二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼 化け狐 ( No.17 )
- 日時: 2010/08/13 21:08
- 名前: 悪夢食 ◆VuRwr/DrPo (ID: PQvy21Xz)
- 参照: 更新!
第四話
発作
女の子はすぐに意味深な顔をして、男のにやにやした顔をみて、首を傾げた。
その時。
二人の後10メートル付近を保って追ってきていた赤い眼が悲鳴をあげた。
男は近くの家の間に女の子を押し込むと、にやにやしてそのほうを睨んだ。
ばっさり、斬られていた。
赤い眼と同じ浅葱色の羽織を羽織った【斎藤 一】に。
また、その横には無残に切り捨てられた赤い眼をみてにやにやしている男がいた。
【沖田 総司】だ。
「あ〜あ、残念だな」
沖田と斎藤はさっきまで逃げていた男をちらちら見ながら会話をしている。
見られている男は苦手だと言っていた刀を抜いて沖田達の方へ何故か詰め寄っていった。
それに気づいた沖田は、にやにやしながらわざとらしく言う。
「これってさ、殺っちゃっていいのかな?」
それを聞くと斎藤は、チラリと沖田をみて、自分の刀に手をかけた。
そして、生返事を返すと、すばやい居合いを繰り出した。
それを男はギリギリで受け、斎藤に押されていった。
「ちょ、おまっ……。え、さっき言ったよね!俺確実に言ったよね!受身しか出来ないって!
え、待って待って、超待って!!」
男がそんなことを言ってるうちに、斎藤はすばやく刀を振りかざす。
それを何とか防ぐ男に沖田はおお、と手をパチパチとむなしくたたいた。
「すごいすごぉい」
そして、その拍手がやんだころ、猛攻撃していた斎藤の刀がいきなり止まった。
その反動で次の攻撃を読んで刀を構えていた男はよろよろとバランスを崩し、地面に片手をついた。
「うおうっ!……ちょっと、無言でやめないでよ!バランス悪い人なんだから!そして無視やめて!」
男はやっと猫背をなおすと、背後にあった気配に気づく。
そして、瞬時にしゃがんで後転でその者の背後に転がった。
しゃがんだ直後、刀の空気を横に裂く音が聞こえた。
「ちょちょちょちょおい!何なのその連係技!そして俺殺されるところやん!逃げるよ!?俺逃げるからね!」
刀を振るった【土方 歳三】が振り向く前には男は走り出していた。
その男の『逃げ足』は実にすばやく、追いつけないほどだった(逃げ足限定
のだが。
「ぐぁっ……!!」
急に立ち止まって、のどと胸を押さえる。そして膝をつき、息を荒くする。
その時、薬袋が自分の懐から転げ落ちた。
「ぐがぁぁぁっ!……くっそ、…のぞんで……ねえって…!出て行け……くそがぁ!!」
その時、見ていられなかったのか、家に押し込まれた女の子、【雪村 千鶴】が飛び出てきて、男に駆け寄る。
「大丈夫ですかっ!?」
そして、千鶴は男の背中をさすると、なにか手伝えることはありますか、と尋ねた。
本当はことが収まるまで隠れていてほしかったが、ありがたかった。
男は静かにうなづき、よろよろと地面をさした。
薬袋の中に、この発作を抑える薬があったのだ。あと1つだけだが。
「丸薬…くれ……!」
短く言うと、すぐ右の手のひらに丸く小さなものが乗った。
発作時、眼が見えなくなるのでそれが求めている丸薬かはわからなかったが、それを口の中に放り込んだ。
—当たりだった。
間違いなくそれは、発作を抑える薬。
男は事切れたかのようにその場に崩れて意識を失った。
序章、完。