、とアリアは考え込むように唸ったものの、どうやらもう決めていたのか——にっこりと微笑んで、はきはきと言った。

「うん、いこう。<騎士>、なんだよね」
「そんなこと、嘘だってこともあるわ」

 警戒を促すように、歩みだしたアリアにアイリスは早足で駆け寄った。昨夜本当に火事で家族を亡くしたのかと思うぐらい、清清しい晴ればれとした笑顔。
 そんな笑顔なアリアに安堵するべきなのかそれとも気に掛けるべきなのかアイリスが決めかねている時、不意に大分前を歩いていたマリサが振り返る。

「そんなに警戒しないでほしいんだけどさぁ」

 苦笑を浮かべながら、少々不器用に言葉を連ねるマリサ。やはり強く現れているどことなしかの少女らしさに、普通に近所にいそうな元気な大人っぽい幼馴染のような印象を受けながら、「でも」とアイリスが呟いた。

「どこに行くの? 私達、あまり遠くにはいけないわよ」

 脳内にエルシアのことを思い浮かべながら、アイリスが続ける。なんだそんなこと、と言ってからマリサは再度振り返って小さく笑った。

「大丈夫。エルシアって人にはもう全部話してあるから」

 え? とすぐさまアイリスから不審がる声が洩れたが、マリサはどうやら急がなければならないのか、それともこの二人の気が変わらないうちに早く進みたいのか、それからはもう何も言わずに歩き続けた。
 もう帰るわけにもいかず、さらに全く面識の無い者にエルシアの名前を出されたのだ。アイリスはそれ以上なにか言うことを諦め、意気揚々とした表情で歩いていくアリアの隣を静かに歩いていった。
 彼女らの目の前で、マリサの桃色のポニーテールが微かな空を切る音と共に揺れていた。



「……どこ、ここ」

 先程起こったことをぼんやりと思い出しながら、アイリスが呟いた。
 その呟きは、ログハウスという言葉がぴったりの少々古びた感じの良い室内に静かに響いた。ところどころにソファやテーブルが置いてあり、壁にはいくらかの扉。真っ直ぐ前を見ると見えるのは、社長や偉い人がいつもふんぞり返っていそうな豪奢なソファーに浅く腰掛けている少年らしい風貌の者。その者の前には、書類のようなものが大雑把に整理され高々に積まれた、事務用であろう灰色のデスク。
 そして彼女ら——アリアとアイリスとマリサ——を取り囲んでいるのは、一人の女性と二人の男性。その三人は、静かに二人——マリサを除いた——を見据えていた。




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わほほーいやっとここまで来た。今日また投稿する、かもしれません。あくまでも「かも」。