二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂] 刀を持った桃太郎⇒06up ( No.20 )
- 日時: 2010/08/23 11:32
- 名前: 偉薔薇 ◆aWifV7VEAQ (ID: PAeJS2fQ)
__第07話__
「桃太郎ー、次は鬼ごっこしよ、鬼ごっこ!」
「……いやよォ、初愛ちゃん?
氷鬼やった後鬼ごっこはキツイよ? しかも人数4人だし、其の一人しかもヅラだし」
「ヅラじゃない桂だ! 此れも鍛錬と思えば良いでは無いか。体力はいくらあっても荷物にはならん」
(いや、そう言う意味じゃねーんだけど)
自分の配慮の言葉を理解してくれない旧友に、人知れず溜め息をもらす銀時。
自分は今朝方、目の前にいる幼い少女——初愛の家から自分の住む場所に帰って来たはずなのに。
初愛はずっと自分の後を着いて来ていたらしい。
自分は全く気づかなかったのだが(寝込んでいたから勘が狂ったのか、どちらにせよ武士失格だと思った)。
桂とアリスが初愛を発見し、銀時は急いで少女のお祖父さん——迅楓の元へ送って行こうと考えていたのだ。
しかし本人が渋り、そして桂とアリスも折角来たのだから少し遊んでやれと言って来たので、仕方なく頷いた。
其れから初愛は自分達に暇を与えない程に、遊びに徹した。
ままごとから始まり、かくれんぼや氷鬼……そして今から鬼ごっこを始めようとしているのだが。
「鍛錬とか体力とか言ってる場合じゃねーだろ。もう夕暮れだぜ? そろそろ帰らせた方がいいだろ」
「やー! 此処にいるー! まだ遊ぶのー!」
「……初愛もそう言っているし、今日位泊まらせてやれば? 初愛は私を気に入ったみたいだし。私を」
「うむ、一日位平気だろう。なによりアリス殿と同様、初愛殿は俺を気に入ってしまったようだ、俺を」
「二回“私・俺を”って強調しなくてもお前等を初愛が気に入った訳じゃねーよ、逆だろ。
お前が気に入ったんだろ」
何時の間にか陽が沈みかけている。そろそろ送っていかなくては、自分も帰りが困難になってしまう。
夜は暗く道がわからなくなってしまうのだ。
桂の言う通り泊まらせると言う考えもあるが、一応、自分達は男で初愛は女。
まあ何も無いだろうが、其れでも少し気が引けてしまう。
其れに何より問題なのは——。
「おいテメー等、剣の修行サボって何やってんだ」
「……高杉か」
(あーあ、正に考えてた奴が来ちゃったよ)
第二の考え。
此の幼い少女を泊まらせると言った時断固反対するのは、彼——高杉晋助だ。
泊まらせると言っても眉間に皺を寄せ不機嫌になり、「捨ててこい」と言われるのがオチだ。
自分の考えを察してかどうかは解らなかったが、高杉は案の定桂の隣にいる初愛を見ては眉間に皺を寄せる。
いかにも嫌なものを見たと言った表情だ。
高杉との視線が絡んだ初愛はと言えば、鋭い目付きの高杉をものともせず、ニコリと屈託の無い笑顔を見せた。
其れを見てはまた不機嫌さがました高杉が三人に問いかける。
「ヅラ、銀時、アリス……何だコイツは? テメェ等剣術も励まねーでこんな餓鬼と何してたっつーんだ」
「ヅラじゃない桂だ。いや、銀時が行方を眩ませていた時に世話になった娘でな」
「そうそう。着いて来たみたいだから、今日は遅いし泊めようかと思ってたの。
此の子が名残惜しそうだから、此の子が」
「くどいぞチビ」
“チビにチビって言われたくない!”と何時もの台詞を口にしたアリスを三人は綺麗に流す。
泊めると言う言葉を聞いた高杉は鋭くしていた目を一瞬丸くし、またキツイ目付きで口を開いた。
「ふざけてんのか? こんな餓鬼をうちに泊める? 冗談じゃねェよ、さっさと送って来い」
「んー……そうは言っても初愛が聞かねェからな」
「知るか、無理矢理でも早く送れ——」
「……犬!」
「はァ?」
一方的に怒り狂う高杉をどう宥めようか考えていた時、突如初愛が声を上げた。
其の声を聞き二人は言い合うのピタリと止め、辺りを見渡す。
ところが、四方八方何処を見ても犬などいない。
一体何を見たのだろうかと首を傾げていれば、初愛はスッと指を指す。
指の先は、高杉で。
「たかすぎは犬で、ヅラは猿! 雉がまだいないね!」
「……何言ってんだコイツ、誰が犬だって?」
「あぁそっか、桃太郎か」
今にも殴りかかりそうな高杉の肩を掴み抑え、初愛の言う事を理解する。
自分は桃太郎だから、高杉は犬で桂は猿なのだと言いたいらしい。
桃太郎は解るのだが、高杉が犬で桂が猿と言う言い分には少し無理がある気がする。
ならば雉は此処にはいないが坂本が適役か。
「私は? 初愛!」
「んー……、かぐや姫!」
「わああ、もう此の子良い子!!」
肌の白さからか、アリスは童話のかぐや姫から“かぐや姫”と名付けられていた。
童話好きの初愛にとって、色白のアリスはそう見えるらしい。
其の場に居た男三人には理解不能の顔を浮かべていたが。
「兎に角テメェは帰れ、餓鬼がいて良い場所じゃねーんだよ」
「犬さんだってまだまだ子供だよー?」
「……テメェ、叩き斬ってやろうか?」
「高杉落ち着け、相手は子供でおなごだぞ?」
高杉の忠告を揚げ足をとり返してしまう初愛にキレ気味の高杉。
本当に剣を出してしまいそうな勢いだったので急いで桂が止めるも、青筋は未だ浮き出ている。
そんな高杉などお構い無しと言うように顔色をかえない初愛を凄いと思ったのは、此処だけの話だ。