二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: Chapterⅱ ●テニスの王子様 and テニスのお姫様○ ( No.220 )
- 日時: 2011/03/27 19:46
- 名前: うっさー ◆OOs7K0umK. (ID: bG4Eh4U7)
- 参照: 好き、好き、好き。……、大好き。
*+番外編1+*
“好き”と言えたら、どんなに良いだろう。
でも、それは、赦されないこと。
***
“暁野宮 輪廻”
彼女は有名だった。
氷帝に双子の弟が居る、とか。(彼女は氷帝から来た、らしい)
テニスがもの凄く上手い、とか。
1年なのに、先生や先輩にも怯まない、とか。
学校に来ても、殆どと言って良いほど、授業に出ない、とか。
良いウワサもあったけど、殆どは悪いウワサ。
もちろん、それは、俺達テニス部レギュラー陣の耳にもかなり入ってくる。
でも、俺は、一度だけ、一度だけ、彼女と話したことがあった。
それは、ウワサを蓮二から聞く前に。
***[庭園]
「アンタだよね、“幸村精市”って」
振り向けば、紅い髪が目立っている女の子。
「そうだけど。何か、用かな??」
いつも通りの笑顔で聞けば、一瞬、彼女の眉を寄せた。
そして、彼女はセーターのポケットから“何か”を取り出して、俺に渡す。
「あ、これ」
「生徒手帳。階段に落ちてた」
それは、紛れもない俺の生徒手帳。
……。他の女子に拾われてたら、大変だったな。
「ありがとう。君の名前は??」
彼女はイヤホンを耳に入れながら、俺を見て口を開く。
「“リンネ”。でも、関わらない方が良いよ」
何で?? と聞く前に、彼女はもう歩き出していた。
***[その日の放課後]
俺達はいつも通りに部活をし、いつも通り帰ろうとしていた時だった。
部室を最後に出れば、昼休み庭園で話した彼女を見つける。
「あ、あの子は」
思わず呟いた言葉は、そこに居たレギュラー全員に聞かれてしまった。
いや、別に、隠すつもりはないけど。
「知り合いなのか、精市」
驚いた感じの声で蓮二は俺に聞く。
「昼休み、俺の落とした生徒手帳を届けに来てくれたんだ。庭園までね」
さり気なく、さっき彼女が居た場所を見てみるけど、彼女はもう居ない。
「ほぅ。あまり、そういうことをしない奴だと思っていたが…。データが増えた」
蓮二が言えば、俺は眉を寄せる。
「知らんのか?? アイツのウワサ」
それに気付いた仁王が、俺に向かって言う。
「ウワサ…??」
俺の声に驚いた赤也はこっちを振り向く。
「え、ぶちょー知らないんッスか?? ちょー有名ッスよ!!」
赤也はブン太達と話していたが、彼らはそれほど、この話題に興味が無いらしい。
「氷帝、青学、四天宝寺との合宿を覚えているか??」
蓮二の言葉に小さく頷けば、彼はまた口を開く。
「そこに、氷帝の1年が居ただろう?? それが、彼女の双子の弟だ」
俺を目を見開いて驚いた。
“幸村さん、宜しくお願いしますね”
彼は、愛想の良い笑顔で俺に、右手を差し出す。
俺の中で、彼は良い印象だ。
でも、思い出せば思い出すほど、驚きを隠せない。
彼女と彼の印象が違いすぎる。
明るく愛想の良い彼と、無愛想な彼女。
そして、ゆっくり周りを見る。
嗚呼、なんか、ちょっとおかしい風景だな。
なんて、少し自分の中で、話題を変えてみる。
真田、赤也、蓮二、俺で彼女のことを話している。
だけど、
仁王はさっきの発言から、もうこっちを見てない。
柳生、ブン太、ジャッカルと一緒に何かを話していた。
「良くないウワサをよく聞く。あまり、関わらない方が良い」
蓮二の言葉に、俺は小さく頷いた。
***[とある日 in 屋上]
「良いんか、このままで」
独特の喋りをしながら、彼は彼女に歩み寄る。
「アンタは良いの?? 今、授業中」
「そうじゃなか。戻らんのか、“氷帝”に」
仁王が少し悲しそうにいうものの、彼女はイヤホンで音楽を聴いている。
そして、グリーンアップル味のガムを膨らませた。
「ブン太から貰ったんか??」
「くれる、って言うから。アメと交換」
仁王はゆっくり、彼女の前にしゃがみ込む。
それを見れば、彼女は露骨に眉を寄せた。
「ナニ?? 仁王さんは私を向こうに戻したいワケ??」
向こう、というのは、氷帝のこと。
「そうやない。だがな、“輪廻”。
氷帝に居った方が、守ってくれる人が、ちゃんと居るじゃろ」
仁王が言えば、彼女は口を開く。
「イヤだ。戻らないもん。あの人達に迷惑かけるなら、戻んない」
子供っぽく輪廻が言えば、仁王は溜息を付いた。
「“俺、ブン太、柳生、ジャッカル”だけじゃ、おまんのコト守りきれん。分かるじゃろ??」
仁王が言っても、“イヤイヤ”と輪廻は首を振る。
それと一緒に、輪廻の耳に入ってるイヤホンのコードも揺れた。
「輪廻、ワガママ言うんじゃなか。
他のメンバーにも、おまんのウワサが広がっとる。
俺やブン太は上手く出来たとしても、柳生やジャッカルにはムリじゃき」
仁王が言い終われば、輪廻は顔を上げる。
「ココ(立海)に居るには、“理由”が必要なの??」
泣きそうな顔で言うものだから、仁王はゆっくりと頷いてしまった。
「……。私と仁王さんは、“付き合ってる”んだよね??」
確かに二人は恋人同士だ。
と、言っても、それは周りに知られていない。
“あの三人”は知っているが、輪廻が仁王に“周りに言うな”と口止めしたのだ。
「そうじゃよ」
仁王が優しく言えば、彼女はニッコリ笑う。
「仁王さんと一緒に居たいから、ココに居る。……、それじゃ、ダメ??」
それを聞くと、仁王は力強く、輪廻を抱きしめる。
「愛しとるよ、輪廻」
「大好き、仁王さん」
ごめんなさい、なんて、言っても赦されない。