二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: [銀魂] 刀を持った桃太郎⇒キャラ絵up[リンク受付中!!] ( No.54 )
- 日時: 2010/08/24 14:12
- 名前: 偉薔薇 ◆aWifV7VEAQ (ID: 2cEGTv00)
__第16話__
「何をするか貴様ァ!! 折角初愛殿に喜んでもらおうと頑張ったと言うのに!!」
「不純な理由で取ろうとしてる奴から金魚もらいたくねーだろ、お前の菌が初愛に感染させない為だ!!」
「ふん、そうは言いながら貴様も営みに興味があるのだろう」
「あるわけねぇだろ!!」
網と入れ物を放っぽりだし、立ち上がり口喧嘩に発展してしまった。
店主や客に白い目で見られたり、非難の声を受けるが蚊帳の外だ(二人には聞こえない)。
「大体てめェはなァ……!」
「わーい。犬さん、かぐや姫、浦島太郎ありがとう!!」
「……え?」
喧嘩がヒートアップしてきた時、ふと耳に入って来た可愛らしい声。
其れは、確実に良く聞く声だ。桂と共に勢い良く振り向いてみれば。
あの高杉が涼しげな顔で金魚をゲットし、初愛にあげていた。
しかも高杉は一回で成功したらしい、破れていない網を一つ手に持っているだけだった。
その横ではアリスは林檎飴を、初恋は初愛に似合いそうな兎のお面を渡していた。
どれも初愛が喜びそうな代物で、二人は此方に向かって勝ち誇ったように笑っている。
負けた、完敗だ。二人が言い争っている間に三人共悠々と初愛が喜びそうな物を取ってきたのである。
まさしく漁夫の利そのものだ。
「よォ、下手くそコンビが」
「残念だったねぇ」
「んだとォ!? ……あー糞、言い返せねェ」
金魚や林檎飴、お面貰いニコニコと満面の笑みを浮かべる初愛。
彼女の手をひき、高杉やアリスが近づいて来ては挑発の言葉を投げ掛けた。三人は勝ち誇った笑みを浮かべている。
言い返したかったが、今回は確実に完敗だ。言い返せない。
「あんだけ意気込んでたのになァ、金魚番長?」
「くっ……うるせェ此のムッツリが!! 手つないでニヤニヤして気持ち悪ィんだよ」
「何とでも言えや、金魚番長? ネーミングセンスもねェな」
「なんだとォォ……!!」
「……ふふふ」
高杉とも喧嘩になりそうだった時、高杉の隣にいた初愛が小さく笑い声を上げた。
その声を不思議に思い、二人はピタリと口喧嘩が止まってしまう。
最初こそは小さくだったが、何がおかしいのだろうか、徐々に心の底から面白いと言うように、思いきり笑い始めた。
二人はお互いを見ては、益々訳のわからぬ顔をしている。
「……何々、何が可笑しいんですか初愛?」
「アハハハハ。お、可笑しいよ……だって、喧嘩しながら嬉しそうなんだもん」
初恋の問い掛けに、初愛が涙を拭い、笑いすぎてお腹が痛くなったらしい、深呼吸してから訳を説明する。
「二人、喧嘩してるけどね、凄い嬉しそうな顔してるんだよ」
「……嬉しそう?」
「うん。猿さんの時もそう。凄い言い合ってるのに、顔は凄い楽しそうなの。
それ見てたら、何か可笑しくなっちゃった」
そう伝え終えれば、初愛はニコリと笑い、お腹空いたと呟いた。
(……この子、本当に凄ェな)
本当に6歳なのだろうかと疑問を抱いてしまう。
こんなに小さい子だと言うのに、自分達の事や、気持ちを重々理解している。
確かに、言われてみればそうだ。
先程のように高杉や桂とくだらぬ喧嘩を、いつからか嬉しく思う自分がいた。
特に高杉とは、以前までは何処か一線をひいていた感じがあった。
しかし最近になって薄い壁が無くなり、わだかまりが解け仲睦まじい感じになれたような気がする。
(この表現は若干気持ち悪いが)
だが、確実に言えるのは。
「桃太郎、花火やるみたい! 見よう見よう!」
「……あァ、そうだな」
確かに言える事は、前以上に友との絆を深める事が出来たのも、友の存在を大切だと思えたのも。
全ては初愛と出会ってからだ。
この幼い少女は、確実に自分達に良い影響を与えてくれている。
「……俺、何か馬鹿になった気ィするわ」
「そーだな、大馬鹿だろ」
「我々は皆、馬鹿なのが丁度良いだろう」
「こんな嬉しい“馬鹿”は聞いた事ありませんね」
「五人揃って、馬鹿……か」
恐らく、自分の言葉を四人は理解しているに違い無い。
四人とも、そうは言いながらも笑顔を浮かべているのだから。
本当に、馬鹿だ。だけど、馬鹿で良い。
感情をぶつけ合える事は、素晴らしい事なのだ。
こうして普通に馬鹿だと言い合える、そんな二人だから、上手くやっていけるのだ。
「花火、綺麗だよ桃太郎!!」
「おー……本当綺麗だなァ」
勢い良く上がった花火は、大きく色とりどりだ。
暗い夜空を背景に咲いている花は、自分達に光を照らす。
その光に反射され見える初愛の顔は、何時もの可愛らしさに加え美しくも見える。
やはり自分はまた違う意味で馬鹿だと思ったのは、秘密にしておこう。
ドン、と音をたてる花火は、何回も咲いては儚く散って行った。