二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: Chapterⅱ ●テニスの王子様 and テニスのお姫様○ ( No.251 )
日時: 2011/04/01 15:25
名前: うっさー ◆OOs7K0umK. (ID: bG4Eh4U7)
参照: アリガトウ、ナンテ、君ラシクナイ言葉ダネ。

*+第二十八話+*


「そーいやさ、お前が俺をテニス部に誘ったんだよな」
紅蓮が言えば、ふわりと幸村は笑う。
「そうだったね。あの時の紅蓮、すっごく嫌がってたよね」
面白かったなー、なんてニコニコしながら幸村は言った。

「こんなメンバーごめんだったからな。苦労するの目に見えてた」
紅蓮は少し、寝ているレギュラーを横目で見る。
「紅蓮は分かってたの?? みんながレギュラーになるって」
幸村の言葉にまさか、と紅蓮は驚きの表情。

「ただ、目立ってのは確かだったからな。お前ら三強は直ぐレギュラーになったし」
紅蓮が、よくやったよ、と呆れ口調で言う。
「誘われたのに断ったのは君、だろう??」
幸村の言葉に、さぁ?? と、紅蓮は惚けた。


***[1年のとき]

1年E組。

入学式から二週間が経とうとしていたある日のことだった。
ざわざわ、と黄色い声と共に、どんどんE組に声が近付いてくる。

茶髪っぽい黒髪の少年は、頬杖を付きながら外を見ていた。
黄色い声もまるで興味のないと言う風に、視線を空から話さない。
笑いもせず、無表情で、無感情で空を飛んでいる鳥や木々、雲に視線を移す。

そんなとき、黄色い声は教室の中まで来た。
そして、その原因である“人達”は一番後ろの窓側の席に居る“彼”の元へ行く。
目の前に来ても、“彼”は空を見続ける。









「“柊 紅蓮”くん、だよね———————————————————————………??」





柔らかい声が“彼”の名前を呼ぶ。
すると、ゆっくりと“彼”は目の前の人物達を見上げる。

真ん中に居るのは、ふわりとした髪の毛に柔らかい笑みを浮かべていて、男子とも女子とも取れる容姿。
右側には、目を瞑っていて、珍しそうに“彼”を観察していた。
左側には、腕を組み、じっと“彼”を見つめる。

「何の用だ」
一言。彼の敵対心は真ん中の人物に注がれた。
「そんなに警戒しないで。俺達は君を誘いに来たんだ」
ニコリ、と真ん中の人物は笑う。

「誘う?? 何処にさ。それに、誰かも知らないお前達の言うことを聞く理由がない」
フッと、紅蓮は吐き捨てるように三人に言った。
会話は廊下にも聞こえていて、他クラスの仁王、丸井、ジャッカル、柳生も立ち止まって見ている。
他のギャラリーも勿論、止まって四人を見ていた。

「そうだね。俺の名前は“幸村 精市”」
「俺は“柳 蓮二”だ」
「うむ。俺は“真田 弦一郎”だ」

順番で紹介されると、「ふ〜ん」と紅蓮の声。

「それで、その三人が俺に一体、何の用かな??」
ニヤリとさっきの表情とは打って変わり、三人を挑発的な目で見上げる。
「テニス部に入部しないかい??」
ざわっと、一気に周りの声が大きくなったのを、紅蓮は不愉快そうに眉を寄せた。

「何故」
一言だけだが、廊下に居たブン太はビクッと肩を揺らす。
「君が強い、って言うウワサを耳にしてね。それに、一回見たことあるんだよ??」
知らなかった?? と幸村はクスッと笑いながら言う。

「“幸村クン”悪いけど、俺テニスとか興味ねぇんだよ」
ニコッと笑って答えれば、真田は驚いて彼を見る。
「そう。……、じゃぁ、さ。俺と試合しようよ」
幸村がそれで納得するはずも無く、条件を持ちかけた。

「君と、俺が??」
紅蓮も驚いてゆっくり喋る。
「だが、精市」
柳が眉を下げながら言うと、幸村はそれを阻止した。

「君が勝ったら、俺達は君に関わらない。でも」
幸村が区切れば、フッと紅蓮は笑う。
「お前が勝ったら、俺がテニス部に入部するってか」
そういえば、幸村はふふっと笑った。

「話が分かるようで良かったよ」
さらり、とそんなコトを言うと、紅蓮は立ち上がる。
「“明日の放課後”な」
そう言って、教室を出て行けば、幸村は嬉しそうに笑った。

***[次の日の放課後]


テニスコートには、いつになく沢山のギャラリーが居た。
勿論、見に来たのは“幸村 精市 vs 柊 紅蓮”との試合。
三強と呼ばれるうちの一人、幸村精市が彼に試合を申し込んだのだ。
それは、昨日のことだが、瞬く間に全生徒に伝わった。


「あーぁ、俺やりたくなくなってきた。こんなに人居ると、めんどうなんだよな」
ラケットを右手で持ちながら、ふぁぁ、と一つ欠伸をする紅蓮。
「ふふ。今更、止めるなんて言わないだろう??」
肩のジャージを幸村は脱いでいて、紅蓮に柔らかい笑みを浮かべていた。

「ま、お前の力を見せてくれよ。幸村クン??」
ニヤリと笑えば、コートで構える。
「じゃぁ、行くよ」
一気に真面目な表情になった幸村はサーブを思いっ切り打った。

「15-0」

審判の声と、共に「ヒュー」と紅蓮の口笛。
そして、面白そうに笑って幸村を見た。






「……、面白いじゃん、お前」





あの後、幸村は1セット取ったが、その後は点をなかなか入れられない。
紅蓮は相変わらずだが、点を取らせていないのは確かだった。

「ほらほら、幸村クン。さっさと本気出さないと、俺点取っちゃうよ??」
ニヤリと紅蓮は楽しそうに笑う。
「っ!!」
打っても打っても、戻ってくるボール。

幸村が驚異的な強さは五感を奪える。
だが、
相手が楽しんで、それも彼に恐怖さえ抱かなければ、それに陥ることも無い。

数分経つと、紅蓮は止まり、ボールをスルーする。

「15-0」

幸村が驚いて紅蓮を見れば、彼は右手から左手にラケットを持ち替えた。
そして、カラーコンタクトをポケットに入っていたコンタクトケースに入れると、彼を見る。
一気に、紅蓮の雰囲気が変わった。





















「————————————————————さァて、幸村クン。“壊れた”って知らないよ??」










何が、なんて聞かなくても明確だった。
彼の目はしっかりと、幸村を捉えているのだ。

「っ!!」
紅蓮のサーブは先程よりも数段に威力が上がっている。
嗚呼、これが彼の本気か、なんて幸村は打ち返しながら思った。

「あーぁ、俺と試合してる時に、考え事なんかしてちゃダメじゃん」

ジャンプをし、スマッシュを打つ体制の紅蓮を見れば、真田は驚く。
そして、柳も何かを小さく言っている。
その言葉を聞くと、真田は大きく口を開けて叫ぶのだ。


「避けろ、精市!!」


幸村はその言葉を聞くと、少し横にズレた。
でも、ボールは彼の頬に傷跡をつける。
ストン、と着地した紅蓮は、ニッコリ笑う。

「ね、言っただろ??」

柔らかい、優しそうな笑みとは裏腹に。




















「—————————————————————————————“壊れた”って知らないよ、って」






































































































君のその言葉を聞いたとき、少しだけど、君に恐怖を抱いた俺が居たのは確かだった。