二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: [銀魂] 刀を持った桃太郎⇒18up [リンク受付中!!] ( No.74 )
日時: 2010/08/25 13:34
名前: 偉薔薇 ◆aWifV7VEAQ (ID: KdG939V5)

 __第18話__


「……良いのか? 初愛を連れて行っても」
「良いから言っているのですよ」

もしかしたら最近初愛の話を口々に言っているものだから、気を遣ったのだろうか。
一応、再度確認を取れば、松陽はまた優しく笑い“私もその女の子に、会ってみたいんです”と言った。
何だか嬉しくなってしまった。自分としても、常々松陽に会わせたいと思っていた。
もちろん、初愛に松陽を紹介したいとも。

「……で、旅行ったって何処に行くんですか? 先生」
「あぁ……それは——」

  ◆・◆・◆・◆

「着いたァァ!!」
「着いた! やったね初愛!!」
「……餓鬼が二人か」

あれから数日。直ぐに初愛と勇に大体の事情を話しに行けば、二人とも笑顔で承諾してくれた。
迅楓は自分達によろしくと頼み、初愛を連れて旅行にやって来た。
一泊二日と言う短期間での旅行だが、それでも初愛は旅行が初めてだったため、ずっと笑顔だった。
鉄道に乗り走る事数時間の間も、鉄道自体が初めての初愛は嬉しさから涙を流し、流れる景色を眺めていた。

「ホラ初愛、松陽先生にありがとうって言うんだぞ」
「先生、ありがとう!」
「ハハッ、どう致しまして」
「銀時、テメェも言ったらどうだ? 先生ありがとうってよォ」
「殺すぞ高杉、テメェもだろ」

(っつーか……何か似合うな、あの二人)
自分の揚げ足をとる高杉はどうでも良いとして、今日は松陽と初愛が初対面する日でもあった。
一体お互いがどんな反応を示すかと思っていた。初対面した時、初愛は最初こそ緊張していた。
しかし松陽の笑顔を見て安心したらしく、お互い笑顔で挨拶を交わした。

それからは早いもので、元々人懐っこい性格の彼女は松陽にくっついて離れなかった。
それに軽く嫉妬していたらしい、高杉と桂やアリスの少し不機嫌そうな表情には笑えた。

(まァ、俺が言えたモンでもねェか)
思えば自分も、軽く嫉妬していたかもしれない。
それは松陽をとられた事か、それとも自分にひっついて離れなかった初愛が松陽の元に行った事か。
それはわからないが。他人事で無いのは確かだ。

「ねェねェ、最初は何処に行くの?」
「あァ。先ずは腹ごしらえですよね? 松陽先生?」
「ハハッ、銀時は食い意地がはってますね。ですがそれが一番良いでしょう」

何処に行くかとは聞かされていなかったが、ぐうっと小さく自分の腹の虫が鳴った。
時刻は昼を過ぎたあたりだし、腹ごしらえが最善だと言う事を告げれば、松陽は笑いながらも賛成してくれた。
高杉に至っては“だらしねェな”と言いながらも、高杉自身も運悪くお腹から音がした為皆で笑ってしまった。
高杉はもちろん、顔を真っ赤に染め上げていた。

「ねェ桃太郎、何を食べるの?」
「んー……まァ適当に? お、丁度団子屋もある事だし、団子でも食おうぜ」
「うんっ!」

タイミング良く団子屋の店が見えた為そこにしようと提案すれば、ニコリと笑みを浮かべ自分の手をギュッと掴む。
電車の中では松陽にひっついて離れなかったと言うのに、今は自分にくっついている。
握った手の温もりが、とても落ち着く。
横に並ぶ小さな少女がとても可愛らしいと思ってしまうのは、親馬鹿なのだろうか。

「何か、松陽先生ってお父さんみたいだね」
「父さん?」

満面の笑みから穏やかな笑みへと変わり、初愛はそう告げる。

「松陽先生の大きな手とか、笑顔とか。温かい感じが、お父さんな感じがしたの。
 ……お父さんって、あんな感じかなァ」

どこか憂うような表情を浮かべ、視線を松陽に移した。松陽は高杉とアリスの間を笑顔で歩いている。

(……コイツも同じなんだな)
視線を松陽から初愛に移し、初愛の頭をポンポンと撫でる。
自分もそうだが、彼女にも両親はいない。迅楓と言う叔父はいるが、大好きな両親は亡くなっている。

何も信じられなかった、この醜い世界。
大人は特に薄汚れていると感じていた時に、松陽に出会い、松陽の温かさに触れた。
温厚で誠実で、そんな彼に惹かれていくのに時間はかからなかった。

自分も、松陽を父と重ねている節がある。
だから、初愛の気持ちは凄く解る。
父親の温かさを持つ事に対する喜びと、本当の父ではない事実への戸惑いが。