二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: [銀魂] No thank you!! [男主トリップ] ( No.31 )
日時: 2010/08/20 16:54
名前: 廻 ◆E2FCewEIt. (ID: tuG0e6yh)
参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_m/view.html?482369

第六訓:俺、老けたかも。ねぇ、そう思わない? 苦労でかな? うん。苦労でだ。

道場内に響き渡る竹刀のぶつかり合う音。
俺は現在、朝練という名の地獄に遭遇していた。
ここ最近暇な隊士の皆さんや近藤さん、土方さんに稽古をお願いしていた。
おかげで四日間でそこらの浪士には勝てる程度の力がついた。
俺の成長の早さに皆、目を丸くして驚いていたが、本人である自分にその自覚がない。
俺は強くなったのだろうか?
いやいや、たった四日で強くなれたらこの江戸は猛者だらけになってしまう。
そして、

「お、沖田さん!! ストップ、ストップゥ!!」

今、俺の稽古相手をしているのは

「何言ってんでさァ。まだ始まって二時間と二十四分しか経ってやせんぜ?」

いや、二時間二十四分竹刀振りっぱなしってどんだけハード?
現代っ子の俺には辛すぎる。
それにあの顔は絶対に楽しんでる。
人が苦しむ姿見て楽しんでるよ!!
俺の心の叫びも虚しく、相手の攻撃が止まる気配はない。

ほら、沖田さん。
周りの隊士さん達、困ってるよ。

「いいんでさァ。気にしたら負けですぜィ」

気にしてください、お願いします。
ほんの少し、周りと俺の体力のなさに目を向けてください。
そして人の心を読まないでください。

「読んでないでさァ。祇月は気にし過ぎがいけねぇなァ」

笑顔。
めっちゃくちゃ笑顔。
俺は貴方の笑顔に生気を吸い取られているような気がする。
いや、吸い取られている。
俺は攻撃を受けながらも壁に掛かった時計に目を向けた。
現在時刻、七時二十分。
朝食開始まで残り十分。
そしてこの容赦ない攻撃を受けるのも残り十分。
俺はそれだけを支えに沖田さんの一種のいじめを受け続けた。
(てか一種のいじめってより、完璧ないじめの方が正しいよね)

時計の長針が指す六の文字。
七時三十分、朝食の開始とそしてあの人の現れる時間。
荒々しい足音と共に、道場の扉が勢いよく開かれた。
「おら!! 朝練は終わりだ。早く飯食って仕事しろ」
そこに立つのは相変わらず瞳孔開いた土方さんである。
今はそんな土方さんも神様に見えた。
「なんでィ、土方コノヤロー。邪魔しやがって」
「んだと総悟ォォ!!」
二人の言い争いが始まるのと同時に俺は道場を足早に立ち去った。

「あの場にいたら、俺も巻き込まれる」

溜息を落とし食堂へ向かう。
その時、
「祇月!! おはよう」
背後から聞こえる元気な声。
この声は……
「あ、退!! はよ」
今俺の隣を歩き出したのは山崎 退。
漫画内で新八と地味仲間である彼だ。
上司に悩まされている彼とは年齢も近いせいか、よく気があった。
「今日も朝練大変だったみたいだね。沖田隊長とでしょ? 痣、めっちゃ出来てる」
退に言われて気がついた。
俺の体にたくさんの青痣が見られた。
しかも、服で隠れないようなところにばかり。
あの人は本物のドSだった。
この世界に来てそのすごさが身に沁みている。

「今日は何食べようかな……。うん、Aセットにしよう」
俺はご飯と焼き魚を持ち、席に着く。
そしてほかほか炊き立てご飯に幸せを感じていた。
が、
少し先で土方スペシャルを食べるあの副長さんが目に入り、食欲が失せてしまったのは言うまでもない。

その後何だかんだ一日過ごし、今自室にて休憩中である。
最初からあった机と備え付けのたんす。
殺風景な部屋だが、俺は気に入っている。
現代じゃあまり見ない襖や畳。
それが俺は好きだった。
「はァァァ……。畳ラブだわ。畳と結婚してェ」
そんな馬鹿なことを呟き寝転がる。

「俺、帰れるのかな……「どこにですかィ?」

突然目の前に映った沖田さんに俺は悲鳴も上がらなかった。
「アンタがいた、現代に、ですかィ?」
沖田さんはその場に座った。
俺も起き上がり沖田さんと向き合う。
「まァ、そうですね。元いた世界に自分は帰れるのかなァって、ちょっと考えてただけです」
そう苦笑いを浮かべながら答えれば、

「今は、この世界を楽しみなせィ。それが一番の解決法でさァ」

……いつもはあんなふざけたような人なのに
たまに良いことを言ってくれる。

「そう、ですね……」

やっぱり、沖田さんは良い人なようだ。
「あ、祇月、アンタ明日から俺のこと名前で呼びやせィ。山崎のことは名前で呼んでるだろィ? 俺も歳近ェんだ、総悟って呼びなせェ」
「あ、いや、でも上司「分かりやしたか? 呼ばなかったら首と胴体が別々に……」

「はい!! 分かりましたァ!!」

やっぱり分からない人だった。
良い人なのか、腹黒いのか。

おかげで俺は
明日から首と胴体が離れるかもしれないという恐怖と戦う羽目になった。





(世の中辛いな)
うん。
その言葉今まで一番短いけど、一番理解出来る。