二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: Chapterⅱ ●テニスの王子様 and テニスのお姫様○ ( No.160 )
- 日時: 2011/02/24 20:47
- 名前: うっさー ◆8.9xsVkhDE (ID: HnQQx7lG)
- 参照: 大好キ、大嫌イ、好キ、嫌イ、愛シテル、愛シテナイ、関心、無関心。
*+番外編+*
ぎゅっと、テニスボールを握りながら彼は屋上に居る。
たまに、バウンドさせてみたり、壁に向かって投げてみたり。
そんなコトをしていても、気が晴れないコトを知りながら。
「何、イライラしとるんじゃ」
そんなとき、現れたのが、“仁王 雅治”
別に、アイツと俺はそんなに仲が良いわけでもなかった。
部活が一緒なだけ。
普段はそこまで喋んないし、部活中だけの付き合い、ってやつ??
まぁ、俺が“あの子”以外を、そこまで好きじゃない、ってのもあるけど。
「ほぅ、お前さんらが別れた、って噂は本当のようじゃのぅ」
俺が睨み付ければ、クックックと仁王は嫌な笑い方をする。
「“柊”そう睨みなさんな」
仁王が言えば、ハッと彼は笑う。
「詐欺師の言うことなんざ、信じらんねーに決まってんだろ??」
彼の普段の口調とは打って変わり悪くなる。
「お前さん、いつまでその“腕輪”してるつもりじゃ」
仁王の視線の先は、彼の右手首にある“モノ”
「へぇ、知ってんだ?? 流石、詐欺師」
ニヤリ、と笑っていない笑みを見せる彼。
「瀬戸内、からの貰いモンじゃろ。瀬戸内の赤いリボンは、お前さんからの贈りモンか」
仁王の言葉で、彼はぴんぽーん、と笑う。
「なぁんでも知ってんのか、詐欺師は。達人みたいだな」
ヘラヘラと笑いながら、彼は言い続ける。
「神の子でも、分かんなかったぜ。ま、言わないだけかもだけど」
ボールを人差し指の上でクルクルと回せば、仁王はつまらなそうに“ソレ”を見た。
「お前さんは、誰も自分の領域[ナカ]に居れんつもりか」
初めて、仁王の言葉で、彼は仁王と視線を合わせる。
「何のことだ、詐欺師」
首を少し傾げながら、彼は目の前の人物に聞く。
「嘘付くんなら、もっとマシな嘘の付き方をしんしゃい」
仁王が言えば、彼は目を見開いた。
“紅蓮の嘘付くときは、分かるんだよ?? 銀花、ずっと紅蓮の傍に居たからさ”
少し前まで、彼女は彼に向かって微笑んでいた。
なのに。
“紅蓮なんて、大嫌い!! でも、これだけは言わせて”
いつの間にか、彼女が見えなくなっていた。
“銀花は、紅蓮のこと、心から好きでした”
なァ、銀花。
知ってたか、
“大嫌い”って言われるより、
俺は、
“好きでした”って言われるほうが、
結構キツイってこと。
「……、ぎ!! 柊ッ!!」
紅蓮の目の前、すっごく近くに居る仁王。
「お前さん、意識消えとったぞ。瀬戸内のこと、考えてたんか」
疑問形でないのは、仁王が固定しているからだろう。
「うるせーよ、詐欺師。叫ぶな、近付くな」
彼は、低い低い声で、目の前の人物を威嚇する。
「………、“アイツ”がアメリカに行った理由知らんみたいじゃから、教えてやるきに」
仁王は彼の驚く顔を見てから、相手のネクタイを自分の方へ引っ張った。
そして、仁王は彼の左耳のすぐ近くに顔を置く。
おく、と言っても肩に置いてるわけではない。
仁王は紅蓮の耳のすぐ近くで、喋る。
「いっ!? 詐欺師、いい加減にしろよ。銀花がアメリカ行ったのは、元々戻る予定だったからだ」
「違う。お前さんは知っとるはずじゃ。アイツは、いつ戻っても構わんかった」
「なん、で。何で、お前がそんなコト知ってるんだ」
「知っとるよ?? アイツは俺と“仲良し”じゃったからのぅ」
グッと、紅蓮は相手を引き離すと、逆にグッと相手のネクタイを掴む。
「どういうコトだ」
紅蓮の敵意の目は、ずっと目の前の人物に注がれている。
「アイツは、瀬戸内はお前や俺達のファンに“ 虐 め ら れ て た 。 ”それも、生半可なモンやない」
仁王の言葉で、紅蓮が衝撃を受けたのは言うまでもない。
ネクタイを掴んでいた手は緩み、目は揺らいでいる。
「アイツは、お前さんらに気付かれんよう上手くやっとた。そうやって、お前さんらを騙しとったんじゃよ」
何故か、紅蓮はそれを聞くと、“あぁ、だから…”と小さく小さく呟いた。
「柊、お前さんが、俺達を“異名”で呼ぶ理由はなんじゃ??」
仁王が聞けば、重い口を紅蓮は開く。
「“失うのが、怖いから”」
「もし、自分の中、に入ってきて、その後、居なくなられるのが、怖いから、とか??」
ヘラヘラ、といつものように笑うものの、紅蓮は悲しそうに言う。
「だから、部活以外では、“異名”で呼んどるのか」
仁王が言えば、コクッと小さく紅蓮は頷く。
「でもな、詐欺師。これ、神の子は知ってんだよ。それでも、良いっつってくれた」
彼は、そこまで言うと、真っ直ぐ前を向く。
「だから、今。俺は、“此処に居る”」
そうして、いつものようにヘラッと笑うのだ。
「なァ、詐欺師。お前は、俺をどうしたい??」
どうしたい、と彼が聞けば、仁王は笑う。
「まずは、名前で呼んでもらいたいものじゃのぅ」
仁王が言うと、彼は右手を少し挙げた。
「じゃぁ、“雅治”。銀花のこと、ありがとな」
いつもより、少し輝いて見える彼の笑顔。
「“紅蓮”、お前さんはこれから、何をするんじゃ??」
仁王が聞くと、少しだけ厳しくなる彼の顔。
「幸村に頼んで、ちょくちょく部活を出なくても良いようにしてもらうよ。頭、冷やさないとな」
苦笑いをするものの、仁王は彼をじっと見る。
「“じゃぁな、雅治”」
その瞬間、仁王は直感した。
嗚呼、“今の彼”と会うのは、本当に最後になるかもしれない、と。
“次に会う彼”は、きっと、もっと、変わっていて、
悲しい、姿になっているかもしれない、と。
***
“のぅ、紅蓮”
「んだよ、雅治」
“お前さん、ほんにそれで良かったんか”
電話越しの“友”は俺に言う。
「愚問だな、雅治。もう、後戻りはできない」
“…。俺も共犯じゃよ、紅蓮”
「…………、サンキュー」
電話を切り、隣を見れば、
“アイツ”じゃない女、が眠っている。
なァ、俺のやってることは正しいのか。誰か、誰か、教えてくれよ—————————————————………。