二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂] 刀を持った桃太郎⇒10up ( No.26 )
- 日時: 2010/08/23 15:23
- 名前: 偉薔薇 ◆aWifV7VEAQ (ID: PAeJS2fQ)
__第11話__
「ね、兎に角帰ろ?」
「……道わかんのかよ」
「……えへ」
(探しに来て迷子かよ)
帰るよう促した初愛に帰り道を尋ねる。
すると一瞬体の動きが止まったかと思えば、舌をペロリと出してはにかんで笑っていた。
どうやら、探しに来た本人が道を忘れてしまったらしい。
意味が無いではないかと思いながら、高杉は再び溜め息を吐く。
本来自分が本調子なら、自力で此の場を歩けば何となく道はわかる。
しかし、山賊に斬られた肩と落ちたときの足の捻りの痛みが消えない。
故に、歩きたくとも歩けない状態なのだ。
「でも、きっと桃太郎やさるさんが助けてくれるよ!」
「……さァな、アイツ等は俺を仲間とは思っちゃいないかもしれねェ。
寧ろ居なくなって清々したって思ってるかもしんねェ」
自嘲的な言葉を吐いた自分に、再び溜め息を漏らす。
情けない、そう高杉は思っていた。
元はと言えば、馴れ合いが嫌いな自分が元凶だ。自分で撒いた種なのだ。
馴れ合いが嫌いで人と距離をとって生きて来た。
何時も厚い壁を作っていると言うのに、其れで何故助けに来ると言う根拠があるのだろう。
何故、助けを求めているのだろうか。
「……仲間なんざ、うざってェだけだ」
ポツリ、そんな言葉が無意識に落ちてきた。
そう、仲間など煩わしいだけだ。
自分言い聞かせているのか、はたまた本心とは裏腹な言葉なのか、どちらかは解らない。
しかし、自分がしてきた数々の出来事を思い出せば最初から期待等しない方が良いのでは無いかと思う。
“仲間”と期待する、よりは。
「高杉ィ!」
「……あ?」
たどたどしくも幼い声で自分の名を呼ばれた時、小さな変化に気づかず流そうとしてしまった。
つい先程まで犬と自分を呼んでいたのに、確かに彼女は“高杉”と呼んだ。
其の事実に驚き初愛に顔を向ければ、未だ笑顔だか、少し哀愁の漂った表情を浮かべていた。
「高杉ィ!」
「んだよ」
「高杉!」
「だから何だ!!」
高杉と連呼するも内容を言わない初愛に苛立ち声を荒らげてしまった。
只でさえ肩の痛みと暑さで苛々していたのだから、火に油を注いだようなものだ。
「高杉って、良いなあ」
「何がだ」
「皆に呼ばれるから!」
(何言ってんだ、コイツ)
6歳故に言葉を上手く使えないのか、自分を羨ましがる初愛の言葉がイマイチ理解出来ない。
初愛は高杉の視線から逃れるように、上空を見上げる。
つられて自分も上を見てみれば、青い空に聳え立つ崖が見える。
改めて自分が落ちて、良くこれだけで住んだなと思う。
草が無ければ大怪我をしていても可笑しく無い高さだ。
「高杉は、高杉ってみーんなに呼ばれる」
「……だから何だよ」
「初愛には、迅楓お爺ちゃんしかいないから」
「!?」
嗚呼そうかと、自分の中でわからなかったものが綺麗に理解する事が出来た。
初愛には家族がいないのだと理解した。
自分が昨日何の気なしに吐いた言葉。其れが予想以上に深く刺さったらしい。
家族がいないのに、軽率に言ってしまった。
しかし、初愛はまだ幼い子供だから大丈夫だとたかをくくっていた。
良く考えれば、傷つかぬ訳が無いと言うのに。
「“高杉”って名前呼ぶ人、いっぱいいる。桃太郎も猿さんもみーんな」
「…………」
「初愛の名前呼んでくれるの、お爺ちゃん位だった。でも高杉は、皆に言われてる。いいなあ」
心底羨ましそうに空を見上げながら、初愛は口を閉ざした。
(……家族も仲間も、いねェってか)
“高杉”
自分の事をそう呼ぶ人物が殆どだった。
自分も名前を呼ばれる事には特に気にも留める事も無かったと言うのに。
しかし、此の少女には両親がいない。
友達もいるか定かでは無い。故に名前を呼ぶのは、勇ただ一人なのだ。
(……寂しいみてーだな)
時折初愛からの視線を感じていたが、だから、自分を見ては好奇の目で見ていたと言うのか。
名前を呼んでくれる人がいるから。
「……オイ、いたぞ!!」
「!! ……テメェ等か」
「へっ、もう逃げられねーだろ」
ガサガサと、草が擦れる音が聞こえた矢先に、先程自分を斬りつけた山賊が現れた。
痛覚ばかり気にしていて、山賊が近づいている事に気づく事が出来なかった。
高杉は悔しさから舌打ちをする。初愛は今にも泣き出しそうな表情で怯えながら、自分の服を掴んで来た。
「おやおや、小さい女の子が怯えてるじゃねーか、可哀想に」
「坊主が金さえだせば、其の女の子も怯えずにすむぜェ?」
「誰が金なんざ渡すかよ……!!」
山賊達が嫌な笑みを浮かべながら金を要求するが、高杉は其れを拒否する。
此のお金が自分のものならくれてやるが、此れは松陽のものだ。
貧しい自分達のために授けてもらったもの。
故に、此れを目の前の汚ならしい連中に渡すなど毛頭無い。絶対に、だ。