二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: [銀魂] 刀を持った桃太郎⇒05up ( No.18 )
日時: 2010/08/23 10:44
名前: 偉薔薇 ◆aWifV7VEAQ (ID: PAeJS2fQ)

 __第06話__


「……銀時、言うんだったか?」
「はい」
「頼みたい事があるんじゃ」

(……頼み?)
ポツリポツリと繋がっていく言葉は酷く弱々しかった。
明日自分は帰る身だと言う事はわかっているはずだと言うのに。
其れに自分は15と言うまだまだ成年とは言えない年齢だ。
こんな頼りない自分に、一体何を頼むと言うのだろうか。

「実はなァ……」

  ◆・◆・◆・◆

「どーも、お世話になりました」
「元気でなァ」

翌日の早朝になり、銀時は既に帰る支度を終えていた。
玄関の扉を開けば、朝日が眩しく差し込む。鳥も優しく鳴いていて、暑さも酷くない。
前回あの灼熱の太陽にやられてしまったのだから、今回は暑さが然程厳しく無い早朝に帰る事を決意したのだ。

ありがとうございましたとお礼の挨拶をすれば、自分をニコニコと笑顔で迅楓が見送りをしてくれる。
逆に初愛の表情は悲しそうで、今にも崩れてしまいそうだ。

「ほれ、初愛もお兄ちゃんにバイバイって言うんじゃ」
「……帰っちゃう、の?」

(……可愛いな、オイ)
上目遣いに加えて、涙目と言う愛くるしさ抜群の表情でこちらを見る初愛に愛らしさを感じる銀時。
小さい子供など泣きわめくし煩いと言う印象しかなかったが、愛着が湧いたのだろうか。
目の前にいる少女がかわいくて仕方ない。

「また遊びに来るからよォ、んな顔すんなよ。帰れなくなるだろ?」
「桃太郎ォ……また、来てくれる?」
「あぁ、必ずな」

既に自分を桃太郎と呼ばれても何の違和感も持たなくなってしまった自分に苦笑してしまう。
また来ると言いポンポンと初愛の頭を撫でるも、寂しいのだろうか、初愛の表情は変わらず崩れそうだ。

「じゃあな、またな」
「……また来てね! 絶対絶対、絶対だよ!」
「あぁ、絶対来てやっから」

こんなに可愛らしく渋られると、此の侭此処に居座りたくなってしまうと考えてしまう。
初愛の頭を撫でるのを辞め、其の手でバイバイと振る。
其の瞬間、初愛の瞳にたまっていた綺麗な雫が流れだし、小さな手を大きく振り「また来てね」と繰り返す。
銀時は其れに応えまた振り替えし、すぐに前に向き直り歩き出した。
後ろを向いたままでは、本当に寂しくて戻ってしまうような気がしたからだ。
初愛の瞳から流れる雫は、汚れが無く本当に美しいものだったから。

倒れて気づけばあの場所にいたから、自分がどうやって此の場所に来たのか定かでは無い。
だが、川から流れて来たのだから、川沿いを歩いて行けばある程度わかる道に出るだろう。
そう考えた銀時は、川沿いの道を頼りに長い道のりを歩いて行く。

(……まさか、んな事頼まれるなんてなァ)
其れにしても暑い。
歩いて大分たった為、陽も高く上がり相も変わらず夏の日差しがジリジリと自分を突き刺す。非常に暑い。
だが、此の暑さは夏の為だけでは無い。
外気による暑さではなく、自分の体の内側から——込み上げる感情が、暑さを引き立たせるのだ。

(あー……んな事すぐ“はい”なんて言えるかよ)
迅楓の言葉が頭の中を占拠する。
がしがしと頭を掻いては気持ちを落ち着かせようとするものの、全然落ち着かない。


“ワシはもう長くは無いじゃろう。あと10年持つか持たないかじゃ。だから、其の時は——”


「……銀時?」
「あ、本当だ。銀だ」
「……ヅラ、アリス?」

迅楓の言葉を思い出していれば、自分の耳に聞きなれた声が入って来る。
此の声は、自分と同い年と言うのに妙に大人びていて、考え方が古くさいと言うか、固い。
もう一つの声は、
自分と同士である——桂小太郎と九条アリスだ。

「ヅラじゃない桂だ。本当に銀時だな?」
「今まで何処に行っていたの? あ、別に心配とかしてないからね。変な妄想とかやめろよ?」
「お前はいちいちムカつくな。此の捻くれ者が」
「捻くれてませんー。つか、私の質問に答えてよ」
「あー……ちょっとな。他の家に世話になってたんだよ」

自分が行方不明になっていたにも関わらず、何ら変わらない友達の姿には感心と同時に呆れてしまう。
もう少し心配していてくれてもいいものを、と思いながらも、銀時は自分がいなくなった理由を話す。
川に落ちたなんて高杉や餅ラーの初恋に知られたら、良い笑い物でしかない。

「ま、帰って来たからよォ。今日からまた剣術修行に励むぜ」
「……銀時」

何時も同様剣術修行に励むと伝えたものの、桂とアリスは訝しげな表情を浮かべた。
そんなにおかしな発言をしただろうかと首を傾げれば、桂はゆっくりと人指し指を此方に向ける。

「……銀時、誰だ其の子は?」
「は?」
「えへへ、見つかっちゃったァ」

桂が指差す方向へ首を向けようとしたと同時に聞こえて来た、明るく可愛らしい声。
自分より身長が小さい故、声は下から聞こえる訳で。
ゆっくりと下に視線を移せば——案の定、初愛がニコニコと笑顔で自分の横にいた。

何時の間にか、着いて来てしまったようだ。

「桃太郎ー!」
「初愛!! 何着いて来てんだよ!!」
「銀、あんた、姿を消していた時に幼女に手を出していたの!? マジ引くわー」
「んな訳あるかァァァァァ!!」