二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: [銀魂] 刀を持った桃太郎⇒19up [リンク受付中!!] ( No.105 )
日時: 2010/08/31 15:39
名前: 偉薔薇 ◆aWifV7VEAQ (ID: NBzaXsLD)

 __第20話__


山林をひたすらに歩き続ける。
林の間から覗かせる太陽の光は、とても暑い。こうして歩いていると、汗が流れる。
そんな初恋とは違い汗を流す事なく涼しい顔で歩くのは、先程出会った少年——沖田総悟。
サラサラの髪の毛は涼しさを一層強く見せている。こうして改めて見ると、綺麗な顔立ちをしていると思う。

無我夢中で犬を追いかけていたら、何時の間にか知らぬ山林にたどり着いてしまった。
辺りを見渡しても銀時達の姿など見当たらない。泣き出しそうになっていた時、彼と出会った。
不安で仕方ない自分を安心させるように笑顔を作り、手を繋いで自分を引っ張ってくれている。

「アンタァ、武州に住んでんのかィ?」
「武州……? えっと、今日は旅行で来たから」
「あァ、余所者かィ。ならわかんねーよな」

住んでても此処ら辺は複雑だからねィ、彼はそう呟いた。
彼は此処に生まれた時からずっと住んでいる。
しかしここの山林の道は非常に複雑で、未だ総悟も迷いそうになってしまう時があると言う。
この山林から街に行くのは、結構難しい。
故に今から一度総悟の家に戻り、姉に案内してもらうのが最善策だと彼は言う。

「総悟君、お姉ちゃんいるんだ?」
「あァ、すっげー美人の姉ちゃんがいるぜ。
 あと今の時間なら、近藤さんと土方コノヤローもいますねィ、うざってぇ」
「近藤さんと、土方コノヤローさん……?」

総悟にはとびきり美人の姉がいるらしい。
まあ確かに、総悟は男の子だと言うのに天使のように可愛らしい顔をしている。
その姉なのだから、美人なのも頷ける。
そして今時分は、近藤と土方と言う男もいるらしい。
二人は総悟の姉と歳が近く、近藤は剣術を教えているらしい。
その剣術を総悟と土方は教わっていると言うのだ。

「総悟君凄いね!」
「は?」
「初恋と歳近いのに、剣を教わってるんでしょ? 大人だね!!」

初恋も迅楓も剣など握らない。自分の周りで剣を握るのは、銀時達くらいだ。
それでも銀時達は15、総悟よりも幾分歳上だ。
総悟は断然若いと言うのにその歳で危険な剣を握るのだから、それは凄い事だ。

「べ、別に凄かねーやィ!」
「何で? 凄いよ!!」
「解った、解った!」

解ったから少し黙ってくれ、総悟がそう言ったので納得はいかなかったが渋々黙る。
凄いと豪語してみれば、総悟は大きな瞳を更に大きく見開き、顔を真っ赤にさせていた。
凄くないと力強く否定するが、彼女からすれば凄い事。
自分と歳が近いと言うのに、剣を握る。それはつまり、命をかけていると言う事。
今はまだ剣術を習うだけかもしれないが、いずれ戦場に出ると言う事なのだから。

総悟はその侭不意と顔を前方に移した。
前を向いたため総悟がどんな顔をしているのか解らないが、耳が真っ赤になっている事だけは解る。
照れているのだ、6歳の彼女でもそれは理解出来た。何だか可愛らしいなと思い、クスリと笑ってしまう。

「もう少しの辛抱でィ……って、何笑ってんだよ」
「ううん、何でも無いよ? ふふふ」
「……何かムカつく。こうしてやらァ」
「い、いひゃいいひゃい!」

くるりと向き直りもうすぐだと口にした総悟。
その時はまだ照れた総悟が可笑しくて笑っていた時だったので、笑っていた瞬間を見られてしまう。
多分勘で初恋が総悟に対し笑ったと気付いたのだろう、総悟は顔を顰め、初恋の両頬を思い切り引っ張った。
地味に痛い。
涙目で痛いと抗議して漸く、総悟は手を離してくれた。
頬はまだジンジンと痛みの余韻が残っている。きっと赤く染まったに違い無い。

「酷いよ、総悟君」
「ウルセェ。俺を馬鹿にしたのが悪いんだからな」

睨んでみたものの、別段怖くないらしい。
鼻で笑われあしらわれてしまった。

「お、見えてきたぜィ。あれがうちの家でさァ」

そしてそれを誤魔化すように、総悟はある場所を指差す。雑木林が途切れた道。
総悟の指の差す先には、大きくも小さくも無い家がたっている。
迅楓と住む自分の家よりは、造りも新しく良い家だろう。
周りには民家が建っておらず、総悟の家は林の間に主張する形でその場に存在していた。

総悟は初恋の手をとった侭、歩くペースを上げる。
その侭家の中に入るのだろうと考えていたが、総悟は予想とは反して玄関を通りすぎた。
何処に行くのだろう、と考えながらその侭引きずられるが侭ついて行く。

「姉上!」
「あら総ちゃん、遅かったのね……あら?」

総悟が声をあげたかと思えば、直ぐに優しい返事が返って来た。
総悟の後ろにいた為前方が良く見えず、頭を横にずらして見てみる。
総悟が来た場所は、縁側だ。そこに行儀良く座る女性と男性の姿があった。