二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂] 刀を持った桃太郎⇒04up ( No.17 )
- 日時: 2010/08/23 10:05
- 名前: 偉薔薇 ◆aWifV7VEAQ (ID: PAeJS2fQ)
__第05話__
「……初愛」
「ん?」
「お前は、どーしたいんだ?」
川にブラブラと足を付け泣きそうな顔をしている初愛に、そう言葉を投げる。
銀時の言葉を聞き、足を止めた。
「子供が、んな難しい事考えんな。お前はどうしたいんだよ?」
「初愛が……?」
ポンポンと、さらさらの髪を持つ初愛の頭を撫でる。
そう、子供はそんな事を考える必要など無い。
誰かの為だと考える事は素晴らしい事。
だが、初愛は6歳だ。一番自我が強い時期だろう。
今の時期に自我を出さずに、どうすると言うのだろうか。
離ればなれになって、良いと本気で思っている訳が無い。
其れに、此の娘を溺愛している迅楓が、初愛を安々と手放すような真似はしないだろう。
「初愛はね……」
「おう」
未だ俯いたまま、言葉を絞り出す初愛。
「お爺ちゃんの側にいたいよ……でも、離れなきゃ、駄目だって。
淋牙おじさんと喧嘩してる時の顔、悲しそうなの。そんな顔させてるのは、初愛だもん」
「…………」
「そんな顔の、お爺ちゃん、見た、く無いもん……!!」
俯いていた為見えなかったが、ずっと我慢していたようだ。
いよいよ涙が溢れ、目元を抑えながら声を出して泣き始めた。
(やっぱ、6歳の女の子だよな)
考え方はとても大人だ。
だが、声を上げて泣く姿は、6歳の女の子の姿でしかない。
「なら、良いじゃねェか」
「……う、何が……?」
自分が呟いた言葉に、嗚咽混じりに反応を示す。
「側にいたいなら、側にいりゃあ良い。お前のじいさんも、お前がいる事が一番幸せなはずだ」
「初愛が、いる事が?」
「お前のじいさんはお前が大好きだからな。お前は、側にいてやれ」
其の方がお互いの幸せなのだ。
自分のところに来たところで、此の娘は悲しみにうちひしがれているだろう。
誰よりも笑顔が眩しい、此の娘の笑顔をずっと保たせたい。
そうするには、素直に側にいる事が、一番なのだ。
「桃太郎、本当……?」
「あぁ、本当だ。じいさんはお前がいなきゃ生きていけねェよ」
「……桃太郎!」
「うぉっ!」
泣いた為赤くなった目で自分を見上げたかと思えば、勢い良く自分の胸に飛び込んで来た。
少し狼狽えたものの体制を整え、自分の胸に蹲る初愛の顔を覗き込む。
すると、初愛は最初に出会った時同様、眩しい笑顔を向けてきたのだ。
「桃太郎ありがとう! 桃太郎、優しい!」
其の時の笑顔は、正に無邪気な女の子の可愛らしい笑顔だった。
初愛は其の後一気に元気になり、川の近くを飛び回って遊んでいた。
太陽の暑さなどものともせず、体力など奪われないのでは無いかと言う程元気にだ。
其の侭時は過ぎ、あれほど天高く登っていた陽は沈み、今度は暗闇の中月が天高く登っている。
暗闇の中にぽっかりと、月の光が辺りを優しく照らす。
昼間は元気良く遊び回っていた為、初愛は今はぐっすりと眠っている。
安心しきったような穏やかな寝顔は、自分を自然と笑顔にさせてしまう。
何処までも不思議な女の子だと、思う。
「爺さんよォ、昼間初愛が言ってたぜ。アンタの側から離れた方が良いのかってなァ」
初愛の寝顔を優しく見守る迅楓に、昼間あった出来事を話す。
「淋牙がアンタから離れた方が幸せだって言われたってよ。
でも、初愛は爺さんの側にいた方が幸せだ。俺はそう言ったぜ」
「…………」
「アンタだって、初愛を手放す気なんて無ェんだろ?」
迅楓に視線を移しながら、、銀時は自分の布団に横になる。
自分の布団にはいつも同様初愛がいるので、起こさぬよう慎重にだ。
「……初愛はなァ、ワシの娘の子供なんじゃ」
自分同様寝る準備をしていた迅楓が、弱々しく其の言葉を漏らした。
今、此の空間は暗がりだと言うのに、迅楓の悲しそうな表情をしていると何故かそうわかってしまった。
「じゃが、娘と娘の旦那は早くして死んでしまったんじゃ。娘には、財産が沢山あってのう。
娘の財産はすべて初愛に託されているんじゃ。……だがのう」
迅楓の声色が徐々に低くなっていく。
其れは恐らく、悲しみからだろうか。
「其れを淋牙が狙うようになってなァ。初愛を引き取りたいと言ったり、ワシが早く死ねば良いと言ったりのぅ。
淋牙にとって、ワシも初愛も邪魔で仕方ないんじゃ」
(財産目当てか)
迅楓の言葉は悲しに満ちていると言うことは一目瞭然だ。
娘——初愛の両親の財産は、血縁者の初愛に託された。
だが、財産が欲しい故に、初愛を引き取りたいと淋牙が申し出たのだろう。
淋牙の性格上、財産さえ手に入れば初愛の事をすぐ放ってしまうだろう。
だから、迅楓が引き取ったのだ。
だが、其れが気に食わぬ淋牙は、迅楓や初愛にちょっかいを出しているのだ。
気に食わぬ、なんてものではなく、憎しみが込もっているのでは無いかと思ってしまう程。
其れが、実の弟にされているのだから、兄の迅楓が悲しくないはずが無いと言うのに。