二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂] 刀を持った桃太朗 ( No.6 )
- 日時: 2010/08/23 10:06
- 名前: 偉薔薇 ◆aWifV7VEAQ (ID: PAeJS2fQ)
__第01話__
「こうして桃太郎は、おじいさんとおばあさんと、幸せに暮らしましたとさ」
「面白かったー!!」
「初愛は、本当に桃太郎が好きなんじゃなァ」
同時刻。
小さな家に住む女の子とおじいちゃんが、会話を繰り広げていた。
「うん! 桃太郎は、鬼さんを倒しちゃうんだもん、凄い強いんだね!」
「そうじゃなァ、桃太郎は正義の味方じゃからなァ」
本を読み興奮状態にある少女——初愛。
小さい体に幼い顔立ちの少女は、まだ6歳と言ったところか。
彼女はもっと幼い3歳の頃から、お爺さんが読み聞かせてくれる桃太郎が大好きだった。
他にもたくさんの話を読み聞かせてもらったが、中でも桃太郎が一番お気に入りのようだ。
「桃太郎さんが、きっと此のお家にも来て、鬼さんを退治してくれるんだよね!」
「……そうじゃな、きっと来てくれるはずじゃ」
初愛がニコニコと笑顔でそう伝えた言葉に対し、お爺さんの表情は曇りぎみであった。
幼い初愛には、お爺さんの其の表情の変化に気付く事は出来なかった。
「暑いっ、暑いー……」
「そうじゃなァ。今日は暑いからなァ」
本をきちんと本棚にしまい、初愛が騒ぎ出す。
今までは本を読む事に夢中で気がつかなかったが、本日は生憎の猛暑。
家の中にいるため陽がさしても幾分かは楽だが、其れでも暑いのだ。
「お外のお水浴びてくるっ!!」
「おー、気ィつけてな」
暑さに抵抗するように暫くバタバタと手足を動かしたり、家を歩き回っていた初愛だった。
しかし暑さが一向におさまらないと悟ったらしい。
一番暑さを凌げて涼む事の出来る川へと足を動かす事にした。
◆・◆・◆・◆
「桃太郎さん、桃太郎さん。おこしにつっけた、きびだんご」
初愛は川へと向かう道を歩きながら、桃太郎の歌を口ずさむ。相当桃太郎の事が好きなのだろう。
炎天下だと言うのに、初愛は暑いと言う事実を感じさせない程元気にスキップをしながら進んでいく。
今の初愛にとって、蝉の鳴き声すら楽しいBGMに聞こえているのだ。
「ひっとつー私に……?」
上機嫌に歌を歌っていたが、初愛は視界に何かが入りピタリとスキップも歌も止めてしまう。
目の前には、目的地である川が広がっている。
さらさらと綺麗に流れる其の川は、美しい水色だ。
其の中に一つだけ、水色の中仲間外れのように、淡い銀色が光っているのだ。
(何だろー……?)
美しく輝く銀色の正体を見るべく、初愛は恐る恐る近づく。
サクサクと、草が擦れる音を出しながら。
数歩歩けば、銀色に輝く物の正体がはっきりとわかった。
銀色に輝くのは、髪だ。
ふわふわの銀髪天然パーマを持つ少年——銀時が、川沿いに倒れていたのだ。
「……も、桃太郎ー!!」
初愛は目を丸くし大声で叫んでから、踵を返し走り出した。
“お婆さんが川で洗濯をしていると、どんぶらこどんぶらこと、大きな——”
そんな台詞が、初愛の頭を駆け巡っていた。
そう、川からどんぶらこと、彼は流れて来た。
桃は無いものの、桃太郎の話と、合致していたからだ。