二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: [銀魂] 刀を持った桃太郎⇒14up [リンク受付中!!] ( No.43 )
日時: 2010/08/24 10:36
名前: 偉薔薇 ◆aWifV7VEAQ (ID: 2cEGTv00)

 __第15話__


「どうだ? 綿あめ美味いだろォ?」
「うん、凄い美味しい!」
「やっぱ綿あめは最高だよなァ」

その後、約束であった綿あめを購入し、食べながら屋台を歩き回る事となった。
因みに鼻血を出し倒れた桂は無視して置き去りだ。
嬉しそうに綿あめをちまちまと食べながら歩く初愛を見て、銀時も自然と笑顔になる。

「犬さんも食べよう」
「いや、いらね」
「高杉、はい!」
「……わァったよ」

高杉だけは、何時もの仏頂面で隣を歩いているものだと思っていたが、そうでも無いらしい。
初愛が口にしていた綿あめを、本人が食べるように言ってのけた。
元来甘いものが好きでは無い高杉だが、やはり彼女には弱い。
そしてそれは“高杉”と呼ばれた時が一番弱いのだ。

(……連れて来て正解だな)
何時も気取っている彼が振り回される様子が面白いのもある。
しかし何時も気取っているからこそ、彼女により高杉のくだけた性格が露になるのが嬉しい。
喜怒哀楽の“怒”が激しい彼だが、彼女といる時は、本人も無意識に“喜”の部分を微弱ながらに出すのだ。
友達として、彼の喜ぶ姿が嬉しく無いはずがない。
故に、高杉は彼女と出会ってプラスになった面が多い事が嬉しい。

「桃太郎、あれなぁに?」
「ん? ああ、あれは金魚掬いだ」
「……金魚掬い?」

美味しそうにしながら歩いていたが、ふと初愛が綿あめから手を離し、首を傾げ指を指し銀時に何かを尋ねる。
それに対して銀時は丁寧に説明をした。
綺麗な赤色をした魚が、水の中を縦横無尽に泳いでいる。それを人々が、薄い紙で掬い上げる。
言わずと知れた、金魚掬いだ。

「金魚、綺麗」

覚束無いような、もしくは引き寄せられたとでも言うようにフラフラと金魚の入っている水槽へと初愛は近づいた。
店の人がいらっしゃいと声をかけるのも気に止めず、只管じっと金魚を見つめていた。
それはとても希望に満ちていて、それを欲しているように見える。

「俺がとってやろうか?」
「良いの?」
「あァ、俺ァ金魚掬いのプロなんだぜ? 昔、金魚番長とかなんとか言うあだ名で」
「呼ばれてませんよ」

可愛らしい冗談を言いながら(初恋に即座に突っ込まれたが)初愛に金魚をとってやると告げれば、初愛は更に希望を持ったようなキラキラした瞳でこちらに目をむけてきた。その瞳が眩しい。

「よし、じゃあ待ってろな」
「うん!」

屋台を開いている人に掬うための網や入れ物と言った一式をもらい、銀時は腰を下ろす。
どの金魚が可愛いだろうか、金魚の質や色、それらを総合的に考え選ぶ。
初愛にあげるのなら、長生きしそうな金魚の方が良いだろう。

(……んぉ?)
ふと、隣からピチョンと金魚が落ちる音がした。
その音を辿れば、金魚を掬おうとして失敗し、網が破れ逃げられたらしい。落胆している人物がいた。

(随分下手くそな人がいるもんだ)
肩を落とすその人の隣には、既に失敗し破れた網が束になって横に置いてある。
余程数を重ね金魚掬いに挑戦するも、幾度となく失敗しているのだろう。

(俺はああならないように、頑張んねーとな)
いくらなんでも、あそこまで失敗しては格好悪い。
それに初愛には金魚番長などと嘘八百を言ってのけたのだから、意地でも成功させなくては。

「はァ、俺は才能が無いのだろうか……なァ、少年」
「いや、そんな事は」

と、落胆していた人物に声をかけられてしまった。その言葉に頭がちぎれんばかりに肯定を示したかったが、本人が落ち込まぬよう苦笑しながら言葉を濁らせた。
しかし、すぐに言葉を濁らせる必要が無い事を悟る。

「あ、銀時ではないか」

金魚掬いに失敗していたのは、友人である桂小太郎だったのだ。

「……なんだヅラかよ、気を遣う必要無かったな。っつーかなんで金魚救いなんてやってんだよ?」
「なんだ銀時ではないか。俺より才能が無さそうだな。
 因みに俺は金魚の雌と雄両方を掬って金魚の営みを観察しようと思ってな」
「才能どころか金魚に嫌われてそうな奴に言われたくねーよ。っつーか気持ち悪ィ理由で金魚掬うな!!」

桂は、金魚の営みが見たいがために何回も何回も懲りずに挑戦していたらしい。
続けて、金魚の発情期とやらは如何なものかと至って真面目な顔で言うのだから、気持ちが悪い事この上無い。
才能より何より、金魚を一匹たりとも掬って欲しくないと思ったのは此処だけの話だ。

「ま、良い。俺ァ初愛のために金魚を掬うのに忙しいからな。お前に構っちゃいられねーんだよ」
「……初愛殿に?」
「そーだ、わかったならもう話かけんなよ。集中すっから」

桂のような馬鹿な理由とは違う、自分は初愛のために金魚を掬うのだ。
故に邪魔をするなと桂に忠告をし、漸く金魚を掬う体制に入る。
取り敢えず色の良い金魚を選び、視線を定める。
そしてゆっくりと金魚の後方から網を近づけ、ゆっくり金魚の下に網をつける。

「よし、来たか……!?」

今だ、そう思い素早く網を上げたが、すぐに網が破けてしまった。
失敗してしまったと、銀時はため息をつき項垂れる。

「ふはははは、下手くそだな銀時」
「下手のオンパレードに言われたくねーよ」
「ふん、見ていろ。俺が掬ってやる」

項垂れる自分を貶し、桂は再度店主に網を貰い金魚掬いにチャレンジする。
そういえば何回も失敗しているのだろうが、お金はどうやっているのだろうとどうでも良い事を考える。

桂は自分とは違い、大胆にも素早く金魚の下に網を潜らせた。
見た目からして、網を水に浸し過ぎている。
これでは金魚も落っこちてしまうだろうと鷹をくくって見ていれば、意外にも頑丈だったらしい。
見事網が破けぬまま金魚を掬う事が出来た。

「ふはははは、どうだ銀時、掬えたぞ!」
「あ、悪ィ手が滑った」

金魚掬いに成功し勝ち誇っている桂に、銀時はわざと桂の網に指をつっこみ破かせた。
勿論、掬った金魚は水槽に逆戻りだ。

「ノォォォォ!! 俺の金魚がァァァァァ!!」

桂は頭を抱え叫んでいたが、銀時は良い気味だと心の中でほくそ笑んでいた。
桂が金魚を掬うのは、自分の中の何かが許さないのだ。