二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: Chapterⅱ ●テニスの王子様 and テニスのお姫様○ ( No.73 )
日時: 2010/11/20 20:42
名前: うっさー ◆8.9xsVkhDE (ID: HnQQx7lG)
参照: キット、君ハ何処ニ居テモ、輝クンダロウネ。

*+第十話+*


「どうするんじゃ」
人通りの多い中、仁王が聞く。
パーカーの帽子を深く被っているせいで、視界が悪い。
さっき、彼女にそのコトを言ったら、手を繋がれた。

「仁王は、何も話さなくて良い。ただ、そこに居るだけで構わない」
スタスタと歩く彼女が、どんな顔をしているか仁王には分からない。
「居た」
だけど、今の声が凄く上がったのは分かる。

「あ?? 誰だ、お前」
仁王はその声に聞き覚えがあった。
同じ部活の先輩だった人。

「おにーさん、私と遊ばない??」
ニコッと笑って言う彼女。
その、“遊ぶ”には、楽しいことなんて、一つもない。

「お前なんかの相手するわけないだろ」
行こう行こう、と周りの男の声。
「今なら、このおねーさんが付いてるよ。それでも、駄目??」
ぐいっと、引っ張られる仁王。





もう、後は簡単だった。


***

男達は呻き声を上げ、彼女を見上げる。

「ね、とっても楽しいでしょ」
パーカーの帽子を外せば、現れる紅い髪。
「お前はっ!!」





気が付いたって、もう遅い。





だから、愉しいコトを始めようぜ—————————…??

***

「ほぉら、弱いモノ虐めばっかしてっからだよ」

ドガッと音を立てて、男が倒れる。
「誓うか?? もう、二度としないと。彼女“達”の悪い噂を全て消す、と」
ニヤリ、笑う彼女と青ざめる彼ら。

「おい、誓うか、誓わないか聞いてるんだが」
ほら、言ってしまえ。
「ま、お前らに」





“拒否権”なんて下らないモノ、存在してないけどな———————————。




「コイツ等も動かないことだし、帰るか」
壁に寄りかかる、“連れ”を見ながら朔夜は笑う。
「邪魔をしなかったのは、褒めてやるよ。……、後、喋らないのも、な」
ニコッと笑ってみせれば、連れ、は視線を逸らした。
その、連れ、は自分の少し前に居て、2人の間は少し空いている。




ほら、そこを、狙ってしまえ。









「早く、」



“帰ろう”と、言う前に、朔夜の躯が動いた。


「仁王ッ!!」
連れ、の名前を叫びながらそっちに行き、相手を手で押す。
「いっ…!!」
仁王は、確かに彼女の歪んだ表情を見た。

「がっは!!」
男はカラン、と言う音と共に向こうまで蹴り飛ばされる。
彼女は冷たい目のまま、叫ぶ。


「これぐらいで済んで、良かったと思えよ」
少し深く切ったらしく血が止まることはない。
ペロッと、朔夜が血を舐めた瞬間だった。

「?!」

ぐらん、と視界が歪む。
行き成り、頭がガンガン痛くなる。

「はは、忘れてた。まだ、“起きてる”んだっけか」
大丈夫か、とやってくる彼を気にせず、言う。
「帰るぞ。早めに、だ」
有無を言わせない口調で言えば、角を曲がる。





——————————————————————ドン。




「わ、悪い。大丈夫、か??」

最悪、だ。
朔夜は“この声”を聞いたことがった。
勿論、自分が“眠っている”とき、限定だが。

「あぁ、こっちも行き成り飛び出てすまな「輪廻…??」」
目の前の相手が、朔夜に向かって言う。
露骨に、否、無意識だが、朔夜は眉を寄せた。

「あ、悪い。人違いだよな。紅いし」
ボソボソっと言う相手を見て、朔夜は無表情になる。
「あぁ、“残念”ながら私の名前ではない」
悪かったな、と言う相手は相当落ち込んでいた。





そう、





そうだろうな。





「朔夜。行き成り走るんじゃなか」
目の前の人物と、朔夜の後ろの人物の目が合う。
「コイツとぶつかったんだ」
少し、頭を後ろの方にやるものの、朔夜の目線は“彼”だ。

「立海の、仁王さん」
後ろだが、彼の口角が上がるのが朔夜には分かる。
「知っとったんか。まぁ、そやのぅ、不二と対戦した学校やからか。不二裕太」
仁王が彼の名前を呼べば、またズキン、と朔夜の頭は痛くなる。






“不二裕太”か、





面倒な奴に会ってしまったな。





朔夜は直ぐにそれを思うと、仁王の近くへ行く。

「仁王、早く戻るぞ。もう、意識がヤバイ」
最後の方は小声で言えば、仁王は少し驚き相手の手を引く。
「そんじゃ、俺たちは帰るの。お前さんも気ィ付けんしゃい」
すれ違う時、朔夜は“不二裕太”に言う。





「紅髪に気をつけて、さっさと帰りなさい」





裕太が後ろを向けば、もう2人は人込みに紛れてしまっていた。


















声が、














会いたい、と願っていた少女に似ていた。













携帯が鳴り、見てみれば“不二 周助”の文字。








「兄貴。もう帰るよ」








“うん、あまり遅くならないようにね、裕太”







「分かってる」











電話を切れば、上を見上げる。


































「輪廻…」



























































君も、俺と同じ空の下に居るだろうか。