二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: [銀魂] 刀を持った桃太郎⇒09up ( No.25 )
日時: 2010/08/23 14:58
名前: 偉薔薇 ◆aWifV7VEAQ (ID: PAeJS2fQ)

 __第10話__


暑い。
何時の間にか意識が薄れていた高杉が、目覚めた時に感じた事は灼熱の太陽から注がれる暑さだった。
ギラギラと惜しむ事なく暑さを降り注ぐ太陽に、苛立ちを覚えてしまう。

(クソッ……ヘマしちまったな)
横にしていた体をむくりと起こすと、ツキンと鈍くもしぶといような痛みが自身を襲う。
根源である傷の所在は、肩にある刀傷と、足腰の打撲だ。

(まさか、山賊がいやがるたァな。運が悪ィ)
チッ、と小さく舌打ちをする。
其の小さな音は、蝉の煩い鳴き声には叶わず掻き消されてしまった。

本日の早朝、高杉は何時もよりも早い時間に起き、剣術の修行に一人黙々と励んでいた。
単純に剣術が上手くなりたいと言う思いもあった。
しかし自分の住む場所にいる人物が不愉快で、同じ空間にいたくなかったからと言うのが一番の理由だ。

——初愛、そう皆は呼んでいた。

元々、高杉は女子供と言うのは好きでは無い。寧ろ、苦手な類いだ。
自分の鋭い目付きを見てはすぐ泣くし、調子の良い時にのみすがってくる。
其れが酷く鬱陶しくて仕方が無いのだ。
そんな女子供が同じ空間にいると考えると、自然と嫌気が指して来て、無意識に早く目が覚めてしまった。
だから、暇つぶしに加え憂さ晴らしに刀を握った。
其れなのに。

(っ……! 結構深く斬られたな、こりゃァ)
思い出すだけで、肩の傷が痛む。
少し奥の林にいた時、山賊に襲われたのだ。
何時の間にか、大の大人が5人自分を囲んでいた。
金欲しさからか、子供である自分に斬りかかって来たのだ。

高杉は剣術は其処其処の腕だった為何とか振りかざされる刀を止め、上手くかわしていて。
最初こそは勝てそうな雰囲気だった。
しかし、一瞬の気の緩みを見逃さなかった山賊は、自分を容赦無く斬りつけた。
肩から鋭い痛みと共に、噴き出す赤き血。痛みに視界が眩み、足元もフラフラと覚束なくなった時。
後ろが崖だったと気づかず、其の侭落下してしまったのだった。

(まァ、草があったのが救いだろーな)
気を失ったまま崖から落ちたのだから、死ぬか重症かでもおかしくない。
其れでも今こうしてきちんと回想したり出来るのは、落ちた先に草があり、其れがクッションとなったからだろう。
(…にしても、どーするかが問題だな…)

崖から落ちた時、草はあったから衝撃は和らいだものの、軽く足を捻ってしまったらしい。
だからと言って歩けないと言う程の重症では無いのだが、暑さからか動く気力が起きない。
暑い。太陽の光りも、斬られた肩も、熱い。

(……アイツ等が来るわけあるめェな)
ふと過ったのは、仲間の事。しかし高杉はすぐ頭を横に振り過った人物を惜しげも無く消す。
軽症ではあるが肩と足に傷を負っていて、尚且つ暑さで体力が消耗している。
つまりは誰か助けがいなくては此の場から離れる事はできない。
しかし、四方八方何処を見ても人気は無い。
仲間と言っているが、自分は特に彼等に何かをしてやったと言う訳でも無い。
寧ろ仲間などうざったいものだと思っていたし、こう言う時だけ救いを求めるなど、調子が良すぎるだろう。

はあと溜め息を吐く。
蝉の鳴き声に混じり風で木々が擦れる音がする。

「……あ、いたー!!」
「あぁ?」
「犬さん見っけー!」

高杉は目を瞑り、風でようやく少しだけ暑さが和らいだ瞬間、後方から幼いような声が聞こえて来た。
一体誰だろうと考える必要も無い、自分を犬と呼ぶ人物など一人しかいない。

「……テメェか、何しに来やがった」
「テメェじゃないよ! 初愛だよ!」

自分の言葉に反抗を示す少女は、案の定銀時が連れてきた初愛だ。
つい先程まで女子供は嫌いだと考えていた矢先に来るとは、何て自分は運が無いのだろうとぼんやり考える。

「犬さん、帰ろう! 桃太郎も待ってるよ!」
「……待っちゃいねェだろーよ」
「そんな事無いよ! 皆で探してるんだよ?」

(……胡散臭ェ)
初愛は自分を探す為に、一人ノコノコとこちらに来たと言う。
そして銀時や桂も皆心配して探し回っていると、そう口にしてきた。

しかし、どうも胡散臭い。

仲間だなんだと、自分は群れるのは好きでは無いし、銀時達には散々ひどい扱いをしていた。(主に髪型)
顔を合わせれば喧嘩。
喧嘩する程仲が良いとは言うが、自分達は正に犬猿の仲と言う言葉がぴったりだと思う。

散々な事をしている、だからこそ、探していると言うのが信じられない。