二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 木と蝶と小夜曲*REBORN/第7話更新 ( No.38 )
日時: 2010/10/31 15:25
名前: 涙水 (ID: f8j945rA)

 【第8話*その名は】


「今日はどうだったの? 譲葉ちゃん」

そう言いながら奈々が、テーブルにお茶の入った湯呑みを置いた。

壁に取り付けられた時計は夜の9時を指していて、食卓には奈々とツナとリボーン、そして風呂上がりの譲葉がいた。

「とっても楽しかったです!
 綱吉君にもいろいろ助けて頂いただいたので、不自由もありませんでしたから」

湿った髪をタオルでごしごしと拭きながら笑顔で譲葉が応える。
譲葉は昼間、奈々の計らいで並盛中学校に留学生として行ったのだった。

「どっちかっつーとツナの方が譲葉に助けられてたもんな。
 お前数学であてられた時、譲葉に答え教えてもらっただろ」

エスプレッソをすすりながらリボーンが言うと、

「……なんでお前知ってるんだよ」

恨めしそうにツナが唸った。
確かにそうだけどさぁ……と文句を言いつつも、図星なので強く言い返すことができない。

そんなやりとりを余所に、譲葉は奈々に今日の出来事を話していた。

「授業の時は綱吉君に教科書を見せてもらったんです。
 出された問題も一緒に考えたりしたんですよ。
 それから、お昼ご飯は綱吉君と山本君と獄寺君と屋上で食べました。
 奈々に作って頂いたお弁当、とってもおいしかったです!」

「まあ、よかったわ!」

楽しそうに話す譲葉に、奈々も笑顔で応える。

「それにお友達もできたんです!
 京子ちゃんと花ちゃん、それと他の学校のハルちゃん。
 今度おいしいケーキ屋さんに連れていってもらう約束をしました!」

「お友達ができることはとっても良いことよ。
 譲葉ちゃんが充実した学校生活をおくれたみたいで安心したわ!」

自分のことのように喜んでくれる奈々を見て、譲葉も嬉しくなった。

「で、記憶の方はどうだったんだ?」

話が一息ついたのを見計らいリボーンが譲葉に問う。

「……いえ、何も」

少し迷ったように譲葉が首を振ったが、その様子にツナと奈々は気付かなかった。

「焦ることないわ。ゆっくり思い出していけばいいのよ」

「母さんの言う通りだよ。時間はあるんだし」

慰めようとする奈々とツナに向かって、譲葉は苦笑を向ける。
奈々が空になっていた湯呑みに新しくお茶を注いでくれたので、礼を言い手にとった。

「あ、そういえば、譲葉の知り合いに〝セシル〟っていう人いたりしない?」

「………えっ」

唐突に言ったツナの言葉に、湯呑みを落としかけた。

「ど…どうしてですか?」

精一杯平然を装って尋ねた。
心臓が早鐘を打つ。

「譲葉が眠っている時に、〝セシルちゃん起きて〟って何度も寝言言ってたから知り合いなのかなって。何か思い出した?」

自分が予想していた答えとは幾分違っていたので胸を撫で下ろした。
荒くなっていた息を整えて譲葉は、

「いえ…思い出せません。すいません。  私、そろそろ寝ますね。おやすみなさい」

足早にリビングをあとにする。

「あ、うん。おやすみ」

彼女の去っていったドアに向かってツナが呟いた。

「オレ、なんか変なこと言ったかな……?」





「ば、ばれたかと思った……」

借りている空き部屋のドアを閉めてから譲葉は息をついた。

「……あなたのせいですよ」

むっとした顔で譲葉が言う。

「私の意識がはっきりしていない時は気をつけてくださいって、言ったじゃないですか。
 あなたと私は繋がっているんですから」

彼女の他に誰もいない部屋で、譲葉は話し続ける。

「もう、聞いてるんですか?
 〝フランカさん〟」

ちりん、ちりん。

『ふふっ、ごめんなさいね〝セシルちゃん〟』

かすかに聞こえた声は、鈴の音と共に響いた。