二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂] 刀を持った桃太郎⇒13up [リンク受付中!!] ( No.42 )
- 日時: 2010/08/24 10:02
- 名前: 偉薔薇 ◆aWifV7VEAQ (ID: 2cEGTv00)
__第14話__
「……連れて行かれる訳ねーだろ、何処まで馬鹿なんだテメェは」
「それがよォ、この前変な奴らに絡まれてる時があったからなァ。
もし又何かあったらなァ……俺はまだしも、ヅラだけじゃ不安なんだよなァ」
平静と共に呆れたような声色で言う高杉だが、やはり動揺の色も見える。
何だかんだ言いつつも、やはり初愛の事を心配しているように見えてならない。
心配していると言う事を隠しているような。
銀時はあと一押しと言わんばかりに、話を続ける。
「ま、俺がいるから大丈夫か。高杉は初愛を守れる自信がねェってか?」
「言ったな銀時。……上等じゃねェか、俺も行ってやらァ」
(コイツも意外と単純だな)
高杉をおびき出す為に口から出た挑発に、高杉はまんまとのった。
こめかみがピクピクと動き、青筋が立っているあたり、彼は自分の挑発に腹立てているようだ。
「テメェ、怖じ気ついて逃げんじゃねーぞ」
「誰が逃げるかよ、逃げる訳ねェだろ」
高杉はそう一言呟き、フンと鼻を鳴らし元いた場所へと戻って行った。
「やっぱり変わりましたね、高杉も」
「ああ、昔はあんな奴じゃなかったからな」
初恋が言う通り、事実高杉は変わった。
今回のような挑発に、高杉は昔からのるような性格では無かった。
確かに挑発を受け反感を買い、喧嘩になる事は多々あった。
喧嘩になったとしても高杉は最初の意見を通す自我を持つ主義で、決して意見を変えるような事は無かった。
それがどうだろう。
今回も挑発にはのったが、最初に“行かない”と言っていた意見をガラリと変え“行く”と言ってきた。
あの自分主義で頑固な高杉が。
(確実に、初愛の影響だろうな)
ぼんやりと、初愛の顔が思い浮かぶ。
どう考えても、高杉の雰囲気が和らぎ、感情豊かになったのは、初愛に出会ってからだろう。
それは自分達にも言える事で。
彼女に出会ってから、何処か優しい気持ちを持てるようになった。
毎日毎日男所帯にいて、物騒な刀を握るようになってから忘れてしまっていた気持ちが。
彼女は、本当に素晴らしい影響力を持っていると言えよう。
「……さて、早速初愛に言ってくるか」
「そうだな。早めに言った方が初愛殿も喜ぶだろう。
いやしかし、あの子は喜びすぎて夜に眠れなくなりそうだ。
ならば俺が共に本でも読み聞かせて眠らせて……」
「貴方の本は良いんです!!」
パシンと良い音をたてて桂の頭を叩く初恋。
懐からまた妙な本を出そうとしているのだから、本気か冗談かとれない彼にはヒヤヒヤさせられる。
銀時は本当に読み聞かせ無いようにそれを素早く奪い、初愛の元へと走った。
後ろから「俺の宝がァァァ!!」と聞こえるが、それすらも聞かぬ振りをした。
「……存外、お前が一番影響されてるであろうがな、銀時」
桂がポツリと溢した言葉は、走る銀時からは遠すぎて、聞き取る事は出来なかった。
桂の微笑にも、気づかず。
◆・◆・◆・◆
「わー!! 桃太郎、凄い凄い! 人がいっぱいだよォ!!」
「そうだなァ。初愛、綿あめ食うか?」
「綿あめ?」
「ああ、甘くて美味いやつだ」
初愛に伝えた翌日、予定通り祭は開催された。
今の時刻は正確なところはわからぬが、夕日も山の間にすっぽりとおさまり、辺りは暗くなっているので、6時はとうに過ぎたと言うところだろう。
祭と言えど小さな町の祭だ、規模は小さい。
神社の階段の下には躍りを踊る人がいて、きつい階段を昇りきりたどり着いた頂上には、幾つかの屋台がある。
耳をすまさずとも祭特有の笛のような音楽も聞こえて来る。これを聞いただけで、自分も無意識に心が弾んでしまうのだから、音楽と言うのは実に不思議だ。
初愛はと言えばやはり祭には初参加だったらしい、綿あめすらも知らないと言う。
銀時が甘くてふわふわして美味しいと簡単に説明をすれば、初愛は目を輝かせ物欲しそうな顔をしてきた。
「欲しい! 綿あめ欲しい!」
「任せろ、何個でも買ってやらァ」
「ありがとう桃太郎!」
綿あめを買う事を告げれば、初愛は顔をほころばせ、瞬時に自分に抱きついて来る。
(いやー……やっぱ可愛いな、オイ)
初愛の頭を撫でながらそう思う自分は、やはり末期だ。
桂の予想は恐ろしい程的中していて、初愛は淡いピンクの浴衣にポニーテ-ルと言う格好だった。
髪を上げた女性の項は美しいと言う。
何時もとは違う初愛が益々可愛く見えてしまう辺り、それは本当なのだろう。
「うしっ、じゃあ買いに行くぞ!」
「はいでは、少しストップしましょうか」
「じゃあ、私にも買ってくれない? 銀。何個でも買ってくれるんでしょ?」
「……ゲッ」
初愛を連れて綿あめを買いに行こうと歩みだした瞬間。
自分達の道を拒むようにして立っている人物が視界に入る。それを見て顔をしかめたのは言うまでもない。
実は、少し初愛を独り占めしたいと言う気持ちが生まれていて、故に彼らを置き去りにして来たのだ。
しかし、あっさりと四人に見つかってしまった。
桂と高杉、初恋にアリスに。
「銀時、俺に挑発ふっかけといて先に行くたァフェアじゃねーな。ズル勝ちするつもりかァ?」
「うっせーよ。やっぱお前らに任せると危険だって判断したんだよ」
「誘拐の如く初愛殿を一人で連れて行った銀時には言われたく無いな」
ニヤリとほくそ笑む二人に屈辱的な気分になってしまう。
しかもアリスは、自分が初愛に言った言葉を聞き逃さなかったらしい。
綿あめを催促するのだからたまったものでは無い。口は災いの元だ。
「かぐや姫、浦島太郎、猿さん、犬さん!」
「初愛殿。その淡い浴衣に結い上げた髪、実に素敵だ」
「えへへ、ねェ猿さん、綿あめ買って!」
「ぶはァァァ!!」
「汚ッ!! 鼻血たらさないで下さい! 失神もしないで!」
初愛が四人に声をかけ、桂が初愛に気付き誉める。
それは良いのだが、初愛が上目遣いで綿あめを催促した瞬間、桂は鼻血を出し失神してしまった。
初愛だけがキョトンと訳のわからぬ顔をしていたが、他の四人がドン引きしたのは言うまでもない。