二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: Chapterⅱ ●テニスの王子様 and テニスのお姫様○ ( No.264 )
日時: 2011/04/06 17:51
名前: うっさー ◆OOs7K0umK. (ID: bG4Eh4U7)
参照: 嗚呼、俺モ相当参ッテルラシイナ、ハハ…。ゴメン、精市。

*+第三十話+*


嗚呼、躯がうまく動かない。
まさか、あんなに酷くやられるとは思わなかった。
あんなに人数が多いなんて。
ちゃんと、ちゃんと周りを見ておけばよかった。





「———————————————————————————目、覚めたかい??」





その声に気付いて、紅蓮はゆっくり目を開く。

「ゆ、き」
うまく回らない頭で、紅蓮が喋ると、目の前の彼はニッコリ笑う。
「良かった。でも、当分は動くの辛いだろう、って」
幸村の言葉に、紅蓮は何かに気付いてから、思いっ切り起き上がった。

「いっ」
躯中に電流が走ったような痛みが、紅蓮の支配する。
それに気付いた幸村が紅蓮の手に触れようとした。
だが、その手は呆気なく叩かれる。

「俺に、触るな」
紅蓮が睨み付ければ、幸村は苦笑い。
そして、その声に気付いたのか、柳と真田が入ってきた。

「お前、何で」
「因みに、蓮二は言ってないよ。たまたま、真田が君を見つけて、俺たちを呼んだの」
紅蓮は柳から、幸村に視線を移す。
そして、じっと見てから、ゆっくり口を開く。

「お前ら、テニスは“楽しい”か??」
紅蓮が言えば、きょとん、とする三人。
「良いから、答えろ」
命令形なのも気にせず、彼等は答えた。

その答えを聞くと、フッと少しだけ紅蓮の頬が緩む。
そして、ゆっくりと立ち上がると、保健室から出て行くためにドアへ歩みを進める。

「まだ、体調が良くないなら、止めておけ」
真田が止めるのも、彼は気にせず、ドアノブに手をかけた。
そして、ニッコリ笑う。

「もう平気。運んでくれて、サンキューな」


保健室から出ると、紅蓮は緩む頬を右手で隠す。

「楽しいんでんじゃん」
緩みきった頬は中々下がってくれない。
先程、先輩らに言われたことを思い出したのだ。

“お前も、テニス楽しんでやってねーだろ”
他は誰だ、なんて聞かなくても分かった。
嗚呼、きっとあの三人だ、と。
強いが故に、当然だと思っていて楽しくないのではないか、と。
随分、あの中にも親切な先輩が居たものだ。

「俺には関係ないけどな」
そう、このときは、“関係ない”って思ってた。

***

気付いたときには遅かった。
辺りを見渡せば、倒れてる先輩達。
でも、残念だね。
俺には“罪悪感”ってモノ存在してないんだ。

「先輩達が、悪いんですよ??」

先輩達が“アイツ等”の悪口言ってるから。
俺が、此処まで肩入れすんのもおかしいけどさ、アイツ等楽しそうにやるんだよ。
んで、一年だからって甘えないで、ちゃんと努力してんだよ。

「お前等にアイツ等の何が分かるっ」

聞こえてなかろうが、聞こえてろうが関係ない。
俺は、アイツ等を此処の頂点を取れる奴等だと信じてる。
ぎゅっと、握っていたラケットを強く強く握り締めた。
何処かで、女子生徒の声と、俺の名前を呼ぶ声がする。

でも、ほら、俺目の前にしか興味ないんだ。
だから、最上級の笑顔を向けて、倒れてる先輩達に言ってやる。



















































「——————————————————————————————ねェ、先輩。壊してあげようか??」





***

「あの時、本当に驚いたんだよ」
ふふ、と幸村は笑って言う。
「あの後、真田にめちゃくちゃ怒られてさ、初めて同級生じゃないと思ったよ」
そのときを思い出してか、紅蓮は溜息をした。

「紅蓮さ、………、眠いの??」
横で欠伸をする紅蓮を見て、幸村は言う。
「ん?? いや、大丈夫だ」
紅蓮はにっこり笑って見せる。

「何日、寝てないんだい??」
幸村の言葉に、紅蓮は一瞬目を見開いた。
「寝てるよ」
その言葉も、幸村は直ぐに否定する。

「今日、蓮二と弦一郎を何度も間違えてた。それ以外にもあるよ、理由」
「あれ、バレてたんだ」
「誤魔化したみたいだけどね。で、何日??」

しつこい幸村に、苦笑いの紅蓮。
だが、此処で言わないと、後が怖くなる、と言うのは紅蓮が一番知っている。

「二日、くらいかな」
紅蓮が苦笑いで言えば、幸村は大きく溜息。
「何で寝ないんだい??」
幸村が聞くと、一瞬だけ間を置いてから紅蓮は笑う。

「なんか、色々な映像が出てきて、な」
そんな姿を見ると、幸村は眉を下げる。
「君は、自分のコトとなると、直ぐに“嘘”を付くね。会ったときから」
幸村の言葉に“何のコトだ??”とでも言うように、首を傾げる紅蓮。

「もう寝た方がいいよ。大丈夫だから」
「あぁ、ってなにするんだよ」
紅蓮が突っ込むものの、幸村は止めない。

「頭を撫でるなっ…。俺、すっげー情けない姿してんじゃん」
下を向きながら、紅蓮は小さい声で言う。
「ふふ。良い姿だよ」
幸村の笑い声が、紅蓮をビクッと震えさせた。

「銀花の方が良かったかい??」
ふざけて言ってみせる幸村。
「あったりまえだろ。銀花にもあんまり、やられたくないけど」
ボソボソ、と紅蓮は呟く。

「でも、やられたことあるでしょ??」
「………、頼むから、言わないでくれ」
紅蓮はそう言うと、優しく笑う。

「俺も」
そこで区切れば、ゆっくり目を閉じた。
幸村は不思議そうに彼を見る。





「俺も、相当、参って、んだな」





***


「ふふ。紅蓮は強がりだなー。銀花みたい」
柔らかい笑みを浮かべて、幸村は言う。

「そうやのぅ。そこまで一緒やと、バカップルナリ」
「つか、普段の紅蓮なら、俺達が起きてるの絶対分かるだろぃ」
「ブン太。お前は、紅蓮を一体何だと思ってるんだ…」
「だが、ジャッカル。お前も分かる、と思っているだろう」
「寝ていないなど、たるんどる」
「真田くん、煩いですよ。それに、事情があるので仕方ありませんよ」

仁王→ブン太→ジャッカル→柳→真田→柳生の順番で話していく。

「にしても、紅蓮。アイツは強がりやからのぅ、詰め込むのが大好きなんよ」
仁王がクックックと笑いながら言えば、柳生からのチョップ。
「あまりそういう言い方はよくありませんよ。彼にだって、色々あるんですから」
柳生が言うと、仁王は頭を抑える。

「柳生。お前さん、唖李栖と同じ場所わざと、殴ったじゃろ」
仁王が睨み付けても、涼しい顔をする柳生。

「それよりも、みんな。もう、眠いよね??」
にっこりと笑う幸村を見れば、全員急いで布団の中に入っていった。








































































































“逃げても、逃げても、ずっと、ずっと、同じ場所を走っている。———————なァ、此処は何処??”