二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 木と蝶と小夜曲*REBORN ( No.21 )
日時: 2010/09/30 08:50
名前: 涙水 (ID: V6OlUTBm)

 【第4話*あたたかい人達】


「きっ、記憶喪失!?」

驚いたツナが譲葉の言葉を繰り返す。
譲葉の頷きはぎこちなかったが、それにツナは気づかなかった。

「あの、手当てまでしてもらって本当にありがとうございました。
 もう大丈夫なので、そろそろ……」

「だったらしばらくここ(ツナの家)にいればいーじゃねーか」

「はいっ!?」

ベッドから立ち上がろうとした譲葉の言葉を遮ったのはリボーン。
譲葉は思わず声をあげた。

「記憶がねーなら、帰る場所もないんだろ?」

「確かにそうだよね。
 怪我も結構酷いみたいだし……」

リボーンの意見にツナも同意し始める。

「いっ、いえ!
 大丈夫ですから、本当に!!」

慌てた譲葉がそう言うが、

「別に遠慮なんていらねーぞ。ママンは優しいからな」

「うち居候多いから、ひとり増えたって変わらないしね」

リボーンもツナもその気になっている。
そして、決め手がドアを開けて入ってきた。

「ツナの母の奈々ななです。
 あら、目が覚めたのね。よかったわ。
 傷だらけだったから心配したのよー。」

エプロン姿で、短い茶髪を揺らした奈々は譲葉に笑顔を向ける。

「ママン、こいつ記憶喪失なんだ。
 しばらくうちに置いてやってもいーか?」

「まあっ、それは大変ね!
 もちろんいいわよ。自分の家だと思って、ゆっくりしていってね」

「そんなっ、ご迷惑になりますっ」

即座に譲葉が断ろうとすると、

「迷惑なんかじゃないわ。
 大勢の方が楽しいし、ご飯がおいしいじゃない?」

「でも……」

中々首を縦に振らない譲葉に、じゃあ、と奈々が人差し指を立てた。

「私のために、ここにいてくれないかしら?
 娘っていうのをもってみたかったの!  だってツッ君は一人息子なんだもの」

ね?、と片目をつぶって奈々がウインクをする。

——あたたかい人。

「あのっ…じゃあ、お世話になりますっ。
 よっ、よろしくお願いします!」

「やあねぇ、そんなに堅くならなくてもいいのよ。
 気楽にいきましょ、気楽にっ」

「そうそう。
 母さんはいつもこんな感じだから気にしなくていいよ。えっと、譲葉って呼んでいいかな?」

——あたたかい人達。

こんなところで笑っていられるような状況じゃないことは分かっているよ。

「もちろんです!」

——赤の他人にこんなに優しい人達。

肝心なところから目を背けていることにも気づいてる。


でも今、
私はとても嬉しかった。