二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂]拝啓、大嫌イナ神様ヘ。 |3up ( No.28 )
- 日時: 2010/08/22 09:17
- 名前: 瓦龍、 ◆vBOFA0jTOg (ID: U/MA9rl2)
■4 宇宙が笑う
何時も笑ってばっかりだけど、偶にはかっこいいと思わなくもなくもないような。
屋根の上、満点の星空を見上げて寝転がる無兎。
彼女にとって至福の時間。数少ない落ち着ける時間。
隣には銀時、坂本。下には桂、高杉が居る。
大体は皆で其処に居る。無兎は何も起きない其の時間が一番好きだった。
例え仲間の泣き声が夜空に木霊しようとも、其の時間が一番好きだという事は変わらない。
無兎は其の時間が一番好きで、一番嫌いだった。
戦はずっと続いてる。もしかしたら、20年くらい続くかもしれない。
自分達は生きていけるのだろうか。
仮に自分が死んだとして、彼等は悲しんでくれるだろうか。
仮に彼等が死んだとして、自分は泣けるのだろうか。
自分にとって死というものは死んだ直後はあまり悲しくない。
けどふとした瞬間其の人物を思い出し、何とも言えない気持ちに胸を締め付けられる。
苦しくて苦しくて、切ない気持になってしまう。
こんな事をして、意味はあるのだろうか。
だれか、自分を助けてくれる人はいないだろうか。
自由というものを教えて欲しい。自分には自由が何か解らない。
教えて欲しい。
目を閉じ、心の中で彼女は何度も何度も唱える。
決して口に出す事のない彼女の本音。
心の叫び。他力本願だと解っていて尚、誰かに助けを求める心。
ちらりと横目で二人の男を見ると、辰馬は空を見上げ、銀時は手を後ろに回して足を組んで寝ていた。
鼾もかいている。
風邪ひいても知らないよと耳元で言ってみるが、熟睡。起きる気配全くなし。
無兎は何か掛けるものでも持ってこようかと悩んだ。
しかし、馬鹿は風邪をひかないという言葉を信じて放っておくことにした。
正直な話、屋根から降りて羽織を持って来てまた屋根に上がるという行動が面倒なだけなのだが。
寝転がっていた無兎は起き上がり胡坐をかくと、空を仰いだ。綺麗な星空だ。
紺の絵の具にスパンコールをばら撒いたという表現がいいだろうか。兎に角、美しい空だった。
「のう無兎よ」
無兎と同じく空を仰いでいた男が口を開いた。
早いのだが首が痛くなった無兎は、視線を坂本に向けた。
首の後ろを摩る。
「前にも言うたが、おんしゃはこっちにおるには勿体ないがいな奴じゃ」
「オイ待てコラ、自分が土佐弁解らないと思って今お前、乱暴っつただろしばくぞ」
「アッハッハッハッ。いやぁ、真逆勉強しちょうとは。誤算だったき、アッハッハッ」
「ざんじ死ね」
「アッハッハッハッ。泣いていい? ジョークじゃジョーク」
指をポキポキ鳴らし始めた彼女を見、両手を必死に振る坂本。
彼女に冗談を言うもんじゃないと改めて覚える。本気にするので。
彼女が落ち着いた所で、再び話を元に戻す。逸らしたのは彼本人なのだが。
「銀時にも言うたんじゃがな、おんしゃら二人はでかか奴らじゃ。わしは宙に行きたいんじゃ。
どうじゃ、無兎? 一緒に着いて来んか? わしと共に、宙に……」
見上げていた空から視線を移す。掴み所のない、しかし本当は強く優しい少女に。
無兎は寝転がり、目を閉じていた。真っ暗な世界に音のみを聞く。
泣き声と鳥の声、種類の解らない虫の声。目を閉じれば聞こえてくる様々な音。
宛ら其れは子守唄。不意に襲って来た睡魔に負け、彼女は寝てしまった。
坂本が話していた途中で、すやすやと寝息を立てていた。
彼は彼女に話しかけていたのだが、つまり眠っていた彼女に話していたわけだ。
更に言えば、殆ど独り言だったということか。
珍しく馬鹿みたいに笑わず、まともな話をしていたのだが。
眠る少女を見、フッと笑うと空に向かって大声で叫んだ坂本。
「アッハッハッハッ。天よ〜!! 此の小娘に彗星ば叩き落として下さーい!!!」
魂の叫びだった。
紺色の空に虚しく響いたのであった。
(其の男、大義は失わず)
そんな奴でも、口癖は「大義を失うな」という立派なもので。
彼もきっと、自分が生きたいように生きるんだろう。