二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 木と蝶と小夜曲*REBORN/第17話更新 ( No.77 )
日時: 2011/02/04 22:23
名前: 涙水 (ID: VzZBhHeS)

 【第18話*繋がりだす人々キャスト】後編


——夕暮れの黒曜。


「手伝ってもらって、本当にいいのかしら?」

「……うん。大丈夫」

柳澤汐璃の問いにクローム髑髏は頷いた。

「そこまで詳しくないけど、並盛町なら何回か行ったことあるから……」

夕方の黒曜を歩く二人の向かう先は隣町の並盛だ。
来る途中に別れた仲間と合流するために、汐璃が並盛に行くと言ったので、多少地理に明るいクロームが案内することになったのだ。

「悪いわね……。
 私の携帯がこんなになってなければ、すぐにでも日向と連絡がとれるのだけど。
 全く、譲葉の携帯と同じ状態だわ」

溜息をつきながら汐璃が取出したのは、傷だらけの画面に亀裂が走った携帯。
骸と戦った際に地面に落としていたらしく、気付かぬまま戦闘に巻き込まれ、発見した時にはもうすでにこの状態になっていた。
言うまでもなく使い物にはならない。

「……譲葉って?」

初めて耳にする名前にクロームが首を傾げた。

「ああ、譲葉のことは言ってなかったわね。
 実は私と日向がこの町に来たのは、譲葉っていう仲間を捜しに来たからなのよ。
 途中までは連絡取れてたのだけど、いきなり音信不通になったと思ったら、壊れた携帯が見付かったのよね……どこにいるのかしら……」

金髪で目立つからすぐに見つかると思ってたんだけどなかなか手こずってたのよ、と汐璃が唸りながら言う。

「目立つなら……ボスが知ってるかも……」

「ボス? 変わったあだ名ね、クロームの知り合いなの?」

汐璃が尋ねるとクロームは頷き、

「……並盛町に住んでるから……もしかしたらその子を見てるかもしれない」

「確かにその可能性は高いわね。
 じゃあそのボスさんっていう人、紹介してもらえるかしら?」

その問いにクロームが否と言うはずもなく、二人は夕日を背に並盛町へ向かって行った。




——夕暮れの並盛町。




「あー、やっと一週間が終わったよー」

思い切り伸びをして言ったのは沢田綱吉こと、通称ツナだ。

「っつても俺とツナは補習で、明日(土曜日)も学校に行かなきゃなんねーけどな!」

「ざけんなよ、野球バカ!
 あのテストの点数が悪かったのは十代目のせいじゃねえ、センコーが悪いんだ!
 お前と一緒にするな!!」

楽しそうに笑う山本武に、突っ掛かるのは獄寺隼人。

「明日は再テストを受けるんですよね。
 綱吉君と山本君ならきっと大丈夫ですよ!」

微笑みながら成瀬譲葉はガッツポーズをしてみせる。

「ははは……できるかぎり頑張るよ……」
ツナは引きつった笑みを返した。

「そういえば譲葉は明日どうするの?
 母さんもチビ達連れて買い物に行くって言ってたから家にいないけど」

「明日は並盛をぐるっと歩き回ってみようかと思っています。
 人捜しに……っじゃなくて、記憶が少しでも戻るかもしれないなぁと思って!」

ツナに問われた譲葉は慌てて言い直す。
不審がられたかと思ったが、相に反して三人は気に留めていないようだった。

「そういえば成瀬って記憶喪失だったのな!
 焦んなくても、そのうち治るぜ、きっと」

「きっとってあやふやじゃねーかっ、野球バカ!
 おい成瀬、十代目にあんまり迷惑かけんじゃねーぞ!」

「まあまあ獄寺君、俺は気にしてないから。
 譲葉も早く記憶が戻るといいね」

気遣ってくれる彼らの顔を見ていると、胸の奥が痛んだ。
それでも譲葉は何も言わずに、笑みを返して頷いた。

「はいっ」




——夕暮れの並盛町。




「「「じゃんけんぽんっ」」」

グー、グー、チョキ。

「僕の一人負けですね。
 じゃあ僕はひとりで行ってきます」

華奢な少年は建物の屋根から飛び降りると、片手を振って言った。

「頼んだよ。こっちは二人で行くから。
 くれぐれも連絡は取れるようにしといてよ?
 譲葉達みたいに音信不通にでもなったら洒落になんないんだから」

「珍しいですよね。
 携帯の充電が切れても気付かない日向さんはともかく、譲葉さんや汐璃さんまでも連絡が取れないなんて」

そう言いながら、屋根の上に残っている二人の少女は少年に手を振り返す。
走っていった少年の姿が見えなくなると、

「それじゃあ、あたし達も行くか。
 ——我等がボスを迎えに」

その呟きは風に溶け、少女達の姿も消えた。