二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂] 刀を持った桃太朗 ( No.9 )
- 日時: 2010/08/23 10:07
- 名前: 偉薔薇 ◆aWifV7VEAQ (ID: PAeJS2fQ)
__第02話__
「……痛ぇ」
頭が変にクラクラする感覚に眉をしかめ、銀時は意識を浮上させる。
痛む頭を抑えながら起き上がり、目を開ける。
「……あれ? 俺、どーしてたんだっけ?」
辺りを見渡してみれば、全く見た事の無い風景が広がっている。
狭くも広くもない、普通の民家にいるようだ。
床は少し黒ずんだ木で出来ていて、目の前には囲炉裏がある。
多少古くさい作りにはなっているのに、此の家はまるで劣化していない。
「おぉ、目が覚めましたかな」
「……アンタは?」
「ワシは迅楓と言うモンじゃ。アンタァ、川から流れて来たらしーじゃないか」
(あぁ……そういや俺、ぶっ倒れたんだったな)
キョロキョロと辺りを見渡していた時、此の家の者であろう老人に話かけられる。
其の老人の話を聞き、自分が暑さにやられて川に落ちてしまった事を瞬時に思い出す。
今思えば、意識の無い中川に落ちてよく死ななかったな、と自分の運の良さに感心してしまう。
「アンタが川から流れて来たーって大騒ぎして連れて来てなァ。
熱があったアンタを必死に看病したんじゃよ、初愛がのぅ」
「初愛……?」
「アンタの枕元におるじゃろ」
迅楓に指摘され自分が寝かされていた枕元へと視線を移す。
と、其処には、安心しきった表情で穏やかに眠る少女が、体を丸めて自分の隣にいた。
其の幼さは、可愛らしさが醸し出されている。
「其の子がのぅ、アンタを見て叫んでおったよ、川から流れて来たー! てのぅ……」
目を細め柔らかな表情で微笑む迅楓。
銀時は初愛と勇を見比べるように二人の顔を眺めていた。
(親子、じゃねーよな)
迅楓と初愛を見て、そんな感想を抱く。
初愛は見たところ6歳くらいであるし、其れに対し迅風は70代の高齢だ。
何をどう考えても、親子とは考えられない。
「よー、迅兄ィ、調子はどーだ?」
「……お前か」
と、二人の関係について疑問に思っていれば、突如古い扉が軋む音を響かせながら開いた。
扉を開いた人物は、まだ中年であろう人物だった。
お邪魔しますの一言も無しにズカズカと遠慮なく入って来る此の人物に、嫌悪感を覚える。
そんな自分の感情など露知らず、ニタリと笑い其の男は話始めた。
「迅兄さんよォ、金貸してくれよー。俺また借金しちゃってさァ。借金取りに追われてんだよねぇ」
迅楓を“兄さん”と呼ぶ此の男は、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながら手を合わせて金を貸すよう懇願し始めた。
懇願と言えど、ちっとも申し訳無さそうな感じでは無く、軽い感じで申し出ている。
「……お前は何時になったら借金が無くなるんじゃ。
ワシ等かて、アンタに金を渡したお陰で金に余裕が無くなって来ているんじゃ」
「頼むよ〜、何なら財産譲ってくれても良いんだけど」
「……淋牙!!」
金が無いと言う勇に対し財産を譲れと罰当たりな発言をする男——淋牙。
迅風は顔を赤くさせ眉を釣り上げ彼に怒鳴り付けた。
「……迅兄貴よォ、アンタ財産をまだ一杯もってる。其れをこんな餓鬼に譲るつもりか?
なら、実の弟の俺にくれた方が良いだろ」
「…………」
迅風の弟と名乗る男ははぁと溜め息を吐く。
穏やかに眠る初愛の顔をチラリと一瞥した——しかし其の目つきは鋭いものだった。
まるで、初愛を憎んでいるような、黒い目だった。
憎しみが籠った目の色に思わず銀時が少々怯んでいれば、そんな銀時に気付く事無く淋牙は話を進める。
「……はあ。何だってこんな餓鬼だけ残ったんだかなァ。此の餓鬼さえいなきゃ、俺が財産を貰うっつーのに」
「初愛は、娘が残した宝じゃろう」
「コイツ一人残して死ぬなんざ、コイツにゃ願ってもねぇ事だろ」
初愛を鋭い目付きで見ていた淋牙が、今度は迅風に対して其の視線を向ける。
そしてツカツカと迅風に近づいたかと思えば、勢い良く胸ぐらを掴んだ。
迅風は胸ぐらを突如掴まれ、まだ器官上手く順応されていないらしい、ゴホゴホと咳をしはじめる。
「どちらにしてもなァ。兄さんもアイツも、さっさといなくなりゃ良いのになァ」
「……ゴホッ、ゴホ」
苦しそうに咳こむ迅風などお構い無しに、残酷な言葉を吐き捨てる。
其の瞳には、先程よりも酷な——憎しみのこもった色がついていた。
ゴホゴホと、未だ苦しそうに咳き込む迅風。
——──パシッ!
と、突如其の咳き込む声は消えた。
其れと同時に、肌を叩き乾いた音が家の中に響いた。