二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- ポケモン二次創作 【金ノ瞳、銀ノ翼】 ( No.99 )
- 日時: 2010/10/02 23:29
- 名前: 豆電球 ◆Y6CWE4r6bA (ID: sp0cIx.0)
第三十五章 〜小さな空〜
ジョウト地方のどこかにある、寂れていてさびしい概観のコンクリート建造物。
周りには、高圧電流が流れる柵が張り巡らされている。
ここは、この地方で罪を犯した者が入る刑務所。
建物にぽっかりと開いた、鉄格子で囲まれた小さな窓から、外を眺める一人の少年が居る。
紅い髪に銀の瞳の、不思議な雰囲気を持つ齢十四の少年だった。
彼は、つい三週間前にここにやってきた。まだ幼いにも関わらず何故、ここに来たのだろうか。
服役する者だけでなく、警備員も少なからず興味を抱く。
しかし少年は周りを見ず、いや見えていないという方が正しいのかもしれない。
彼は部屋に取り付けられている唯一の窓から見える、小さな空を毎日眺めているのだ。
警備員「何か見えるのかい?」
普段厳しい警備員も、相手が子どもという事で優しく話しかける。
少年「・・・いえ、何も。」
まるでいたずらが見つかった、小さな子どものような表情を見せる少年。
少年「ただ、何故空は大きいのかなって・・・」
警備員「君の罪はそんなに重く無いよ。少しの服役ぐらいで出られるんじゃないかな?」
まあ僕には決められない事だろうけど、と付け足す警備員。
少年「罪が重い、軽いなんて問題じゃないです。俺は罪を犯した、これは一生科せられる足枷。それは、決して許されないし、これからも変わる事の無い事実なんです。」
先程の表情は何処へ行ったのか、急に少年の年齢には不似合いな大人のような表情に変わる。
警備員は、あまりの変化に驚いたようだ。その様子を見て、何がおかしいのかふっと微笑む彼。
警備員「じゃあ、僕は他の連中の相手をしてくるよ。」
少年は少し残念そうな顔になるが、すぐに振り払い笑顔で送り出した。
ずっと空を見上げる少年。彼はここに来る前の記憶を呼び戻す。
かつて、彼の周りには誰もいなかった。孤独である事が当たり前だった。
そんな彼に変化をもたらしたのは、一人の少女。金の瞳、漆黒の長い髪の活発な少女だった。
出会った当初は、彼は彼女から敵視されていた。自らも敵視していたと思う。
「例え同じ力を持つ者でも、その力を悪に使うのなら・・・私は容赦しないわ。」
彼女の口から発された、この言葉が今でも頭から離れない・・・。この言葉を聴く頃には既に、彼女に対して特別な感情を抱くようになっていたと思う。
そして、親に対する反抗。だから自ら協力を申し出た。最初はただ、親に反抗する為だった。
しかし、気がつけば彼女の力になりたい、彼女を守りたいと思うようになっていった。
同じ思いを持つ、彼女の幼馴染とも仲良くなった。
しかし少年はこの平和に浸る訳にはいかないと悟る。自分は罪人、彼女達と並ぶ事は決して許されない・・・
そこまで考えて、少し頭を振る。
少年「結局迷惑しか、かけていなかったしな。」
彼女には長い歴史の中で巡り逢った。何百年も前にも出逢ったらしい。
彼女も自分も、歴史の中では選ばれた人間。しかし、実質彼女が選ばれし者だ。
きっと、想像出来ないような重いプレッシャーが掛かっていた事だろう。
そんな事を思わせない振る舞い、温かな笑顔、そして何より・・・
少年「太陽のような、金色の瞳・・・。」
彼女が太陽なら、自分はそれを支える月になりたい。今の彼の目標である。
ここを出たら、また「始まりを告げる風が吹く町」に行こう。また、一から始める為に・・・
警備員「・・・眠っちゃったのか。どうして君がここに来たのかは、知らないでいるよ。でもね、誰だってやり直せるんだ。ゆっくり、時間をかけて頑張っていこうね。」
すでに夢の中に居る少年には、その声は届かなかったようだ。夢の中で、仲間達との少しだけ早い再会を楽しんでいるのだろう。
夢が、少しでも早く叶いますように。警備員の優しい声が小さな部屋に響く。
明日も明後日も、小窓から見える小さな空を眺め続ける小さな背中。
これから数年間、彼の周りは時間が止まる。それでもいつか、ここを出られたら。
少年「きっと、逢いにいく・・・」
眠りの中で発せられる言葉。誓いを立てて、更に深い眠りに入っていった・・・
次回へ続く
今回は、二人の前から去っていった彼のお話でした。
きっと、リオンが現在進行形で四天王に挑戦しているなんて、知らないでしょうね。
ば、番外編じゃないんだからねっ!!まだまだ突っ走るんだからねっ!!!
ちーちゃん★☆さん、あげコメありがとうございました!
フォレトスは虫、鋼タイプ!ハッサムと同じですね!(本家では炎タイプ一発で落としましたが。)
ま、ハッサムの方が私は好きです・・・