二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 木と蝶と小夜曲*REBORN/第8話更新 ( No.46 )
日時: 2010/12/02 11:44
名前: 涙水 (ID: R1WHGgZv)

 【第10話*不法侵入、器物損害】


「委員長、全校生徒の下校を確認しました」

うやうやしく頭を下げてそう言ったのは、学ランを着たリーゼントの男。
並盛中学風紀委員会の副委員長である草壁哲矢くさかべてつやだ。

「そう」

草壁の言葉に短く応えたのは、手元の書類に目をやっている華奢な黒髪の少年。
名前を雲雀恭弥ひばりきょうやといい、この風紀委員会の委員長である。

「下がっていいよ」

雲雀がそう言うと草壁はもう一度頭を下げ、風紀委員会の活動場所であるここ、応接室を出ていく。

開け放たれた窓からは穏やかな風と夕日が差し込む。
ひとりきりになった室内に響くのは鉛筆を動かす音と、紙が擦れ合う音だけとなった。

しばらくして、不意に雲雀は鉛筆を動かす手を止めた。
そして立ち上がると、すばやく身体を動かし窓に向かって腕を突き出した。

「うわー、危機一髪ー」

そう言ったのは窓の桟に手を掛けて、今にも(窓から)部屋に入ってこようとしていた少女だった。

彼女が入ろうとして止まっているのは、雲雀が突き出した腕が遮っているからだ。
厳密に言うと、雲雀の腕に付き従うようにある彼の武器——トンファーの先が少女の眉間とほんの数センチのところで動かないでいるからである。

「んー、どうしようかなぁ」

自分の置かれている状況に危機感を微塵も感じていないのか、彼女は笑顔で呑気に呟いている。

「派手な行動起こすなって言われてるからなぁ……」

「!」

言葉の途中で、少女はいきなり後ろに倒れた。
この部屋は3階にある。後ろに倒れれば頭から地面に落ちる。
思いもよらない彼女の行動に雲雀の気が散った。

「……なんてねっ」

落ちかけていた少女はそう言うのと同時に、身体を回転させて瞬時に体制を整えると、

「すきありーぃ!」

雲雀のトンファーを踏み台にして部屋の中に飛び込んだ。

「——っ」

雲雀がすばやく振り返ると、同時に頬を擦って何かが飛んできた。
頬に鈍い痛みをもたらした正体は、雲雀の背後で金属製の窓枠に突き刺さっている。

「……彫刻刀?」

雲雀が呟く。

「言っておくけど、正当防衛だよ? 先に攻撃してきたのそっちだし。
 それにあなたの相手をする時間はないから、このまま見逃してほしいんだけど……」

歯切れ悪く少女が言ったのは、雲雀の瞳が鋭利に光っていたからだ。

「校舎への不法侵入、窓枠の損害。
 以上の理由によって、君を咬み殺す」

トンファーを構えて彼は不気味に笑みをこぼす。

「やっぱりこうなるよねー」

対する少女は諦めたように呟いて、懐から彫刻刀を、背負っていた鞄からのこぎりを出した。